「オールスター合唱バトル」を見た。歌番組なのか、バラエティー番組なのかわからないが、久しぶりに感動して涙を流してしまった。涙腺が脆くなったこともあるだろうが、ママ合唱団の「アイノカタチ」は良かった。高得点は他にもあったが、歌詞を見ながら聴くママたちの合唱は反則だと思った。20人が1組になって7組が優勝を競うわけだが、ママタレントと呼ばれる人を中心に構成して、歌手は半数近くいるが、演歌合唱団などは全員が歌手である。その他も全員歌手のグループはいたので、上手いのは他にもいた。7組が2曲づつ歌い、点数を競い合ったのだが、140人が本気で取り組んでいる感じが良かった。珍しくいい番組だと思った。と同時に「合唱コンクール」を思い出した。

 中学や高校で合唱コンクールの経験がある人は多いだろう。私はクラス担任として合唱コンクールには参加したものである。男女混合クラスでは女子は積極的だが男子は消極的で、なかなか上手くまとめるのが難しい。大体課題曲と自由曲の2曲を歌うが、自由曲を決めるのも大変な時がある。大体ピアノ伴奏をつけるのだが、これもなりてが出ないことが多い。クラス編成も音楽、美術、書道のクラスになっていることが多く、混合クラスもあるが、やはり音楽単独クラスが有利である。私は一度だけ女子クラスの担任になったことがある。この時の合唱コンクールは思い出深いものになった。

 先ずは伴奏者に困った。一人か二人でいいのに、三人が立候補したのである。後にも先にもこの時だけである。女子は時としてシビアな時がある。この時は三人に、クラスのみんなの前で弾いてもらって、みんなの投票で決めようということになった。私はあんまり賛成ではなく、三人に大丈夫かなと聞いた覚えがある。案の定外れた一人は泣いていた。高校卒業後、教育大学の小学校音楽専攻に合格した。後の二人も音楽専攻の大学に進学した。私の耳でも上手だと感じていた。自由曲は「ハレルヤコーラス」であった。私の耳には圧倒的な差で優勝したと思った。優勝曲披露の時、指揮者はテニス部の女子であったが、指揮者がいないのである。アカペラで全員で歌い出したのである。伴奏者も一緒に歌っていた。感動したな。もし私が結婚したら、結婚式に歌ってもらいたいと思ったものである。残念ながらそんな事は起きなかったが。この時の女子クラスは、毎月の誕生日会を開いていた。途中からだったような気がするが、その月の誕生日の生徒を全員でお祝いするのである。花屋の娘がいたので、安くしてもらって、花束も贈っていた。初めて花束を貰ったと言って、感激して泣いた子もいた。そう言えばこのクラスには、もう亡くなったが歌手になった子もいた。修学旅行のバスの中で歌っていたが、本当に上手だった。

 歌手で思い出したが、「アイノカタチ」を歌ったMISIAは、私の最後の赴任校であるK高の卒業生である。「アイノカタチ」は何度も聞いていたが、MISIAをうまいなあと感心するばかりで、あまり歌詞の内容を吟味することはなかった。今回ママ合唱団の歌詞付きの合唱を聞いた時は、母を亡くしたこともあり、ちょっといや大いに響いてしまった。認知症の進んだ母親は私が見舞いに行くとあまり喜ばない。私のことを私の父と思っているらしい。しかし介護士さんの話だと、息子さんが見舞いに来たと聞くと喜ぶらしい。私の顔を見た途端がっかりした顔をするらしい。父のように肥ってしまったのがいけなかったのかと思ってしまった。「大好きだよ」と直接言われたことはないが、おそらく「大好き」だったに違いないと思っている。歌唱の「大好きだよ」の所で涙があふれだした。マザコンと言われそうだが、開き直りたい。マザコンで何が悪い。後悔ばかりしているが、時間は後戻りできない。合唱の力はやはり大きいなあと感じた。

 歌手の死で思い出したが、「愛は勝つ」で有名なKANは2番目の赴任校であるJ高校の出身者である。小学校以来の友人に話したら、「別に関係ないだろう。俺たちの周りはもう死人ばかりだよ。いちいち感傷的になってられないよ」と。彼は昨年死にそうな思いをしたからな。「死」はもう至近距離に迫っているのかな。そう言えば高校の文芸部の友人が今年亡くなったな。同期は5人だがこれで2人目である。1人は入院して病院暮らしである。

 合唱について語りたいと思ったが、「死」が間近であるということでPCを閉じたい。