「映像の世紀プレミアム第2集」の「戦争 科学者たちの罪と勇気」を見た。2016年に放送されたもので、再放送を録画していたので、今回見てみることにした。以前第一次世界大戦についてなかなか上手にまとめていたので、二度ほど見たことがあるが、その時使っていた映像がかなり使われているようだった。「映像の世紀」は「20世紀」を指しているので、最近のことはあまり触れていなかったが、第一次世界大戦、第二次世界大戦、それに冷戦時代を扱っていて、なかなか見ごたえがあった。

 ダイナマイトを発明して巨万の富を蓄えたアルフレッド・ノーベルから始まった。自身の名誉回復の為にノーベル賞を制定したと伝えていた。「死の商人」と呼ばれていた事も紹介していた。数々の工事現場でも使われたが、最も威力を発揮したのは戦争だったと伝えていた、科学技術の発明品は「悪用」されるのが常である。ノーベル賞受賞者に与えられる高額の賞金は、ダイナマイトの発明によって得た資金が原資である。

 次に紹介されたのは発明王トーマス・エジソンであった。小学生の時に知った発明王のイメージは、「偉人エジソン」であった。ところがこの発明王は第一世界大戦では積極的に戦争に協力したわけである。発明王エジソンには自分の発明で莫大な利益を上げているイメージが大人になって知ったが、もっと負のイメージがあったわけである。当初中立を守っていたアメリカは参戦する前から武器や戦争必需品を、大量にヨーロッパに輸出していたのである。戦争によって得た利益や貸付金を回収確保する為に、戦後ドイツに莫大な賠償金を要求したそうである。ドイツに対する過酷な賠償金要求は、ヒットラーを誕生させ、第二次世界大戦の種火になってしまったとあったが、多くは歴史に学ばないのが常である。

 ライト兄弟の兵器としての飛行機の売込みには驚いた。戦争に兵器として使われることによって、飛行機は格段に進歩した。戦争当事国に売り込むことによって爆撃機、戦闘機として進歩続けたのである。ヘンリー・フォードの自動車は戦車に応用されて兵器として進歩した。リチャード・ガトリングは機関銃を発明した。兵士の命を守るためであったが、敵兵の命は無残であった。フリッツ・ハーバー博士の毒ガス製造については「第一次世界大戦について」の項で紹介したと思う。

 戦後というと第二次世界大戦後と思いがちであるが、第一次世界大戦後のアメリカの発展とドイツのヒットラーによる復興は、科学技術の競争でもあった。僅か20年余りで次の大戦が起こるとは。アルバート・アインシュタインはアメリカに原爆製造を急がせる提言をした。ロバート・オッペンハイマーは「原爆の父」と呼ばれたが水爆製造には反対したそうである。アインシュタインもオッペンハイマーも冷戦下では冷遇されたらしい。核兵器製造に反対したためのようである。ヴェルナー・フォン・ブラウンの経歴は恐ろしいものであった。ナチス時代の弾道ミサイル開発から、冷戦時代の大陸間弾道ミサイルの開発、更に宇宙開発と技術開発を進めた。キューバ危機におけるアメリカ人の対応は日本人には信じられないものであった。日本人は核戦争になれば人類は絶滅すると思っている。国土の広い強大国は自分達は生き延びれると思っている。

 核廃絶運動が世界に広がらないのは、核戦争になっても自分達は生き延びれると思っていることが妨げになっているようだ。敵だけを倒すことが出来ないのに。核戦争後の地球は、「ホモ・サピエンス」は絶滅人類になっていると思う。核戦争は人類滅亡に繋がるというのが共通認識にならない限り、愚かな一部の権力者が格のボタンを押すかもしれないのである。