昨日ABEMA地域対抗戦の準決勝第1試合が放送された。中部チーム対関東Aチームである。1位通過が中部チームで、関東Aチームは2位通過である。2勝1敗での通過であるが羽生善治九段の活躍が光る。メンバー的には強力なのだがもう一つ他の棋士の活躍が見られない。それは中部チームも同じで、藤井竜王名人の9勝1敗が光るばかりである。チーム合計10勝の内9勝を占めている。フィッシャールールが得意な服部慎一郎六段も不本意な成績である。豊島将之九段も先発メンバーではなく、控えに回っているので出番が少ない。藤井竜王名人が負けた時に出番が回ってくるという感じである。

 さて第1局は豊島将之九段対近藤誠也七段であった。いよいよ豊島九段が先発メンバーになり、藤井竜王名人の前に出ることになった。チームのエースは一度負けても二度目も出場できる2番手に置くことが多い。今回も杉本昌隆監督は2番手に藤井竜王名人を配置した。対する関東Aチームは佐々木勇気八段と羽生監督を温存して、2番手にはフィッシャールールで強さを発揮している木村一基九段を置いていた。中部チームは予想外だとして、全員出てくるのかななどと話していた。羽生監督の、他の棋士にも活躍の機会を与えようということなのだろうが、裏目に出たようだった。1局目は豊島九段の先手で、リードを奪ったまま押し切った。

 2局目は豊島九段対木村九段戦である。序盤から攻めた木村九段と手厚く受ける豊島九段。解説の遠山雄亮六段が最後は棋風通りになると思いますよ、木村九段の受け、豊島九段の攻めとなると予想していた。最終盤は木村九段が必至に近い状態にして、豊島九段に詰まして見ろになった。かなり難解な詰将棋になった。佐々木勇気八段は「詰ますしかないのであれば、詰ますんじゃないですか」と言っていた。しかし時間がない。1手指すごとに5秒延びると言っても、切れ負けにならないためには、5秒以内に指さなければならない。ちょっと複雑な詰め手順で、AIの評価値が逆転して木村九段に90%以上を示した。6五桂が悪手だったようである。4六玉と逃げていれば詰まなかったようだが、一目は危ない筋である。6筋の方に逃げた。しかしまだ詰むや詰まざるやである。解説の遠山六段が藤井竜王名人に聞きたいと言っていた。3五飛と回ったところで豊島九段は落ち着いたようである。どうやら詰みを読み切ったようだ。時間稼ぎの5七歩が功を奏したようである。最後は飛車を切って金を打ち、見事に詰み上げた。豊島九段も木村九段も反省していた。

 この辺りから睡魔が襲ってきた。3局目は豊島九段対石井健太郎六段(当時)である。段々と目が開かなくなり、耳だけがまだ聞こえているのか、豊島九段が勝ったことを記憶している。再び目覚めた時は藤井竜王名人対羽生九段戦の最中であった。中部チームの4勝1敗になっており、藤井竜王名人が勝てば中部チームの勝利が確定する。もう既に藤井竜王名人が優勢であった。フィッシャールールだと藤井竜王名人でも間違えることが多い。羽生九段はフィッシャールールに慣れたようで、その強さを遺憾なく発揮している。決め手を与えずに進行している。攻撃型の豊島九段も受けの手を連発していたが、時間のないフィッシャールールでは受けた方が勝率が良いようだ。木村九段や森内俊之九段が50代にしてフィッシャールールでも高勝率を上げているのは、受けの名手だからであろう。時間がないので攻め潰すのが良いとされているが、受けの好守を連発して、悪手を指させるわけである。将棋は最後に悪手を指した者が負けるゲームである。フィッシャールールはそれを際立たせるルールだなと感じた。少しもつれかかっても決定的な悪手を指さないのが藤井竜王名人の強さである。粘る羽生九段を振り切って最後は即詰みに打ち取った。中部チームの5勝1敗の勝利である。関東Aチームは先発メンバーが1勝も出来なかったのが敗因かな。中部チームは八代弥七段と服部慎一郎六段は出番が回ってこなかった。杉本監督も棋士としての出番はなかった。まあ先発メンバーで勝っていこうというオーダーだから仕方がない。しかし中部チームは豊島九段が最年長か。強い筈である。優勝候補の最右翼は関東Bチームだと思っていたが、やはり勝ち抜き戦は絶対的エースがいるところが強いな。やはり優勝候補の筆頭に挙げるべきだったな。

 あと2週でABEMA地域対抗戦は終わる。しかしすぐにABEMAトーナメント2024が始まる。団体戦はやはりメンバーの構成だなとわかる。ドラフト会議で誰を指名するかが、勝敗の鍵を握りそうである。少し忖度が入っているようなドラフト会議であったが、本気の指名になっていきそうである。何せ棋士は負けるのが嫌いだからな。囲碁棋士とはちょっと違う所かな。アマチュアを強くするためには適当に勝たせてやるのがいいのだが、置き碁と駒落ち将棋の違いかな、負けると駒落ちでも悔しいからな。置き碁の場合は計算が出来るから、何目負けるかどうかはプロの匙加減だからな。詰将棋選手権はプロでも参加するが、アマチュアでも結構優勝するからな。詰まないと思っていたら詰まされたは本当に悔しいからな。負けず嫌いは将棋が強くならないという。負けず嫌いだがきちんと反省できるかどうかが、分岐点なのかな、強くなるならないの。

 ABEMAの大会は非公式戦だが、本気度が増して誰かが準公式戦と言っていた。全員参加が公式戦の不文律になっているみたいだが、出場棋士は選べるようにするのもいいかもしれない。特に女流棋士は、副業抜きではやっていけないのだから、公式戦優先ではあるが、時と場合によっては副業を優先させてもいいのではないだろうか。医師を目指している女流の卵も多いと聞く。理系の方が将棋の上達は早いので、将来の職業選択に邪魔になるようだ。辞めさせる親も多いようだ。藤井竜王名人でさえも、東大進学を期待されたらしいからな。奨励会では棋士に成れなかった保険に、大学進学を考える会員の親も多いらしい。18歳や15歳の奨励会員の秋から冬にかけての休会が多いのは受験勉強の為であろう。20歳前に退会して大学進学を目指す者も増えたらしい。以前は何だだらしないと思っていたが、収入の多寡が、その人の価値を決めるような資本主義社会では、仕方がないことなのかな。最近では将棋ばかりに夢中になっている「将棋バカ」とは言われないようだが、八冠になっても賞金対局料の合計額が2億円に満たないのは、その才能や努力量に対して、ちょっとどうかなと思う若者が増えるのは仕方がないことなのか。大相撲ではないが地元の後援会などが発達するといいかな。せめて承認欲求だけでも満たしてもらえたら、単なる趣味の延長上ではなくなる。ABEMAの役割が大きかったなと思う。