年上の主婦との情事に溺れる高校一年生の少年。不妊治療を重荷に感じながら、高校生との色事に逃げる主婦。セックスがどんなものか興味津々の女子高生。ぼけた祖母と二人で暮らす男子高生。助産院を営みながら、女手ひとつで息子を育てる母親。


──5章に渡る連作の中に、恋があって愛があって、食欲があって性欲があって、貧乏があって裕福があって、芽生えがあって老いがあって。とことんまで愚かでいとおしい〝いのち〟の出来事があった。至極 当たり前だけれど、恋とセックスと妊娠と出産と人生の誕生は数珠繋ぎなんだってことを目の当たりにしたよ。すべての動物には母がいる、ということも。そしてそのサイクルは、これから先もずっとまわり続けるんだわ。そう考えると、図らずも〝母の日小説〟だったな。


人って煩わしいなぁと思う反面、人と繋がり合いたくてたまらなくなる、慈愛に満ちた読後感。いま、なんだかとても、泣きたい気持ち。