その後、イケボ兄さんを庇う私の態度に

フィルの怒りのボルテージは頂点に達したようで、

バトルは日付を越えてヒートアップし

ついには取っ組み合いの大喧嘩に発展していた。


フィル!!!戻って!戻って来ーい!←犬扱い


一旦は戻るも、ガルガル状態で船の方を睨み付け

また行った!


大人のケンカというより、

猛禽類が団子になってケンカしているみたいに視える。

古代エジプト人がこんな好戦的な彼らの姿を見て

「外的と戦う天空の神」ホルス、

と呼んだのも無理はない。

普通はそんな光景を目の当たりにしたら動揺するのかもしれないが、時代というか、土地柄というか、そんなモノは見慣れていて 呆れる方が上回っていたけど

さすがに放ってはおけない。


フィル!戻って!!


(戻らない) 


フィール!!フィル太郎!!!  ←ハムスターに格下げ

10数えるうちに戻らなかったら婚約破棄しますからね!

10、9、8、7、6、5、4、3、2…

ギリギリで 物凄い勢いで戻ってきた。

が、怒りは収まっていない様だった。


私「手、ケガしてるじゃない!」


フ「この何倍もやってやりましたから」


フ「私にも譲れないことはあります」




深い霧が晴れるように視えてきたのは 昔の記憶…


地球年齢でいうなら五歳位かな?と思ってたけど

ひょっとしたら、もっと小さくて三歳位だったのかもしれない。

その頃から複数の専属護衛官候補、といっても 

保父さん 、家庭教師 、BGを兼務してるお兄さん的な存在で、それでも今でいうなら「 VIVANT 」級の教育を受けた若きエリート達だが、年齢的には まだ地球でいう所の高校生くらいだろうか?

ビジュアル的には 高校生のお兄さん達が揃って子育てしているみたいな構図だ。


その中でも常に私の側にいてくれていたのが、フィルとこのイケボ兄さんで、他の人達の存在が霞むほどに 

とにかくこの二人がいつも私の側で付きっきりでいてくれた。

私はこの人達に育てられたと言っても過言ではない程に いつも一緒だった。


フィルとイケボ兄さんは、対照的な性格で、

一言で言うなら「飴と鞭」


意外に思われるかもしれないが、

飴がイケボ兄さんで、鞭がフィルだった。


フィルはとにかく、私の両親の望むように、私の為にとシステマティックな感じで、時に怖い人でもあり、

「フィル嫌い!」とイケボ兄さんにすがり付いてる姿も思い出した。

イケボ兄さんはというと、めちゃくちゃ甘やかすタイプで、それでは私の為にならないというフィルとは相反する対立的な見解を持っていたようで、いわばお互い「目の上のたんこぶ」状態だったようなのだ。


フィルからすれば、私の為にではなく、先も考えず甘やかし慕わらせ したたかに立ち回るような様を苦々しく思っていたのだろう。そのような感情がエネルギーになってフィルから流れてくる。


小さい頃の私は食も細く、水分も全く摂らないので、

両親を悩ませていたようだった。

この水分も全く摂らないのは今生でウォークインした後も同じで、そういえば 驚いたと 後に継母から聞いたことがあった。どこでどう生きようが本質は変わらないのだろうか。


水分を摂ったのか?しっかり摂るように。

食事はちゃんとしたか と毎日確認していたのは

その時の感覚が今でも抜けていなかったんだな~と

その因果関係を思い出した時に申し訳ない気持ちで一杯になった。



私の記憶とフィルの記憶のホログラムが入り交じる…


そんな私が全く食事を受け付けない時が続いていた事があった。

なんとか食べさせよう、飲ませようと必死なフィルに

無理強いはするなというイケボ兄さん。


ついにはスプーンで口の中に押し込まれ、

一緒に飲み込んでしまいなさいとストローみたいなモノで容器を押すと口の中に入る飲み物まで

口の中に無理矢理入れられたことがあった。

なんとか飲み込もうと頑張ったけど、

のどが締まってしまったように体が受け付けない、

すぐに嘔吐してしまった。

イケボ兄さんが 咄嗟にその大きな手で私の吐物を受けテーブルを汚さないようにしてくれたようなのだけど

子供心にも、咄嗟のこととはいえ、そのまま嘔吐しては申し訳ない気持ちになり、ぐっと堪えてしまったら

そのまま ひきつけて吐物で窒息してしまい意識を失ってしまった。


この先はフィルだけの記憶のようだ。

慌てて医者を呼べと叫ぶイケボ兄さん、

フィルは私が詰まらせてしまった物を出させようと必死になっていたが 意識もなくぐったりしてしまっていたのでマウス トゥ マウスで吸い出したり蘇生に尽力してくれていた。そんなことまでしてくれていたんだ…。


その後 私は暫く寝込んでいた記憶がある。

元々 どこか具合が悪かったのかもしれないし、

誤嚥性肺炎のようなものを併発したのかもしれない。


何とか 蘇生出来たものの、当然 原因究明を問われる事になったようで、その時フィルは

「自分が無理に食べさせた事での嘔吐による窒息」と伝えたようなのだ。

その事で フィルは蟄居処分となっていたようで

暫く会うことが無かった。

 

フィルは?と聞いても誰も納得のいく答えはくれなかった。

フィルに会いたい… と、無理矢理フィルの元へ連れて行ってもらった時に、申し訳なさそうに気落ちしたフィルに会い 胸が痛んだ。


父に頼んでフィルに再び側にいてもらえるようになったものの、たぶん、それがトラウマにでもなったのか、

私が少し咳をしたり、ムセただけで、

「大丈夫ですか?!」と異常なまでの反応を示す。

これは、今でも… なのだ。


そんなに心配することではないのに、なんだろ?と、

不思議だったのですが、そんなことがあったのを思い出せば 納得の反応だった。


私は元より摂食嚥下障害があるようで、よく誤嚥するしムセるし、窒息して命の危険を感じたこともある。

職場でも「トロミつけましょうか?」なんてジョークも出る程に よくムセていた。

「本体」が元々 そうなんだから、仕方ないか。


後にフィルがカミングアウトしてくれた事でわかったのは、そんな事もあり、私には可哀想なことをしてしまった。フィルに厳しくされて「フィル嫌い!」って

イケボ兄さんにすがり付いたり、泣いたり、何かとイケボ兄さんに甘えていた私が、全ての記憶を戻したら…


自分を嫌っていた記憶もセットで思い出し、

私から拒絶されると思っていたらしいのだ。


私の記憶が戻る度に少しずつ寂しそうにしていたのは

それもあったようだった。



そして次に視えたのは、

私が二人の手を引いてある場所へ行っている所だった。


専属護衛官を決める為に、お前は誰が良いのか、

ここへ連れて来なさい…と言われたようだった。

細かなシチュエーションやセリフは記憶に無いし、

大人達でも審査はされていたのだろうが、

私の気持ちも尊重してくれていたようでした。


何を思ったのか、私はその時に

右手にイケボ兄さん、左手にフィルを繋いで

指定された場所へ連れて行った。


私の前には父がいて、右側にイケボ兄さん、

左側にフィルがいた。

父は明らかに困惑していた。

その理由は、私が「二人」も連れて来てしまったからだった。

「二人…連れて来たのか?… 」と父に言われてはじめて自分の間違った判断に気付いた。


確か 父がその時「どちらかに…  」と言いかけていた直後に、イケボ兄さんが何かを父に差し出し、


「お好きな方ををお受け取りください…」と言ったのです。


そして、躊躇いながらも一つを受け取った父に、

イケボ兄さんはこう言っていました。

「… 利き手はどちらですか?」と。


父はそれを利き手で取っていた。


そしてイケボ兄さんはこう話を続けた。


「人は必要な物を取る時は咄嗟に利き手で取るものです。ミリアス様の利き手は右手です。その右手で捕まれたのは私です… 」と。


父は私を見て 「そうか?… 」と聞いた。


私は 自分よりずっと背の高いフィルの顔を見上げた。

何も言い返せない、それまで見たことのない

悔しそうな表情で耐えるフィルを見て

気が付いたらフィルにしがみついてしまっていた。


「フィリラントで良いのだな!」と父が言うと


「お待ちください!… 」と言い出したイケボ兄さんが 発言を制止されていた。


こうして、私の専属護衛官がフィルに決定したのだった。


「黙れ!!喋るな!猿ぐつわでもしていろ!」の意味がやっとわかった。


原因はコレだ。


相当、悔しかったのだろう。


今度は 言葉巧みに 私に何を言い出すのか不安だったのかもしれない。


嫌な予感しかしない!… とも言ってたな。


しかも、私、

「… 今の素敵な声の人は誰?」なんて、

「素敵」とか言っちゃってたし 泣き笑い


これはフィル、キレてもおかしくないわ💧


他にも私の知らない何かが沢山あったのかもしれない。

それでも、彼の悪口等は一切言わない 嫌いだとも言わない、そんなフィルを私は尊敬している。


それにしても記憶が無いって怖いです。

そして 思い出した時の衝撃といったら、

それまでのやらかしてしまった感が尋常ではない悲しい


そして、気になるイケボ兄さんなのですが…

それはまた次回に。



※ ブログを見た方から、ミリアスさんは 

アルクトゥルスの“お姫様”なのですか?と時々聞かれますが、私は “ 姫 ” では ございません。

私の立場まで お伝えする必要もないと思いますので

ご質問にもお答えしかねます。ゴメンナサイ キスマーク 飛び出すハート