王将戦第3局は島根県大田市「さんべ荘」で開催された。先手菅井竜也八段の向かい飛車で始まった。互いに美濃囲いにして、1日目午後に入っても互角の進行だった。消費時間も同程度で、熱戦が期待された。しかし藤井聡太王将の7四歩から怪しくなった。気が付きにくい好手であった。1日目の解説は本田奎六段であった。宮田利男八段門下の三羽烏で期待の若手である。弟弟子に伊藤匠七段がいる。兄弟子と言っていいのか弟弟子と言っていいのか斎藤明日斗五段がいる。四段昇段では一番早いが、奨励会入会は本田六段が早い。タイトル挑戦も一番早い。関東所属の棋士で一番活躍しているのが宮田利男八段門下であろう。よく話題になっている。その本田六段も感心していた。確かにこれ以降は藤井王将が指しやすくなったようだ。50%台だったならば、菅井八段が振り飛車なので、評価値がそれぐらいでも、大体互角と考えてもいい。ところが7四同銀と取ってからは、次第に評価値が離れていった。菅井八段の封じ手であったが、恐らく挽回は無理かなと言う感じになってしまった。菅井八段の踏み込んだ悪手に、藤井王将が悪手で返すということは、ほとんどなくなってしまった。藤井王将は時々自分の読みに負けてしまうことがある。

 2日目の解説は深浦康市九段であった。聞き手は藤井王将と同学年の加藤結李愛女流初段であった。二人のおしゃべりで、局面が進まないのを忘れさせてくれた。「さんべ荘」での将棋合宿などの話は興味深かった。本局の立会人の畠山鎮八段も参加していて、関西の有望若手棋士が参加していた。深浦九段の弟子の佐々木大地七段も参加していた。当時奨励会三段だった出口若武六段も参加していた。6年前の写真だった。井上慶太九段門下が半数を占めていた。やる気のある奨励会員には菅井八段は優しいと言っていた深浦九段の言葉が印象的だった。奨励会員だった菅井八段を見出したのは久保利明九段だったという話しも出た。先日は「地域対抗戦」で中国・四国チームとして出場していた。藤本渚四段に発破かけていたが、井上門下の弟弟子であった。菅井八段は棋士には珍しい20代で弟子を取っていた。小中学校の奨励会員の面倒もよく見ているのであろう。菅井八段の悪口とも言えるような記事が多く出ていたので、擁護したくなった。

 しかしながら午前中で藤井王将が80%台になってしまった。最近は派手な手は出ないが次第に局面を大きくリードしているということが目立つ。対抗形のせいか、やや早くリードを奪ってしまうという感じである。6五歩には驚いた。深浦九段も解説で「ちょっと意味がわからないですね」と言っていた。評価値も60%台に落ちたが、次第に70%台に回復していった。しばらく指し継ぐと82%に戻ってしまった。不思議な話である。そこまで遠く読み進めて、この形がいいと実現してしまったのか。6筋に作った竜が攻防ともよく効いていて、危なげない形で最終盤を迎えた。前局は最後まで指していたが、今回は観念したのであろうか、詰みまではまだだいぶある形であったが、菅井八段は投了の意思表示をして投げた。このところ三間飛車を多用している菅井八段が向かい飛車を指したのだが、結果は藤井王将が上手く対応したということなんだろうか。四間飛車か先手中飛車などを想定していたのかな。相手の研究はしないという藤井王将だが、流石にタイトル戦は相手の研究はするだろうと思う。12月が比較的時間が取れたであろうから。1月以降は対局が詰まっている感じがする。ストレート勝ちをしても、祝賀会などのイベントがあるらしいので、そんなに暇にはならないようだが、やはり早く終わった方が良いかな。年度末にかけて非公式戦もあるからな。それにしても強いという印象が濃くなっていくな。