昨日「地域対抗戦」の北海道・東北対中国・四国戦を見た。関東A対関西A戦も見たのだが、途中寝落ちしてしまって、最終結果を知らなかった。昨日の北海道・東北対中国・四国戦は最後まで見ることが出来た。19時からの放送で、もつれると24時を超える可能性がある。フィッシャールールによる団体戦は3,4年前から始まっているが、100周年を記念して、日本全国を8つの地区に分けて、地域対抗戦を開催したのである。画期的な事である。東西の将棋会館がある関東と関西に棋士は集中しているので、関東と関西はA・B両チーム作って、出身棋士の少ない地区は、今回のように北海道・東北とか中国・四国と合併してチーム編成をしている。確かに東北や四国出身の棋士は少ないと思う。しかし棋士が誕生していない県も存在する。まあプロ棋士の存在を知らない人も多いので、地方によっては関心の薄い県があっても仕方がない。しかし羽生善治九段が日本将棋連盟の会長になってから、地域振興の協力になるようなことがあれば、そういうイベントを開催したいという考えを元に、ABEMAが協力したようである。そもそもフィッシャールールによる対局というのも、羽生善治九段の提案だったらしい。米長邦雄永世棋聖もそうだったが、将棋界以外にも知己が多い羽生九段らしい提案である。棋士編入試験の導入は米長会長時代だったと思う。奨励会を経ないでプロ棋士に成ったのは、戦前では花村元司九段だけである。棋士不足の戦時中に真剣師で無類の強さを発揮していた花村九段を木村義雄十四世名人がスカウトしたわけである。一応編入試験みたいなものはあったらしい。五段になって将棋連盟に入会した。戦後は飛びつき昇段などがあって二段、三段と飛びつきがあったのは確からしいが、それは奨励会員や既にプロ棋士になっている者が対象であった。純粋なアマチュアとも言えないが、無段の者がいきなり五段である。随分と才能豊かな人であったらしい。A級八段にも上り、弟子も育成している。有名な所では森下卓九段や深浦康市九段などである。

 戦後は奨励会を経ないでプロ棋士に成った人はいなかった。プロ棋士編入試験で合格した棋士は皆奨励会三段までになった人である。年齢制限で四段に成れなかった元三段の救済策のような感じになっていたプロ棋士編入試験で、初めて奨励会を経ないでプロ棋士に成ったのが岩手県出身の小山怜央四段である。初の岩手県出身のプロ棋士で話題の棋士なので、この地域対抗戦に選ばれたのかなと思っていた。プロ入り後の公式戦の結果はアマ時代と比べると劣るものであった。研究されたかなと思っていた。実力者ならば他にいるだろうと思っていた。ところがどっこいである。アマ時代に鍛えた早指しの受け将棋が、フィッシャールールによる対局にマッチしたのか、強かった。北海道・東北チームのメンバーは、屋敷伸之九段が監督を務め、広瀬章人九段、野月浩貴八段、戸辺誠七段、そして小山怜央四段であった。相手の中国・四国チームは山崎隆之八段を監督にして糸谷哲郎八段、菅井竜也八段、黒田尭之五段、藤本渚四段の4人である。A級八段を2名擁して、現在最高勝率を藤井竜王名人と争っている現役最年少棋士である藤本四段と、ABEMAトーナメントで実績を上げている黒田五段である。私は優勝候補の一角であると思っている。メンバーを見て、正直中国・四国チームの圧勝かなと思っていた。関東A対関西Aの結果が羽生九段の4連勝で、関東Aの勝利に終わっていることを、2,3日前に知って、勝ち残り方式は連勝があるのだなと感じた。つまり負けるまで対局するということだから、5連勝もあるということか。中部地区が優勝候補の筆頭に挙げられることが多いのは、藤井竜王名人と豊島将之九段の二枚看板のせいだなと改めて思った。

 中国・四国チームの1番手は藤本四段であった。対する北海道・東北チームは小山怜央四段であった。初めての出場で先頭バッターは苦しいなと思った。経験豊富な棋士も最初は緊張すると言っていた。やや緊張気味の小山四段の先手で始まった。藤本四段も緊張しているのか、踏み込みが足りない感じであった。同じ四段同士だから金星と言うのは小山四段に失礼かもしれないが、印象としては金星に近いものがあった。しかし内容は立派なものであった。アマ大会ではチェスクロックの叩き合いは普通の事である。数々のアマ大会の優勝経験がある小山四段がフィッシャールールによる対局には適性があるのは当然のことであった。屋敷監督はそのことを知っていたのかな。選抜理由を勝手に話題の棋士だからと思っていた事を恥じた。

 2局目は小山四段対菅井八段戦である。菅井八段が勝ったが、負けてなお強しの印象が残った。その後菅井八段が3連勝した。広瀬九段、戸辺七段と破ったので、ここでチェンジするかと思いきや、そのまま先発メンバーの小山四段の再登場となった。対局内容を見て、菅井八段には小山四段が対抗できると思ったのかな。屋敷監督の采配はズバリ当たり、小山四段が菅井八段にリベンジを果たした。しかし中国・四国チームの3番手は糸谷哲郎八段である。さすがに荷が重いかと思ったが、かなりの善戦であった。早指しの鬼を相手に自信になったであろう。これからの小山四段の活躍が期待される。

 7局目は糸谷八段対野月八段戦であった。広瀬九段が遠慮したのか不調を感じ取ったのかはわからないが、野月八段の登場になった。野月八段は小学生名人にもなったことがある早指し得意の棋士である。途中までは良かったが最後に見落としが出て一気に敗勢に陥った。糸谷八段の2連勝で幕を閉じた。

 振り返ってみると、中国・四国チームの5勝2敗で終わったわけだが、その2敗はいずれも小山四段に喫したものである。A級二人で5勝を挙げてチームの勝利となった。今までの所、監督で出場したのは羽生九段だけである。4連勝で終わっている。勝ち残り戦だと、出場機会がない選手が出てくる。中国・四国チームの黒田五段は出番がなくて残念そうにしていた。個人的な感想だが、団体戦は点取り戦が一番面白くない。監督のオーダーの妙はあるが、情報戦と言う感じもあって、選手層が厚いチームの勝利が高い。勝ち抜き戦は一人のスーパースターがいると優勝のチャンスが高まる。金鷲旗大会と言う高校生の柔道大会があるが、山下泰裕という九州学院高校の選手が東海大相模高校に転校して、東海大相模高校を優勝に導いた。金鷲旗の関門越えと話題になったものである。しかし山下選手の裏切り行為だと思う者も多かったように思う。記憶違いだったらごめんなさい。山下選手は生涯に何敗したのであろうか。無敵の王者だった。山下選手は大将で出てくるので、出場できない選手はいないが、剣道の大会の玉竜旗は、5人抜きはざらであるので、座り大将という者が生まれる。先鋒が調子に乗って、5人抜き、10人抜き、15人抜きとかが生まれる。さすがに20人抜きとかはあまり出ないが、実力差があまりなくても、好不調の波はあるものである。私は個人的には殲滅戦が一番面白いのではないかなと思っている。全員出場で、勝者同士が対戦していって、最後に勝ち残ったものがいるチームが勝利である。スーパースターが生まれるのが楽しい。全員出場なので、みんな1回は出場できる。まあそれぞれ団体戦の妙味はあるので、「地域対抗戦」は現行のままで工夫すればいいのかな。監督が遠慮するというパターンにならなければいいが。来週は藤井竜王名人の登場である。今のところ収録らしいが、生中継になると厳しいな。タイトル戦は遠慮ストレート防衛を目指してほしい。対局過多にならないようにしないと、全冠制覇維持は難しくなる。大山十五世名人は随分と自分のペースで対局していったらしい。タイトル戦でもタイトル保持者の優先が過ぎるような場面もあったらしい。対局条件は公平でないと面白くない。周囲の問題でもある。