私はキャラクターの顔が描いてあるグッズは身につけない(集めはするが)。

なぜなら、アニメの登場人物は自分の顔が描かれたものなど持たないからだ(カ〇松除く)。

 

グッズを扱う会社に声を大にして言いたいのが、「作中に出てくる日用品をグッズ化してほしい」ということである。

キャラクターの美麗イラストが載せられたクリアファイル等も大いに需要があろうが、私はそのキャラクターが作中で使用していたペンが欲しい。愛用しているアクセサリーが欲しい。殴り合いで歯が抜けた描写があるなら差し歯もグッズにしてほしい。

 

長々と述べたが、人には「変身願望」というものがある。

私が「作中の日用品」が欲しいと思うのもキャラクターそのものになりたいという憧れがあるからだ。

そんな憧れを同様に持つ人たちが行く一つの道「コスプレ」。

コスプレを行う人のことを界隈では「(コスプ)レイヤー」と呼ぶ。

 

今回は私が「レイヤー」が苦手になった話をしようと思う。

 

同人誌頒布会で会ったレイヤーのAさんは地元が同じで何度か売り子をしてくれた。

何度目かのイベントの後、打ち上げをしようという話になりAは「レイヤー仲間5,6人も呼んでいいか」と言った。

ぼっち気質の私は会話に入れなくなることを危惧していたが、Aの仲間は皆気さくで良い人ばかりだった。

 

B以外は。

 

頒布会では華やかにコスプレしていたレイヤーさんたちも、当然のことながら打ち上げ会場には私服で来る。

自分の理想に近づかんがために日々鍛えているそうで、服のセンスもスタイルも抜群の人ばかりだった。

 

B以外は。

 

Bという女性はボロボロのジャージを着崩して現れた。一人称は「オレ」で、目にかかった前髪を5秒に1回かき上げていた。

周囲の人間によると、Bはハマったキャラに性格が似るらしく服の趣味もその都度変わるらしい。

 

Bの好きなキャラ(以下X)は私も知っていた。原作を読んだくらいだが、XがBのような不潔な出で立ちではないことは分かる。

Xの着崩した服装はアニメの頭身と作者の画力あってこそのスタイリッシュであって、現実の人間がやっても「サイズ間違えてますよ」としか思わない。ましてや、10数年着古しているジャージでつく恰好などない。

Xは金髪でV字の前髪をしているが、現実の人間が真似をしても「ひどい罰ゲームですね」としか感想が出てこない。

 

想像してほしい。

そんなBに迫られた私の心境を。

 

A「(私)さんは〇〇(週刊雑誌名)読んでた?」
私「小学生のころからずっと読んでますよ!初めて同人誌描いたの××(作品名)でした!」

C「私もめっちゃハマりました!推し誰でした?」

私「Yかな~」

C「好きそう~!私はZが一番好きで~」

 

という和気藹々とした会話の中で、私はいきなり顎を掴まれた。

 

B「え、お前俺が好きなの?」

私「ほえ(顎を掴まれているため正確な発声ができなかった)」

B「俺も嫌いじゃないぜ。アンタみたいなタイプ」

私「へっほぅでふ(結構です)」

A「Bさん~失礼だよ」

C「離そうよ~そのノリ外でやるなって。びっくりしちゃうでしょ」

 

後で聞いたがBは××のYも好きだったようで、一時期Yの性格に寄せていたらしい。

当時の私はよく分からないまま個室の居酒屋で顎クイ、壁ドン、頭ポンポンをやられた。

鳥肌が立った。

 

B「ほら、いいぞ。何て顔してんだよ。Yだよ。ツーショ撮るか?」

 

他にも色々言われたが顔が近すぎて入ってこなかった。

 

引きはがされ、私から一番遠い席に座らされた後もBはずっとウインクや投げキッスを寄こしたので私はなるべくBを視界に入れないようにしていた。

 

後日、DMでBから「二人きりで会おう」とのお誘いがあったが丁重にお断りした。

 

返事は「(私)……俺のことはもう過去なのか?」だった。

 

「Xのことは好きだけど、あなたのことは特に好きではありません」

 

とだけ返して以降接触がなかったのは幸いであった。