ELLE来日’76 | よくいうかいえ ( Cahier)

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古布リメイク作家のつれづれ日記

1976年 青山にベルコモンズが設立され、鈴屋は記念に
ジョーナル・エル Journal ELLE 編集長とパリ鈴屋現地スタッフ
香港関係の商社オーナーを招待しました。

その時、パリ一行の通訳とガイドを仰せつかり
孤軍奮闘した記念写真がこちらです。



鈴屋社長宅にて開かれた晩餐会にて
私の隣がエルの編集長さんで、振り返っているのが
当時契約していたプロモスティールのアタッシェ・ド・プレス担当のクリスティーヌです。

松涛にある邸宅で芝の「クレッセント」から料理長を招いての本格フレンチの
コースでしたが、大勢のお客様への気配りと通訳をこなさねばならず
どんな味がしたか、全く記憶が残っていないのはとても残念です・・・



ディナーの後は和室へ移動して、お茶会です。
皆さん、初めての経験に大層喜んで苦いお茶の味を愉しんでいました。


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さて、日は替わって京都・奈良への旅の案内です。
こちらはかねてより興味深々だった、京都の「俵家旅館]に1泊の夕食時の様子です。
スリッパのままの畳み部屋へ上がるのはNGとマナーを伝えたり
入浴の仕方や浴衣の着方などを教えたりと外国人向けのガイド役をこなします。

日本のならわしで仲居さんに心づけを渡すと、彼らは「ナニナニ、チップ?」と
度々気にするので、最初の1回だけで良いのだと説明したり・・・

さすがの老舗旅館でして(フツーは予約できないのです。)
細やかな心配りと磨き上げられた風流と粋な
しつらえに感心しました。
しかし、当時はそういう事を一つ一つ丁寧に説明できるほどの
知識と美意識を持ち合わせていませんでした。

あらやだ、そういえば私が上座に座っているではありませんか!
ココはお客様の場所でしょうが・・・ あ~ぁ! 失礼致しました。



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京都は清水寺・銀閣寺・詩仙堂を案内したでしょうか、記憶が薄れています。
梅雨時だったと思いますが、雨の京都も風情があって素敵でした。

宇治の平等院へ案内した時の質問に窮してしまいました・・・
「丸くカットされた庭園の植え込みから花が咲くのはどうして? 芽を切ったら
花は咲かないでしょ?」
私「え、切ってもその先から芽が出て丸く花が咲くと思うんですけど・・・」そうですよね。
こんなやり取りを思い出しています。

外国人と向き合うと、もっと日本の歴史や美術をまなんでおけば良かったと思います。
歌舞伎座へも案内して、花道脇の席で声を潜めて
分かる範囲で説明を試みるのですが、自分でもろくに舞台を見たことが無いのに
あらましだけだって説明するのは容易ではありません。
その後数十年を経て、歌舞伎・文楽・能と古典芸能を堪能する時代になって
実に悔やまれるのは、その頃の無知加減です。

改めて彼らとじっくりとその面白さ、奥深さを一緒に味わってみたいものです。

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この3枚の写真は彼らが大変興味を示した浅草の職人さんのお店です。

手拭や印半纏・櫛のお店、そして魚河岸も気に入ったようです。

外国人、特にファッション関係のジャーナリスト達の興味は
今も昔も”おおいなるジャポニズム”なのでして、
案内役としては誠に乏しい知識と会話力でお許し下さい。 でした・・・

同時に自身にとっては多くのものを得て、いま自国の文化の見直しから
現在の着物を扱う仕事に繫がって来ている事をありがたいと考えています。


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