次男がシーバー病になった。右足のカカトが痛くて走れないと言う。そこで適切なケアをするためにシーバー病について色々と調べてみた。同じ症状で苦しんでいる子供がいたら、参考になれば嬉しい。
まずシーバー病とは踵骨骨端症という病名で、成長期の10歳前後の男児に多く見られると言う。子供の間はカカト本体の踵骨とカカト先端部の踵骨骨端核とが分離していて、この2つは成長線である骨端軟骨で繋がっている。骨端軟骨とは骨端線とも呼ばれていて、成長期の子供の骨にある軟骨部分を指す。この骨端線の軟骨部分が成長期に伸びて、そこが骨化することで身長が伸びるメカニズムは知っている人も多いと思う。そして足も踵骨の軟骨部分が伸びて骨化することで足が大きくなる。ただしこの骨端軟骨は柔らかいため、激しい運動や高い負荷で炎症が起きることがある。これがシーバー病の概要だ。
ちなみに大人になると骨端軟骨が消失して、分離していた踵骨と踵骨骨端核とが1つの骨になるため、シーバー病による後遺症はないと言う。とはいえ放置して重症化すると踵骨が変形したり、踵骨骨端核が壊死したりして、慢性的な痛みに繋がるケースもある。また患部を庇ってプレーすることで違う箇所の故障に繋がる恐れもある。シーバー病は成長痛だからと我慢してしまうことが多いけど、カカトに腫れがある場合は急性期の可能性があるため、2週間程度の安静が必要だ。ここで重症化させずに急性期を乗り越えられたら、後述する改善方法で早期にプレー復帰できる見込みがあるので、重症化する前に勇気をもって休むべきだ。
さてカカトに痛みが出る理由は分かったけど、そもそも何故10歳前後で多発するのだろう。
次男の場合、ちょうど12歳の誕生日あたりで二次性徴の兆候である精巣の肥大化が見られた。この時点でおよそ身長150cm体重45kgの痩せ型。そこから半年くらい身長の伸びが鈍化して、一方で食欲は旺盛で体重も45kgから55kgへと一気に増加した。写真で振り返ると12歳3ヶ月頃から明らかに顔が丸くなったので、この時期に体重が増えたのだろう。そしてその3ヶ月後から急に身長が伸び始めて、そこから2ヶ月後にカカトの痛みが発生した。このタイミングでちょうどお盆休みで2週間のオフがあったので、一旦は痛みが解消されたのだけど、オフ明けの練習初日からまたカカトの痛みが再発した。時系列で整理すると、二次性徴から3ヶ月後に体重増加、その5ヶ月後にシーバー病を発症している。
そういえば少年団時代にシーバー病で苦しんでいたチームメイトがいた。たしか4年生になって初めての公式戦を控えた時期に、当時攻撃の中心だった次男が右足首の剥離骨折で離脱して、更に守備の中心だった子供までシーバー病で離脱して、みんなで大騒ぎしたことを覚えている。そこで当時の写真を振り返ってみると、その守備の中心だった子供の顔がどうにも丸い気がする。もう少し写真を遡って、彼の顔が丸みを帯び始めた時期を探ってみると、明らかに変化が見て取れたのは、ちょうど彼がシーバー病を発症する5ヶ月前だった。これは次男と全く同じだった。
ハッとした僕は当時の写真を次々と開いていった。サッカー少年は基本的にみんな痩せているので、一時的に体重増加すると明らかに顔が丸くなって分かりやすい。しかも僕は5年間ほぼ全ての試合に乗り合いの車を出して引率してきたので、子供達の顔を見ればオカンの次くらいに変化が分かる。だから怪我でしばらく休んでいた子供もすぐ分かるし、急に体重が増加した子供もすぐ分かった。こうして当時の写真から子供達の体重が増加した時期を探っていくと、早い子供では小学3年生の1月頃、平均すると小学5年生の7月に体重増加の兆候が見て取れた。これは10歳前後と言われるシーバー病の発症年齢とほぼ一致していて、思春期の体重増加とシーバー病の発症年齢には何かしらの関連性があることを示唆していた。
続いてシーバー病になりやすい人の特徴を調べてみた。次男やチームメイトの発症経緯から、おそらく体重増加でカカトに負担が増えることは間違いないだろう。ところが実際に調べてみると、練習の頻度や強度、偏平足や関節の柔軟性といった要因ばかりで、体重差による発症率の違いは見当たらなかった。そもそも年齢を問わず身体の重たい子供はいるはずだし、オーバーユースの子供だっているはずだ。それなのに思春期の開始年齢である10歳前後にシーバー病の発症が集中している事実は、体重増加やオーバーユースが直接の原因ではないことを示している。つまり思春期における体重増加以外の何かが発症の鍵を握っているのだ。
そこで今度は思春期に起こる身体の変化を調べてみた。大きな変化としては精巣の発達、身長の伸びや体毛の発生が挙げられる。精巣や体毛は明らかにカカトとは関係ないため、やはり疑うポイントとしては急激な身長の伸びだろう。ちなみに身長が伸びるということは手足の骨が伸びるということで、骨が伸びることで筋肉の長さが不足するため、骨が引っ張られることは想像に難くない。そしてカカトの踵骨骨端核はアキレス腱と直接繋がっているため、踵骨骨端核がアキレス腱に引っ張られて痛みが発生するのだろう。実際に接骨院でアキレス腱を伸ばす施術を受けると、かなり痛みが軽減されると次男は言う。
とはいえ1ヶ月で最大1cm程度の伸びである。子供なら思春期以前でも年間5~7cm程度は伸びるし、その伸び幅は均等ではなく、夏や冬に一気に伸びる子供だっている。つまり思春期以外でもシーバー病を発症する条件が揃う可能性があって、だけど思春期以外の発症例をほとんど聞かない。これは筋肉の長さ不足が根本の原因ではないと考えるのが自然だろう。
この謎を解く鍵に思春期の栄養状態を調査した結果がある。
結論から言うと、思春期の子供は総じてエネルギーと鉄分が顕著に不足していると言う。これは現代人の食生活を考えると意外な結果で、野菜不足でもなく、糖分の摂り過ぎでもない。時期的に考えて、おそらくこれらは身体を大きくするタイミングで不足する、つまり消費する栄養素なのだろう。まず身長を伸ばすタイミングで大量のエネルギーを消費することは知っている人も多いと思う。思春期の初期に食欲が旺盛になってエネルギーを蓄えることも、身長が伸びるタイミングで自然と食欲が落ちて消化に使うエネルギーを減らすことも、人間の成長メカニズムに沿った行動だ。
だけど鉄分も不足するのは何故だろう。そもそも鉄分はその大半が血液に使われていて、その血液は体重の約8%を占めている。これは全体で見ると小さい数字に思えるけど、骨や筋肉を除くとかなりの割合を占めている。しかも身体に貯蔵している鉄分はたったの4g程度で、吸収率の悪い栄養素のため枯渇しやすい。そして思春期に大人の身体に変わるタイミングで、実は身長以外に肺や心臓も大きくなると言う。中学生になると急に持久力が向上するのは、血液中の酸素と二酸化炭素を交換する肺や、それを全身に送り出す心臓が大きくなることで、心肺機能が急激に向上するためだ。そして心肺機能というエンジンが大きくなるということは、当然それに見合った血液の量が必要になる。つまり思春期になると大量の血液を作ることで鉄分不足になるのだ。
そして鉄分不足になると次の症状が表れる。集中力の低下、頭痛、食欲不振、筋力の低下、疲労感、イライラ、肩こり、脱毛など。これまで思春期にホルモンバランスが崩れて生じると思っていた症状と、かなり一致する部分が多い。もしかするとクラムジーの遠因にもなっているかもしれない。そして今回注目すべきは肩こりの症状だ。鉄分が不足すると血液中のヘモグロビンが不足して、全身に酸素を運ぶ働きが低下してしまう。そして筋肉が酸素不足に陥ると、疲労物質が溜まって硬くなってしまう。これが肩こりの原因だと言う。そうなのだ、鉄分が不足すると筋肉が硬くなるのだ。
まとめると思春期には身長以外に肺と心臓が急激に大きくなるため、その心肺機能に見合った量の血液を作ろうとして鉄分が不足する。すると血液中のヘモグロビンが不足して、筋肉が酸素不足に陥ってアキレス腱が硬くなる。ただでさえ骨が伸びて長さが不足しているアキレス腱が、踵骨骨端核を強く引っ張ってシーバー病を発症する。ようやく思春期にシーバー病が多い理由が分かってスッキリした。
そこで次男には鉄分豊富なプルーン入り飲むヨーグルトを毎日寝る前に飲ませてみた。我が家で飲ませた商品のリンクを貼っておく。これを1日1本で効果があったので、手軽なもので良いと思う。
プルーンFe 1日分の鉄分 のむヨーグルト
それとテーピングもいろいろと試行錯誤した結果、プレーする時だけカカトの捻りを軽減するテーピングを施したところ、一時的に痛みが取れた。これは回内足という踵の骨が内側に倒れている状態を改善するテーピングで、かなり効果があったように思う。ただし途中でテープが伸びて緩むと痛みが出るので、その場合は貼り直す必要がある。これも参考にした接骨院のHPを貼っておく。かかりつけの接骨院の先生も知っていた貼り方なので、回内足の改善にはよくあるテーピング方法なのだろう。シーバー病の踵の痛みに効果的なテーピング方法
あと自宅でアキレス腱をマッサージしたところ明らかに硬く、頑張って揉みほぐすと柔らかくなったので、これも多少は効果があったと思う。こうして鉄分補給と回内足改善テーピングとマッサージに取り組んだ結果、数日でカカトの痛みが消えて無事に競技復帰できた。ちなみに同じ時期にオスグッドの兆候もあったのだけど、いつの間にか痛みが消えていたらしい。オスグッドもシーバー病と同じ仕組みで、太ももの筋肉が膝下の骨に直接繋がっていて、身長が伸びるタイミングで太ももの筋肉が膝下の骨を引っ張って痛みが出る。ところがこちらはテーピングもマッサージもせず、気付いたら痛みが消えていたので、おそらく鉄分摂取が効いたのだろう。JFAは全国のサッカー少年に鉄分摂取を通達するべきだと思う。
さて思春期に起こる身体の痛みは、成長痛と言って我慢させる風潮がある。練習を休めずに重症化して、それでも我慢してプレーしている子供も多いだろう。育成年代で問題になっている燃え尽き症候群も、こうしたことが原因で心が疲弊してしまうのかもしれない。実際にプロ選手でも怪我に苦しんで引退するのだから、子供なら尚更に辛いはずだ。
願わくは子供達が大好きなサッカーで苦しむことのない未来が訪れることを。