今回は、お付き合いにおいて誰をどのように優先あるいは尊重するかということについて、考えてみたいと思います。
恋人を悲しませないためにその恋人を何よりも優先させるという事はありますか?
例えば、恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったらそれを取りやめるというような事です。
お話を伺っていると、ポリアモリーの特徴として自己愛が他人への愛情より勝るために嫉妬や独占欲を感じにくく、自己の複数人への愛情を優先させる傾向にあるのではないかという疑問が湧きました。
ですので、ポリアモリーの愛情において、他者を自己より尊重するということがあり得るのかを教えていただきたいです。
恋人を悲しませないためにその恋人を何よりも優先させるという事は、私にはあり得ます。
ただし、例にあるように「恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったらそれを取りやめる」かどうか、については「どうするかは実際そういうことが起こってみないと分からない」と言うしかないと思います。
「父親と母親が溺れ死にそうになっていて、浮き輪がひとつしかないなら、どちらに投げますか?」とかいう質問と似たような感じです。
まぁ実際のところ、恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったら、もう1人の恋人と一緒に、落ち込んでいる恋人を慰めに行きたいと思います。
皆でチーム的にお付き合いしている以上、カップル内の誰かが落ち込んでいたり困っていたりする時には、他の皆でその人を支えられるような関係でいたいのです。
「ポリアモリーの特徴として自己愛が他人への愛情より勝るために嫉妬や独占欲を感じにくい」ということについてですが、そもそも、“自己愛”とは何でしょうか。
これは文字通り自分を愛する心のことで、人間が生きていくうえで必要なものです。
「自己愛性パーソナリティ障害」などという病気もあって、自己愛は自分自身への独りよがりな陶酔としてネガティブに捉えられがちですが、自己愛それ自体が悪いもの、というわけではありません。
人は誰しも自分の中に、良い面と悪い面とをもっています。
そのどちらをも含めて自分で自分を受容し、自分で自分の味方になることが健全な自己愛のあり方です。
自己愛が他人への愛情より勝るのは自然なこと。
安定した自己愛をもっていて、自分で自分の機嫌をとる力があれば、確かに嫉妬をしにくくなったり、独占欲を感じにくくなったりするということはあるでしょう。
最後の「他者を自己より尊重する」というのは、最初の「他者を自己より優先する」と同じ意味で書いているのでしょうか。
私は、尊重と優先とはかなり意味の違う言葉だと思っています。
誰であっても、他者と自己とを優先順位をつけずに等しく尊重することができるし、双方を尊重したうえで恋人を優先することも、自分を優先することもできるものだと考えています。
全体を通して質問者が言いたいのは、「自分のやりたいことを我慢してでも、他者(恋人)を優先することがあるか?ポリアモリーは自分勝手でいつでも自分の都合を優先するのではないか?」ということだと思います。
これに関しては、もちろんポリアモリーであってもモノガミーであっても、「自分を優先することも、恋人を優先することもある」といえるのではないでしょうか。
私自身もそうです。
私だって、恋人のために自分のしたいことを我慢することがないとは言えません。
ただし、それをずっと続けていると、自分の自尊心や主体性が損なわれていってしまうと思います。
程度が過ぎればモラルハラスメントになってしまう可能性もあります。
私はある人とお付き合いしていた頃、最後にはモラハラによって主体性や自己肯定感が失われ、自分のしたいことや言いたいことを大切にできなくなり、いつも恋人を優先して我慢してしまう時期がありました。
究極の状況においては、自分を優先することによって自分の尊重を取り戻すべき場合もある、と思います。
滅私奉公とか自己犠牲という言葉に表されるように、自分を捧げて他者に尽くすことを尊いと見做す文化が日本にはあります。
それはそれで美しいものだと思いますが、その規範意識に囚われすぎると、自分を大切にすることができなくなり、自己愛が不健全な状態に陥ってしまいます。
また、その価値観を他人に押し付けることで、他人の自己愛を損なってしまう場合もあるでしょう。
まずは自分を尊重するからこそ、他人をも尊重することができる。
そのうえで、自分を優先してもいいし、他人を優先してもいい。
基本的には自分を尊重するし自分を優先してもいい、と心に決めておいてこそ、普段は自分の気持ちに余裕をもって、時には恋人を優先したりできるのだと思います。
自己と他者とは、椅子取りゲームのように「どちらか一方しか尊重できない」というようなものではないし、誰しも常に恋人を自分より優先しなければならないものでもないことを、忘れないでいたいものです。