前回示した所属別トーナメントのデメリットとして対局不足を懸念したが、10代の伸び盛りの奨励会員にとっては、致命的とも取れるので、「改革案B」を提案する。所属別トーナメントを「改革案A」とする。

 改革案を考える時、師匠の下を離れて、所属を変える奨励会員が出ると嫌だなと思った。個別の事情はあるだろうが、所属の変更は大きいと思った。「東西決戦」があっていた時代を考えて、所属別に四段昇段者を出すというのは、割と公平かなとも思った。B案は対局不足の解消である所属別リーグ戦と言うのはどうであろうか。現在40人以上の三段がいるが、所属別にすると20人ちょっとと思う。総当たりにすると優勝者は文句無しの実力者と言える。現在有段者は月4局の対局である。5ヶ月で20局消化出来る。23人の22局まで大丈夫だろう。現在関東奨励会の三段は昇段できず人数が増えている。希望者を関西リーグに受け入れてもいい。関西は20人足らずだから。5年間で18対4は歪である。しかも四段昇段後も活躍しているのは圧倒的に関西所属が多い。新人王になった上野裕寿四段は井上門下。新人王を争った3番勝負の敗者も井上門下の藤本渚四段である。藤本四段は加古川青流戦で優勝を飾った。新人王戦は同門対決であった。叡王戦で挑戦者になった出口若武六段も井上門下である。5年前の四段昇段である。三段時代新人王戦準優勝であるが、負けた相手は藤井竜王名人である。もうすでに藤井竜王名人と二度の番勝負を演じているのである。服部慎一郎六段も4年前の四段昇段者であるが、その活躍は棋戦優勝2回が示している。中田章道七段門下である。ともかく宮田利男七段門下の3人を除けば、関東勢は顔色無しである。

 さて一番思い切った改革案はC案として、フリークラス棋士も希望すれば三段トーナメントに参加することを認めるのである。毎月トーナメントにして、4カ月に一度、優勝者によるリーグ戦を実施する。順位戦C級2組参加を認める。三段の者は四段昇段を認めるわけである。私は降級点制度は廃止した方が良いと思っている。相撲でも負けたら番付がどんどん落ちていく。フリークラス制度は元名人がA級陥落したら引退するとか言っていたのを防止するのに役立ったと思う。A級八段を務めた原田泰夫九段もC級で指すのは心苦しいと言ってB級2組を陥落したところで引退したのではなかったか。実力が低下した棋士の福祉のためと言うのは本末転倒だと思う。プロゴルファーは予選から参加する時は参加費を払って参加するという。しかも予選で敗退すると賞金は出ないそうである。私は将棋の普及があまり進まないのは将棋のレッスンプロが少ないせいだと考えている。奨励会員に厳しい制度を課するのであれば、現役棋士も厳しい道を歩むしかないのではないかな。B級2組以下も降級点制度を無くし、B級1組同様13名による総当たりリーグ戦にするか、連盟の経済状況も良くなったので、定員を16名に増やして総当たりにする。15戦して勝ち越せば陥落は無しとする。陥落を2名にするか4名にするかは、三段の昇段枠との兼ね合いである。以前は2名で、現在は4名である。それから棋戦参加には予選を実施して参加費を取る。予備予選にしてもいい。参加費を払えばアマチュアでも奨励会員でも参加できるようにする。いわゆるオープン参加型にするのである。

 現在竜王戦6組は参加人数が増えた。トーナメントだからいくら人数が増えても対応できるだろうが、女流棋士やアマチュアは1敗すると即敗退である。なんか不公平な感じがする。女流棋士でもアマチュアでも同じ立場でないと不公平である。昇級を認めてもらっても構わないのではないか。5組以上は招待枠にすれば良い。

 将棋界もトーナメントプロとレッスンプロの棲み分けをした方が良いと思う。海外への普及もレッスンプロが増加しないと難しいであろう。海外ではレッスンプロの強さは奇跡的であろう。マジックを見るかのように感じるかもしれない。海外だから出来るパフォーマンスもあるだろう。将棋の強い人はアマプロ問わず、囲碁、麻雀、チェス、オセロなどは強いし、大体強くなる。逆はそうでもない。恐らく囲碁やチェスは終盤は単純になる。将棋は終盤は複雑多岐になる。逆転が多いのもそのせいである。逆転負けの悔しさを乗り越えた者だけが強くなっていく。囲碁や麻雀で負けた悔しさとは雲泥の差であると思うのは私だけであろうか。

 海外普及をしてもらいたい理由は、将棋の特徴にある。取った駒を再利用できる。大陸や半島では、戦争になると殲滅戦が普通である。生かしておくといつ復讐されるかわからない。将棋は激しいゲームではあるが、平和的だと感じるのは身贔屓であろうか。島国で発達したゲームのせいであろうか。それとも民族性が反映したものなのか。