8月は戦時中の悲惨な出来事を放送することが多い。再放送で「アウシュビッツ  死者たちの告白」というのを見た。いつものナチスの残虐非道な所業を暴くというようなものかなと思ってみたら、大分趣が違っていた。「ゾンダーコマンド」と言うのは強制収容所で、強制的に特殊任務を与えられたユダヤ人たちを指す言葉らしい。「ゾンダーコマンド」のドイツ語としての意味は、単に特殊部隊とか特別任務というような意味らしい。強制収容所では、移送されたユダヤ人を地下室に送り込む任務や、シャワー室と偽ってガス室に送り込む任務、死体を処理する任務などに就いているユダヤ人を指していたらしい。ゾンダーコマンドもだいたい1年以内に殺された者が多かったらしい。戦後まで生き延びた元ゾンダーコマンドの人は約20名とのことだ。戦後彼らはほとんど沈黙を守ったらしい。ところがアウシュビッツ強制収容所跡の地下から、箱に詰めて埋められていたメモやノートや日記などが見つかったらしい。当初インクなどが滲み判読できなかったが、近年の技術の向上で次第に判読できるようになったとのことです。それをもとにしての映像だったので、単純な悲惨さを強調する番組にはならなかったようだ。

 名前がわかった人だけではなく、皆ゾンダーコマンドだった人が残したものだった。強制収容所に到着すると、選別が行われる。ガス室送りの者と収容所内の労務に就く者とに分かれる訳である。労務の内容は知らされない。しかしほとんどが死体処理の任務である。拒めば殺されるだけである。どんな風に折り合いをつけようとも、無理な話で結局思考停止に陥るようだ。考えないということだ。人間が考えなくなることの罪深さが極限状態でも起きる。機械的に任務を遂行していくのだ。ナチスはよく考えていて、ドイツ人兵士の罪悪感を軽減する為に、一部しか見せない。監視はするが直接手を下さない。ゾンダーコマンドの仕事ぶりを監視はするが、逃亡する者を銃殺にするが、それは彼等の任務である。

 絶望的な状況の中、ソ連軍が反撃に移り、ドイツ軍が退却を始めた頃、ゾンダーコマンドの中に反乱が起こり始めたらしい。ポーランド亡命政府から強制収容所の悲惨な状況が英国政府や米国政府にも届いたらしいが、ユダヤ人を国内に引き受けてくれる国はなかったそうだ。引き受けることを渋ったと言った方が良いのかな。現在の戦勝国である。アウシュビッツ強制収容所を解放したのはソ連軍であったそうだ。

 「東京裁判」は一般の戦争犯罪のほか、平和に対する罪、人道に対する罪を裁いたそうだ。昔から日本では「喧嘩両成敗」と言って、片方だけを罰するのはおかしいという風潮があった。今でも人気の「赤穂浪士」の話は松の廊下の刃傷沙汰を、浅野家に罪あり、吉良家には御咎めなしというのが、片手落ちの判決だと江戸庶民が、引いては現代の一般市民も感じているからのことだと思う。平和に対する罪ならば英国チャーチル首相と米国F・ルーズベルト大統領もその一端を負わないといけない種類のものではないかなと思う。人道に対する罪ならば米国トルーマン大統領こそ一番に裁かれるべきではなかろうか。単に人種差別の意識がそうさせたというには、あまりにも罪深いと思うのだが。

 戦争に関しては日本の事ばかりだったが、ヨーロッパの事も知らないといけないなと感じた。