サッド・ヴァケイション | KINSEN洞

サッド・ヴァケイション

青山真治監督のサッド・ヴァケイション面白かった。

小説も脚本も読んでから行った。

脚本読んだ段階では気づけないことが沢山。

大雑把に言って、母を憎んでいる男が母に復讐するという話。


千代子(母)「あんたの妹のユリと、冴子さんと赤ん坊とみんな一緒にあんたの帰り待っとぉけんね」

健次(主人公)「・・・なんか、それ」

千代子「あら知らんやったん?ユリは松村のおばさんとあんたのお父さんの間に出来た子よ。それ知って私はあんた置いて出て行ったんよ・・・そおね、聞いとらんやったんね」


↑最後のこのくだり。ユリが妹だなんて千代子の嘘だと思った。

千代子が出て行ったのが、千代子のせいでなく夫(健次の父)のせいだと、千代子は健次に味方してもらいたくて出た嘘なのかと思って、脚本読んだ。健次も嘘だと思っているのかと。

だけど、千代子の台詞受けての浅野忠信のあの表情!ユリが妹なのは本当だった!浅野忠信が「演技」をしているのって初めて見たような気がした。

その後のラストで、アルバート・アイラーの「ゴースト」が流れた。あの、人間の業をすべて包んでそれでも生きる!!的なファンファーレのような、でも哀愁漂う祝祭的なメロディ。聴くたびに涙が出そうになるこの曲がここで使われた。とても活きている。

 冒頭の、川島が集団の中国人に拉致されるシーンの、中国語のヒップホップもかっこよかった。最初の、タイトルが出てくるところもよかった。北九州の美しい遠景にジョニー・サンダースのサッド・ヴァケイションが流れるところ。その時点で涙出た。

 カメラワークにも魅了されました。足元ばかり間宮運送を次々出て行くトラックの下のほうばかり映している、その視点の低さとか、震えながら映す遠景とか。

 光石研の軽妙なお芝居には笑った。


 小説や脚本読んだときは、悲劇だと感じたことが、映画で見るとハッピーエンドなつくりになっているから不思議だ。映像の面白さを感じ、そして役者の力量ってすごい!と本当に思う。あのあと、後藤はつかまってしまったのだろうか。梢はどうなったか。