先程NHK杯アーカイブスで羽生五段対中原誠棋聖の対局を見た。解説は大山十五世名人で聞き手は永井英明氏だった。第38回の決勝戦である。平成元年3月の放送である。加藤、大山、谷川に続く、アーカイブス放送の4回目である。次回からは第70回NHK杯の1回戦5局目に戻るとのこと。羽生五段のNHK杯初優勝の回で四名人を破ったと、当時評判になった回である。今回解説を聞いていて、大山名人の解説の手が、気味が悪い位当たったと噂になった決勝戦であったことも思い出した。

 羽生五段が先手で相居飛車の出だしで、途中羽生五段が飛車を振って向かい飛車にした将棋である。大山名人の解説はこれから中原棋聖(当時)の指し手がどのようになっていくかを予想した。そして羽生五段のこれからの指し手を予想して、ほぼ終局まで100%当てるという離れ業を演じた。つまり中原棋聖の指し手もほぼ100%で当てたことになる。当時満66歳だったと思うが、40代の中原棋聖とは100局以上の対局をした仲なので、中原棋聖の手を当てるのは、それほど難しくなかったのかもしれない。しかしこの頃まだ2局しか指したことがない18歳の羽生五段の指し手をほぼ全部当てるとは、すでに対局を見ていたのかと思うほどである。聞き手の永井氏も「おっしゃる通りに進みますね」と何度も言っていた。永井氏もアマ五段か六段の指し手だったと思うので、少し引いてしまう感じだったのかな。大山十五世名人にすれば、若い人が踏み込んで指すとこんなものかなということだったのかな。途中私だったらこうするかもしれないという手は、なるほど負けにくい手だった。直線的に攻める手は、大山十五世名人にとっては、見えやすい手だったのかな。藤井七段の手は、何度も解説者の読みにない手が指される。見ていて解説者より対局者の方が強いと思わせるものがある。大山十五世名人はこれから3年後にA級在籍のまま、病気のために亡くなられる。

 一昨日はAbemaTVトーナメントを見たが、森内九段の強さが際立ったが、残念ながら谷川九段の老いを感じてしまった。木村王位が伸び伸び指して好調だったこともあるが、谷川九段の指し手に昔の勢いはなかった。58歳だが60代でA級にいたのは大山十五世名人だけではない。加藤一二三九段も、花村元司九段も60歳の時はA級ではなかったかな。塚田名誉十段はB級1組だったかなと思うが、現役のまま亡くなった方が多かったので、逆に印象に残らなかったのかな。升田実力制第四代名人は休場が多かったので、60歳A級だったと思うが、はたして対局はあったのかな。有吉九段も60歳A級ではなかったかな。記憶違いかもしれない。最年少記録は話題になっているが、最年長記録はあまり話題になることはなかったと思う。木村王位の最年長記録が話題になったので、逆に驚いたぐらいである。谷川九段の捲土重来を期待する。