先週のA級順位戦最終局を皮切りに、今週も各クラスの順位戦最終局でさまざまなドラマが生まれている。昨日はB級1組の最終戦であった。既に千田翔太七段(当時)昇級昇段を決めている。もう1枠は増田康宏七段か大橋貴洸七段の争いである。増田七段はまさかの連敗で最終局に勝たないと昇級昇段が危うくなってしまった。12月の対局で勝てば昇級となってから、3ヶ月の持越しである。その間千田七段に先を越された。最終局に千田七段対大橋七段戦が組まれていたので、既に増田七段が昇級を決めていて、最後の1枠をこの千田対大橋戦で決める状況になるのかなと思っていた。しかしこの対局は増田七段が負けた時に、大橋七段が勝てば昇級と言う戦いになった。大事な1局には違いないが、少し薄まった感じがするのは否めない。代わりに最終局の増田七段対屋敷伸之九段戦は両者に大きな意味を持つ対局になった。ここまで5勝6敗の屋敷九段は6敗勢で一番順位が悪く、負ければ陥落確定と言う1局になっていた。ただし6敗勢は他に3名もいるので勝てば残留決定ではないが、残留有望になる。6敗勢同士の対局がないからである。増田七段は勝てば昇級決定で、負けても大橋七段が敗れれば昇級になる。千田八段は勝てば来期のA級9位が確定する。負けても増田七段が負ければ9位だが、増田七段が勝つと来期はA級最下位になる。他のクラスでは昇級した棋士は次のクラスでも昇級候補になることが多いのだが、A級だけは挑戦者候補にもなるかもしれないが、多くは陥落候補になるのである。今期は3勝6敗が2人出たので4勝5敗の佐々木勇気八段は陥落を免れたが、来期は8位である。実はA級では8位の棋士は陥落候補の一番手に上がることが多い。辛うじて今期は陥落を免れたが、来期は危ないなとなるのである。統計を取ったわけではないが、私の体感では10位の棋士より8位の棋士の方が陥落は多いのではないかと思っている。意外と9位は挑戦者になることも多く、勢いのある若手が多いのもある。B級1組の1位でA級昇級を果たしているので、A級昇級後も挑戦者争いに加わることが多い。藤井竜王名人もA級9位からの名人挑戦獲得である。渡辺明九段も一度陥落した後、B級1組で全勝昇級をして、A級9位になり、その勢いでA級全勝で名人挑戦を決め、そのまま名人位を獲得した。A級陥落前は、上位をキープするものの、名人挑戦がなく、棋界七不思議のひとつに数えられるほどであった。既に永世竜王の資格も獲得していたと思うが。十八世名人は羽生九段で、十九世名人は渡辺九段かと思っていたが、もうその目は無くなったのかな。十八世名人は森内俊之九段が獲得して、十九世名人は羽生九段が獲得した。そして二十世名人は衆目の一致するところ藤井竜王名人になるであろう。事故や病気が藤井竜王名人を襲わない限りは大丈夫であろう。

 しかし大山十五世名人の次は加藤一二三九段という時代もあった。大山名人の壁を崩せないまま、時代は中原誠十六世名人に移ってしまった。何が起こるかわからないのが人生というものなのかな。

 一昨日はB級2組の順位戦があった。深浦康市九段が勝てば昇級だったのに負けてしまって昇級はならずだった。代わりに昇級したのは石井健太郎六段だったが、順位一枚の差で青嶋未来六段が昇級昇段を逃がしてしまった。二人とも前期の昇級組でC級1組時代の星が影響しているのは気の毒であった。青嶋六段もまだ若いと言っても29歳になっている。藤井竜王名人に注目しているうちに、三段リーグやC級で活躍した棋士がもう20代後半や30代に突入している。確か青嶋六段もC級2組1期抜けの有望株だったと思う。すっかり今ではチェスの方で有名になってしまって、ようやく前期B級2組に昇級したが、8勝2敗の頭ハネは仕方がないか。むしろ石井健太郎六段が新B級2組で8勝2敗での昇級昇段を喜ぶべきかな。深浦九段の敗戦によってもたらされたものだからな。高見泰地七段がようやく段位に順位戦のクラスが追いついた。B級1組昇級おめでとうである。初代叡王だからな。タイトル獲得で七段になってから長かった。増田七段と高見七段がよく似ていると話題になったのも懐かしい。仲良く昇級したのも嬉しい。B級2組には伊藤匠七段や服部慎一郎六段が昇級したから、青嶋六段も8勝2敗では来期は昇級できないかもしれない。伊藤匠七段は今期は早々と2敗したが、全勝昇級も狙える人材だからな。服部六段も今期は全勝昇級を果たしたからな。3敗したこと無いから昇級候補の2番手と言っていいかもしれない。今期はB級2組からの陥落者が5名と多かった。来期は残留争いが激しくなるかな。元A級の九段勢が多いので、ここ一番では強いからな。深浦九段も今期昇級逃がしたからと言って来期も昇級争いできるかと言うとそうは言えないであろう。阿部隆九段は4勝6敗で陥落していった。B級2組が一番組み合わせの運不運が出るのではないだろうか。B級1組からの陥落組には屋敷九段の他に木村一基九段もいる。しかし改めて陥落組を見ると九段八段ばかりである。唯一横山泰明七段だけである。残りはC級2組であるが、今のところ陥落が決まっているのは青野照市九段だけである。70歳超えているので引退である。以前は負けてばかりの九段を見ていると、早く引退しないかなと思っていたが、自分よりも若い棋士がいなくなると寂しいものである。加藤一二三九段などは元名人なのだから、首になる前にやめてほしかったが、今となるとよい先例になっているのではないかなと思っている。森内俊之九段はフリークラス宣言したが、谷川浩司十七世名人はB級2組で昇級しそうになった。花村元司九段がA級復帰したりしていたので、年齢は関係ないと思いたいが、やはり40代後半からは現状維持は難しいのである。順位戦を60代70代で戦っているのは「偉いこと」なのである。青野九段も800勝は無理かなと思っていたが、見事800勝を達成した。1000勝は大変なことなのだから、800勝でも十分栄誉に値するな。昔内藤國雄九段が1000勝は出来ても1000敗は出来ないと言っていたが、現役最後の対局で1000敗を喫してしまった。1000敗は過去に3人しかいないのではないかな。4人目の候補は谷川十七世名人である。70代まで現役棋士を続けられれば達成するかもしれない。因みに青野九段は900敗も間近であるが、これはどうであろうか。