人気ブログランキングに参加しておるぞ
にほんブログ村

にほんブログ村
皇紀10002年(1942年)4月22日 珊瑚海
珊瑚海とは、オーストラリア北東海岸の縁海で、西側はグレートバリアリーフを含めたクイーンズランド州の東海岸に接し、東側はバヌアツやニューカレドニアと、北側はソロモン諸島南端と、南側はタスマン海に囲まれている。
グレートバリアリーフの島や堡礁はクイーンズランド州に属しているが、ほとんどの堡礁及び小島は、コーラル・シー諸島の東部地域に属している。加えて、チェスターフィールド諸島、ベロン礁などのニューカレドニアの西部の島及びニューカレドニア島も地理学的には、コーラル・シー諸島の一部である。
平たく言えば、オーストラリアの東側とソロモン諸島、バヌアツ、ニューカレドニアに囲まれたような場所が珊瑚海と呼ばれ、西方に珊瑚海が最も狭くなる場所、トレス海峡があり、南方はタスマン海となる。本来は非常に風光明媚な場所だ。
このとき、川口中将率いる日本海軍第二機動部隊は既に米艦隊が待ち構えているであろう珊瑚海に向けて南進中であった。鋼鉄の艦体に当たっては砕ける波の音が、囁きのように聞こえることが海の穏やかさを物語っている。或いは、それは嵐の前の静けさか。
「それにしても……暗号を撒餌にするとは稲穂様もとんでもないことを考えるな」
川口は双眼鏡から目を離すと、傍らの航空参謀に向けて言い放った。
「まったくですな。我々には思いもつかぬ発想です。ですが……先の作戦で稲穂様はどうもこちらの手の内が読まれている可能性を危惧しておられたようで」
そう、先の蘭印侵攻作戦で一番の悩みの種は神出鬼没の蘭米連合艦隊であった。時折出没するこれらの艦隊によって、輸送船や艦船に少なからぬ被害が生じたのである。それは作戦継続を危うくするものではなかったが、まるで読んでいたかのように出没していたことから大本営ではよもやこちらの暗号が読まれているのではという可能性に気付いた。
作戦終了後、蘭米連合艦隊の動きを再検証しても、その可能性は高いと結論付けられたのである。また、蘭米侵攻作戦の間、日本の勢力下にある島々へ米機動部隊と思しき艦隊から小規模な空襲が繰り返されており、しかも第二、第三機動部隊が追跡するも相手は悠々と去っていく。
一部からは守勢に立たされたアメリカが戦意高揚のために仕掛けた限定的攻撃ではないかとの見方もあったのだが、同時にこれだけ大胆極まる行動は、こちらの暗号を読んでいない限り不可能だと稲穂姫が主張したのである。
と、ここで稲穂姫は一計を案じた。
それは、こちらの手の内を敢えて読ませ、敵機動部隊と思しき艦隊を誘き寄せ撃滅するという作戦である。暗号が読まれていることを逆手に取り、撒餌とするとは稲穂姫もしたたかだ。
「そのためにこうして我々が撃滅の任を負うというわけか」
「それにしても……敵機動部隊は本当に現れるのでしょうか」
彼ばかりでなく、幕僚の誰もが感じていた不安だろう。もしも敵機動部隊が現れず、しかも手の内を読んでいたとすれば、相手にしてみればシーレーンががら空きになるこのチャンスを逃すはずはあるまい。だが、川口は確信していた。
「いいや、必ず来るさ。何しろポートモレスビーはアメリカ極東方面最後の砦になる。これを失えば、アメリカが極東へ艦隊を展開するのは非常に困難となるだろう。それに、アメリカの性格からしていつまでも守勢に立たされるのはさすがに我慢の限界だろうな」
そう、このとき日本海軍は、ポートモレスビー攻略のため艦隊を派遣する旨を暗号強度を弱めて発信していた。当然日本側もアメリカの動きを読んでおり、厄介な敵機動部隊を片付けるために偽の電文を流し罠を仕掛けたのである。
因みに、本来なら攻略目標の隠語をポートモレスビーのモからMOとするところを、更にM0としていたのは、こちらが罠を仕掛けたと相手に悟らせないためのカモフラージュだ。かなり稚拙なカモフラージュだが、相手は攻略目標がポートモレスビーと読み、こちらが罠を仕掛けていたことについては今のところ気付いていないようである。
「それより航海参謀、この調子だと接敵は明日のいつ頃になるか?」
「現在航海速度16ノットを維持。このまま行きますと、接敵は早くて早朝になる見込みです」
「そうか。それなら早朝まで関係者には十分休息を命じておけ。明日は……歴史に残る日になるだろう」
川口中将の意味深な言葉。それは、もし敵艦隊が空母を含む機動部隊である場合、それは世界史上初めての空母同士の戦いになることを意味していた。蘭印では世界初の航空機対戦艦の戦いとなった。真珠湾でも空母部隊によって太平洋艦隊が壊滅に追い込まれたが、停泊中の一方的な攻撃である。
そして今回、本格的な海戦としては空母同士の戦いはこれが世界で初となるわけである。
皇紀10002年(1942年)4月23日 珊瑚海南方
「ようし、今日のこの日を我が合衆国のラッキーデイとするのだ。
TF16こと第16任務部隊旗艦エンタープライズの艦橋にてややしわがれたような、それでいて豪快な声が響き渡る。その男こそ、後にブルの綽名で日米双方から知られるようになるセオドール・ハルゼー中将であった。その容貌はまさにブルドッグというか、アメコミに出てくるマッチョキャラそのままだ。
だが、アメリカ海軍の於ける当時航空戦に精通していた数少ない軍人の一人であり、また、先の太平洋艦隊司令長官だったキンメルとは同期かつ親友でもあった。実際、キンメルの戦争準備やその対処についても高く評価しており、連邦議会でもキンメルを積極的に擁護した一人である。
結果的にキンメルは解任されたが、擁護の甲斐あってか司令部の幕僚らは引き続き留任を認められ新司令長官となったニミッツを支えている。
女性士官のダグラス少将からハルゼーに交代したのは、ダグラスはプレジデント級空母から成る新機動部隊の指揮を執る関係で転属となったためである。彼女は次の戦いで瑞穂姫率いる連合艦隊と対峙することになるだろう。
「これまで我々は守勢一方でしたが、今度は強烈なカウンターパンチを浴びせてやる番です。そして、次なる大作戦で、逆転ホームランとなりましょう」
「参謀長、まことにその通りだ。まさか、ヤツらは我々が暗号解読に成功しているとも知らず、のこのこやってくるからな。ところで無線封止しているようだが、索敵のほうは万全だろうな?」
そう言ってハルゼーは参謀長を睨む。
「既に三段索敵を実施、主に北側から北東を中心に展開しており、また、ポートモレスビー及びニューカレドニアなどからもカタリナを多数動員して索敵に当たらせております。いずれ索敵網にかかるのも時間の問題と思われます」
このとき、珊瑚海を中心に敵機動部隊が現れる可能性が高いとされるソロモン諸島方面である北から北東にかけて9本の索敵線が引かれ、索敵は2機1組で行い、更にそれを3段としている徹底ぶりであった。また、一部にはカタリナと呼ぶ大型飛行艇も動員されており、カタリナは航続距離も長く強力な無線を搭載しているのでハルゼーも頼りにしていた。
尚、史実でのカタリナは双発だが、後に要求仕様変更により4発に改め、速度も300㎞/hそこそこから強力なエンジンに換装したことも手伝って400㎞/h近くにまで向上したほか、航続距離も5000㎞に向上している。
しかし……似たようなことを考えていたのはアメリカだけではなかった。突然、艦橋に悲鳴に近い声で通信が飛び込んできた。
『司令官、カタリナより通信。ニューカレドニア付近で敵大型飛行艇を発見!!こ、こんな巨大飛行艇は見たことがありません、未確認の機体です!!』
それは、付近を索敵飛行していたカタリナ飛行艇からの通信であった。敵大型飛行艇発見の知らせにどよめき立つエンタープライズ艦橋。
「な、なんだとお!?未確認の飛行艇を発見したとは、つまりこれはヤツらが我々がいることを前提にした索敵行為なのではないのか!?」
ハルゼーはそう直感した。敵大型飛行艇がニューカレドニア付近を飛行しているということは、自分たちがこの付近にいることを知っていなければありえない。
「そ、それより……敵飛行艇は一体何処から……?」
参謀長は蒼褪めている。無理もない。敵は我々がここにいることを知らないはずなのだから。しかもここまで敵潜水艦の気配さえなかった。それ以上に、その飛行艇が何処から飛んできているのか気になった。
「恐らくはマーシャル諸島からじゃないのか!?」
「ま、まさか、それだとここまで5000キロ近くありますよ。そうなれば敵飛行艇の航続距離はざっと10000キロ。化け物じゃないですか。そんな長い距離を飛べる飛行艇など……」
当時の常識で考えるとありえない性能の持ち主ということになるが、そんな参謀長をハルゼーは一括する。
「だがこれは現実だ。位置からしてそれしか考えられんだろ。第一、敵はあの富嶽を実用化するような国だぞ。10000キロもの距離を飛べる飛行艇があっても不思議はないだろ」
日頃部下の将兵に『キル・ジャップス、キル・ジャップス、キル・モア・ジャップス』と叫んで士気を鼓舞し、典型的白人至上主義者の一人でもあった(尤も、当時の白人は多かれ少なかれそれが普通でありハルゼーだけが特別だったわけではない)ハルゼーだが、一方で相手の戦力を正確に推し量る冷静さも持ち合わせていた。富嶽の存在はハルゼーも当然知っており、富嶽がいるくらいだからそんな常識はずれの飛行艇がいても不思議はないと考えるのもハルゼーの思考の常識の範囲内であった。尤も、さすがにこの付近を敵飛行艇が飛んでいるのは予想外であったが。何しろ敵は我々が暗号を解読し、ここで待ち構えていることを知らないはずなのだから。
だが、ハルゼーは豪快な言動と性格とは裏腹に決断が早く、更に巧緻よりは拙速を尊ぶ指揮官でもあった。更に、ハルゼーに決断を促す通信が空母レキシントンを旗艦とするTF17こと第17任務部隊指揮官のスターリング・フレッチャー少将から入った。
「司令、フレッチャー司令から、直ちに航空部隊を飛ばし、索敵機の返電を飛行中に受け取らせる自由攻撃を提案してきました」
敵飛行艇がこの付近を飛んでいる以上、こちらが発見されるのも時間の問題だ。恐らくは敵も同様のことを考えていないという保障はない。だとすれば、ここは先手をとって直ちに発艦させるべきだろう。ハルゼーは決断した。
「よし、攻撃隊は直ちに飛び立て!!敵がくるのをぼうっと待ち構えている必要はない。燃えるものをここに置いている理由はないからな。同時に対空戦闘用意!!」
次々に飛び立つ攻撃隊。その様子を見守るハルゼー。同時に思った。実戦は、演習とはあまりにも勝手が違うと。
これまで幾度となく演習と仲間とともに戦術理論の研究を重ねていたハルゼーであったが、それでも実戦の段になるとまだまだ手探りが多いと感じた。敵が来るのはわかっていながら未だ発見の報は入っていない。しかし、このままではこちらが敵から攻撃を受け、そのとき甲板上に多数の攻撃隊が並んでいるときであれば、爆弾一発命中しただけであっという間に火達磨だ。それだけは何としても避けねば。
実は、空母の戦いはそれこそ数百キロ単位の距離での戦いであり、水平線の向こうの見えぬ敵を相手にしなければならない。それが如何に難しく、そして決断のシビアなことか。
敵艦隊発見の報せが飛び込んできたのは、攻撃隊発艦直後のことであった……
皇国戦姫とはどういう世界観なのか、そしてこのブログでの決め事とは?
こちらもクリック↓

ファンタジー・SF小説 ブログランキングへ

長編小説 ブログランキングへ

にほんブログ村

にほんブログ村
にほんブログ村
皇紀10002年(1942年)4月22日 珊瑚海
珊瑚海とは、オーストラリア北東海岸の縁海で、西側はグレートバリアリーフを含めたクイーンズランド州の東海岸に接し、東側はバヌアツやニューカレドニアと、北側はソロモン諸島南端と、南側はタスマン海に囲まれている。
グレートバリアリーフの島や堡礁はクイーンズランド州に属しているが、ほとんどの堡礁及び小島は、コーラル・シー諸島の東部地域に属している。加えて、チェスターフィールド諸島、ベロン礁などのニューカレドニアの西部の島及びニューカレドニア島も地理学的には、コーラル・シー諸島の一部である。
平たく言えば、オーストラリアの東側とソロモン諸島、バヌアツ、ニューカレドニアに囲まれたような場所が珊瑚海と呼ばれ、西方に珊瑚海が最も狭くなる場所、トレス海峡があり、南方はタスマン海となる。本来は非常に風光明媚な場所だ。
このとき、川口中将率いる日本海軍第二機動部隊は既に米艦隊が待ち構えているであろう珊瑚海に向けて南進中であった。鋼鉄の艦体に当たっては砕ける波の音が、囁きのように聞こえることが海の穏やかさを物語っている。或いは、それは嵐の前の静けさか。
「それにしても……暗号を撒餌にするとは稲穂様もとんでもないことを考えるな」
川口は双眼鏡から目を離すと、傍らの航空参謀に向けて言い放った。
「まったくですな。我々には思いもつかぬ発想です。ですが……先の作戦で稲穂様はどうもこちらの手の内が読まれている可能性を危惧しておられたようで」
そう、先の蘭印侵攻作戦で一番の悩みの種は神出鬼没の蘭米連合艦隊であった。時折出没するこれらの艦隊によって、輸送船や艦船に少なからぬ被害が生じたのである。それは作戦継続を危うくするものではなかったが、まるで読んでいたかのように出没していたことから大本営ではよもやこちらの暗号が読まれているのではという可能性に気付いた。
作戦終了後、蘭米連合艦隊の動きを再検証しても、その可能性は高いと結論付けられたのである。また、蘭米侵攻作戦の間、日本の勢力下にある島々へ米機動部隊と思しき艦隊から小規模な空襲が繰り返されており、しかも第二、第三機動部隊が追跡するも相手は悠々と去っていく。
一部からは守勢に立たされたアメリカが戦意高揚のために仕掛けた限定的攻撃ではないかとの見方もあったのだが、同時にこれだけ大胆極まる行動は、こちらの暗号を読んでいない限り不可能だと稲穂姫が主張したのである。
と、ここで稲穂姫は一計を案じた。
それは、こちらの手の内を敢えて読ませ、敵機動部隊と思しき艦隊を誘き寄せ撃滅するという作戦である。暗号が読まれていることを逆手に取り、撒餌とするとは稲穂姫もしたたかだ。
「そのためにこうして我々が撃滅の任を負うというわけか」
「それにしても……敵機動部隊は本当に現れるのでしょうか」
彼ばかりでなく、幕僚の誰もが感じていた不安だろう。もしも敵機動部隊が現れず、しかも手の内を読んでいたとすれば、相手にしてみればシーレーンががら空きになるこのチャンスを逃すはずはあるまい。だが、川口は確信していた。
「いいや、必ず来るさ。何しろポートモレスビーはアメリカ極東方面最後の砦になる。これを失えば、アメリカが極東へ艦隊を展開するのは非常に困難となるだろう。それに、アメリカの性格からしていつまでも守勢に立たされるのはさすがに我慢の限界だろうな」
そう、このとき日本海軍は、ポートモレスビー攻略のため艦隊を派遣する旨を暗号強度を弱めて発信していた。当然日本側もアメリカの動きを読んでおり、厄介な敵機動部隊を片付けるために偽の電文を流し罠を仕掛けたのである。
因みに、本来なら攻略目標の隠語をポートモレスビーのモからMOとするところを、更にM0としていたのは、こちらが罠を仕掛けたと相手に悟らせないためのカモフラージュだ。かなり稚拙なカモフラージュだが、相手は攻略目標がポートモレスビーと読み、こちらが罠を仕掛けていたことについては今のところ気付いていないようである。
「それより航海参謀、この調子だと接敵は明日のいつ頃になるか?」
「現在航海速度16ノットを維持。このまま行きますと、接敵は早くて早朝になる見込みです」
「そうか。それなら早朝まで関係者には十分休息を命じておけ。明日は……歴史に残る日になるだろう」
川口中将の意味深な言葉。それは、もし敵艦隊が空母を含む機動部隊である場合、それは世界史上初めての空母同士の戦いになることを意味していた。蘭印では世界初の航空機対戦艦の戦いとなった。真珠湾でも空母部隊によって太平洋艦隊が壊滅に追い込まれたが、停泊中の一方的な攻撃である。
そして今回、本格的な海戦としては空母同士の戦いはこれが世界で初となるわけである。
皇紀10002年(1942年)4月23日 珊瑚海南方
「ようし、今日のこの日を我が合衆国のラッキーデイとするのだ。
TF16こと第16任務部隊旗艦エンタープライズの艦橋にてややしわがれたような、それでいて豪快な声が響き渡る。その男こそ、後にブルの綽名で日米双方から知られるようになるセオドール・ハルゼー中将であった。その容貌はまさにブルドッグというか、アメコミに出てくるマッチョキャラそのままだ。
だが、アメリカ海軍の於ける当時航空戦に精通していた数少ない軍人の一人であり、また、先の太平洋艦隊司令長官だったキンメルとは同期かつ親友でもあった。実際、キンメルの戦争準備やその対処についても高く評価しており、連邦議会でもキンメルを積極的に擁護した一人である。
結果的にキンメルは解任されたが、擁護の甲斐あってか司令部の幕僚らは引き続き留任を認められ新司令長官となったニミッツを支えている。
女性士官のダグラス少将からハルゼーに交代したのは、ダグラスはプレジデント級空母から成る新機動部隊の指揮を執る関係で転属となったためである。彼女は次の戦いで瑞穂姫率いる連合艦隊と対峙することになるだろう。
「これまで我々は守勢一方でしたが、今度は強烈なカウンターパンチを浴びせてやる番です。そして、次なる大作戦で、逆転ホームランとなりましょう」
「参謀長、まことにその通りだ。まさか、ヤツらは我々が暗号解読に成功しているとも知らず、のこのこやってくるからな。ところで無線封止しているようだが、索敵のほうは万全だろうな?」
そう言ってハルゼーは参謀長を睨む。
「既に三段索敵を実施、主に北側から北東を中心に展開しており、また、ポートモレスビー及びニューカレドニアなどからもカタリナを多数動員して索敵に当たらせております。いずれ索敵網にかかるのも時間の問題と思われます」
このとき、珊瑚海を中心に敵機動部隊が現れる可能性が高いとされるソロモン諸島方面である北から北東にかけて9本の索敵線が引かれ、索敵は2機1組で行い、更にそれを3段としている徹底ぶりであった。また、一部にはカタリナと呼ぶ大型飛行艇も動員されており、カタリナは航続距離も長く強力な無線を搭載しているのでハルゼーも頼りにしていた。
尚、史実でのカタリナは双発だが、後に要求仕様変更により4発に改め、速度も300㎞/hそこそこから強力なエンジンに換装したことも手伝って400㎞/h近くにまで向上したほか、航続距離も5000㎞に向上している。
しかし……似たようなことを考えていたのはアメリカだけではなかった。突然、艦橋に悲鳴に近い声で通信が飛び込んできた。
『司令官、カタリナより通信。ニューカレドニア付近で敵大型飛行艇を発見!!こ、こんな巨大飛行艇は見たことがありません、未確認の機体です!!』
それは、付近を索敵飛行していたカタリナ飛行艇からの通信であった。敵大型飛行艇発見の知らせにどよめき立つエンタープライズ艦橋。
「な、なんだとお!?未確認の飛行艇を発見したとは、つまりこれはヤツらが我々がいることを前提にした索敵行為なのではないのか!?」
ハルゼーはそう直感した。敵大型飛行艇がニューカレドニア付近を飛行しているということは、自分たちがこの付近にいることを知っていなければありえない。
「そ、それより……敵飛行艇は一体何処から……?」
参謀長は蒼褪めている。無理もない。敵は我々がここにいることを知らないはずなのだから。しかもここまで敵潜水艦の気配さえなかった。それ以上に、その飛行艇が何処から飛んできているのか気になった。
「恐らくはマーシャル諸島からじゃないのか!?」
「ま、まさか、それだとここまで5000キロ近くありますよ。そうなれば敵飛行艇の航続距離はざっと10000キロ。化け物じゃないですか。そんな長い距離を飛べる飛行艇など……」
当時の常識で考えるとありえない性能の持ち主ということになるが、そんな参謀長をハルゼーは一括する。
「だがこれは現実だ。位置からしてそれしか考えられんだろ。第一、敵はあの富嶽を実用化するような国だぞ。10000キロもの距離を飛べる飛行艇があっても不思議はないだろ」
日頃部下の将兵に『キル・ジャップス、キル・ジャップス、キル・モア・ジャップス』と叫んで士気を鼓舞し、典型的白人至上主義者の一人でもあった(尤も、当時の白人は多かれ少なかれそれが普通でありハルゼーだけが特別だったわけではない)ハルゼーだが、一方で相手の戦力を正確に推し量る冷静さも持ち合わせていた。富嶽の存在はハルゼーも当然知っており、富嶽がいるくらいだからそんな常識はずれの飛行艇がいても不思議はないと考えるのもハルゼーの思考の常識の範囲内であった。尤も、さすがにこの付近を敵飛行艇が飛んでいるのは予想外であったが。何しろ敵は我々が暗号を解読し、ここで待ち構えていることを知らないはずなのだから。
だが、ハルゼーは豪快な言動と性格とは裏腹に決断が早く、更に巧緻よりは拙速を尊ぶ指揮官でもあった。更に、ハルゼーに決断を促す通信が空母レキシントンを旗艦とするTF17こと第17任務部隊指揮官のスターリング・フレッチャー少将から入った。
「司令、フレッチャー司令から、直ちに航空部隊を飛ばし、索敵機の返電を飛行中に受け取らせる自由攻撃を提案してきました」
敵飛行艇がこの付近を飛んでいる以上、こちらが発見されるのも時間の問題だ。恐らくは敵も同様のことを考えていないという保障はない。だとすれば、ここは先手をとって直ちに発艦させるべきだろう。ハルゼーは決断した。
「よし、攻撃隊は直ちに飛び立て!!敵がくるのをぼうっと待ち構えている必要はない。燃えるものをここに置いている理由はないからな。同時に対空戦闘用意!!」
次々に飛び立つ攻撃隊。その様子を見守るハルゼー。同時に思った。実戦は、演習とはあまりにも勝手が違うと。
これまで幾度となく演習と仲間とともに戦術理論の研究を重ねていたハルゼーであったが、それでも実戦の段になるとまだまだ手探りが多いと感じた。敵が来るのはわかっていながら未だ発見の報は入っていない。しかし、このままではこちらが敵から攻撃を受け、そのとき甲板上に多数の攻撃隊が並んでいるときであれば、爆弾一発命中しただけであっという間に火達磨だ。それだけは何としても避けねば。
実は、空母の戦いはそれこそ数百キロ単位の距離での戦いであり、水平線の向こうの見えぬ敵を相手にしなければならない。それが如何に難しく、そして決断のシビアなことか。
敵艦隊発見の報せが飛び込んできたのは、攻撃隊発艦直後のことであった……
今後の展開にWktkという者はクリックするがよい
皇国戦姫とはどういう世界観なのか、そしてこのブログでの決め事とは?
こちらもクリック↓
ファンタジー・SF小説 ブログランキングへ
長編小説 ブログランキングへ
にほんブログ村
にほんブログ村