水の中の不思議なおとぎ話と少しのモヤり ~シェイプ・オブ・ウォーターを観たよ | 片腕の夢は日常

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先日、

 

シェイプ・オブ・ウォーター

 

を観ました。

アカデミー賞作品賞受賞作品でもあるし

切なくも美しい恋愛物語チックなイメージもあって

会場ほぼ満席!!でした。

アカデミー賞のチカラ、すごい。

 

物語は

美女と野獣の水版(なんじゃそりゃ)だと思っていたら

女性は美女とは言いがたいし(あ、でもキュートでした!)

声が出せないというハンディがあります。

一方の男性?も、そもそも野獣は人間だったわけで

けむくじゃらだけど同じ哺乳類じゃないですか。

でもこちらはいくら人間風でもけっこう魚っぽいし

言葉は交わせないし、

なかなかのハードル高め恋愛ですよな。

 

と思いきや、

この半魚人、割とイケメンです。

コミュニケーションも言葉ではないけれどできます。

言葉でのコミュニケーションではないのが逆に

感情をストレートに分かち合えるし、変な誤解もなさそうだし(?)

ロマンティックにも思えてきます。

 

うん、この恋愛、ありですな、と思えるだけでも

もうこの作品って成功じゃないかとも思いました。

 

OPはヒロインのイライザの夢の中。

水の中を漂う部屋の映像、本当に美しいです。

ゆらゆらとゆられるイライザが、

目覚ましに起こされ現実へ戻ります。

 

ここでさっくりとイライザの日常が描かれるんですが

いきなりお風呂の中での自慰場面もあったりします。

おとぎ話に登場するヒロインが清廉潔白美女であることが多いけれど

彼女は性欲もありパートナーがいない孤独を抱えている、

いわゆる普通の女性なんだなぁ、

この作品は「異端おとぎ話」なんだなぁ、というのがわかります。

 

イライザは職場である政府の極秘研究所に運びこまれた

半魚人と出会うわけだけれど、

すぐに彼に興味を持ってしまうんですよね。

え、早!半魚人にすぐに好意みたいなのを持つどうよ?って思うけれど

彼女は自分も他の人たちとは違うマイノリティである孤独を

常に感じていて

異端である半魚人を自分と同じ世界の存在と捉えたのだろうから(多分)

きっと最初は「仲間」という気持ちだったのかもしれませんな。

それが段々恋になっていく。

あります、そういうこと(そうか?)

 

そんなイライザの周りもマイノリティで

隣人で友人であるジャイルズは

ゲイである売れない芸術家で、それによって傷つけられる場面もありますし、

職場の同僚はアフリカ系黒人で、彼女もまたそれで傷つけられる場面があります。

彼らは

イライザと共に半魚人さんを研究所から逃がす手助けをしたりして、

 

私は別にオタクでもマイノリティでもないとは思うけれど

やっぱりどこかこの社会に居心地の悪さを感じていて(中二ともいうww)

そういう意味で「マイノリティ感」というのは持っているし

それはけっこう誰もが持っている感覚かもしれなくて、

そういう意味での共感みたいなのを感じながら観てしまったりもしました。

 

一方のマジョリティの象徴、というわけでもないだろうけれど

彼らを追い詰める悪の役割であるストリックランド。

これがまあ絵に描いたような脳みそが筋肉で出来ているような

単細胞偏見マッチョメン。

家庭での様子や妻(ちょっとノータリンっぽいw)とのセックス場面からも

その笑っちゃうくらいな性質がうかがえて面白いです(笑)

でもね、そんなヤロウのちょっとした苦悩も描かれたりして

本当にイヤなヤツでヒデーんだけれど

いい「悪役っぷり」としていい対比になっていて嫌いじゃないです。

 

この作品で一番目玉といいますか、

やってくれたなぁ、と思うのが

半魚人との性行為が描かれていることかと思います。

え、ど、どうやってするの?って観ているこっちは思うけれど

その後ちゃんと説明してくれますが(笑)

それはともかく、

やっぱり異形の、人間でないものとの行為という

「いくら好きでもそれは生理的にできないんじゃないの?」

みたいなハードルをサクっと越えてしまい

ちゃんと描いたことの心意気とか、

そういう気があったかどうかわかりませんが

恋愛に対しての「誠実さ」みたいなもの(だって愛しあってるんだから当たり前だよね?みたいな)も感じられて

デルトロ監督、マジですごいなぁと思いました。

 

そして、その場面が本当に美しくてまさにおとぎ話のようで

これが描きたかったんか!?なんて思ったりもして。

 

細部にこだわった美術といい

ちょっとしたサスペンス気分も味わえ

最後はある意味ハッピーエンド。

いや、いい作品が観られてよかった~。

 

と思いつつ、どこかモヤっている私がいました。

私は「美女と野獣」を観て

ラスト、野獣が人間に戻ったことに愚痴った人なので、

この作品の最後はよかったなぁ、と一瞬は思ったりもしたのですが

ハタと気がつくわけです。

 

これ、半魚女と人間の男との恋愛だったら成立するか?

 

ということに。

美男と野獣(女)という物語は世に存在するのか?

半魚女とセックスできるのか?

半魚女っつっても人魚姫みたいに上半身は美しい美女じゃないぜ?

この作品のような、お魚仕様(←は?)だぜ?

どうなんだ?おい!デルトロ監督よ!答えてくれよ!

と、難癖をつけたくなったデブス婆な私でした・・・・(心が醜い)