2020年にアメリカで、3人以上で利用できるパートナーシップ制度が制定されました。

 

ポリアモリーのカップルでも「パートナーシップ制度」を利用することができ、登録するとパートナー関係にある全員が、病院での面会や、市の健康保険などにも登録できる。また民間企業においては、パートナーに対する福利厚生も受けることができる(実施するかは各企業次第)。

米の都市、ポリアモリー(複数恋愛)を公的に認める


このパートナーシップ制度は、伝統的な婚姻制度のひとつである一夫多妻制などの「ポリガミー」とどう違うのでしょうか?

今回は、ポリアモリーとポリガミーについて、相違点をお伝えしていきたいと思います。
 

ポリガミーとは、3人以上で結婚する制度を指します。

対義語はモノガミー(一夫一婦制)です。

ポリガミーにはさらにいくつかの種類があります。

最も多いのが、カナダの一部や、中東、アフリカなどで見られる一夫多妻制(ポリジニー)。

チベットやインドの一部には、一妻多夫制(ポリアンドリー)が伝わっています。

シリア、イラク、パキスタン、モロッコ、ヨルダン、エジプト、アルジェリアなどの国でも、一夫多妻制が認められています。

またアメリカでは、モルモン教の一派であるモルモン教原理主義派(FDLS)が一夫多妻の教義を採用しています。

フランスやオランダ、ブラジル、コロンビアでは3人でカップルになることが認められていて、これは“シビルユニオン(市民同盟)”と呼ばれます。

シビルユニオン(またはシビルパートナーシップ)とは、結婚に似た「法的に承認されたパートナーシップ関係」のこと。

アメリカでは、ドメスティックパートナーという語がシビルユニオンと同義のものとして用いられていて、2020年に制定されたパートナーシップ制度は、このドメスティックパートナーに当たります。

婚姻制度の一種であるポリガミーと違い、ポリアモリーは法的な“制度”ではありません。

一部のポリアモリーの人々は、ポリガミーとポリアモリーの違いを以下のように主張しています。
 

ポリガミーが宗教的や地域的な伝統によって規範化された結婚制度なら、ポリアモリーは文化的な構成物というのだ。集団婚形態を帯びるかパートナーの不倫を認めるなど既存規範から脱して自分たちだけの結婚行動を決める「開放結婚」という点が核心だ。

 (【噴水台】ポリアモリー


なかでも旧来の一夫多妻制は、”女性差別的“である点においてポリアモリーとはまったく異なる、と言われることもあります。

たとえば、日本におけるポリガミーの一種だった側室制度においては、正室や本妻と呼ばれる“正式な配偶者”がたった1人いて、その他の女性たちはそれよりも低い地位におかれました。

正室の立場が「家族」であるのに対し、側室の立場は厳密にいえば「使用人」のようなものです。

さらに、側室入りするのは必ずしも女性本人の自由意志や男性との合意によってではなく、「将軍から一方的に指名されて」「親から政略的に献上されて」といったケースもあったといいます。

また、イスラム教の聖典「コーラン」と「ハディース」では、女性は男性より地位が低く、保護されるべき存在であるとされています。

そしてイスラム圏では戦争が繰り返されたため、夫が戦死して妻が故郷に残されたまま寡婦となることがよくありました。

このため、このような経済的に弱い女性たちを助け、安定して子孫を残せるよう、男性優位的な一夫多妻制が導入されたといわれています。
 

一夫多妻制という明らかに性差別的な制度は、なぜ成り立つのでしょうか?

 

理屈は比較的単純です。

  1. 男性間に大きな階層間格差がある
  2. 女性が自立して生きていくことが難しい

この2つの条件を満たす社会では(法がそれを容認するかどうかとは別に)、必ず一夫多妻制が成立してしまいます。

豊かな男性の第二夫人になるほうが、貧しい男性の唯一の妻となるよりもはるかによい生活ができる、という条件が満たされてしまうと、女性の側にとって第二夫人を選ぶことが「合理的」になるのです。

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一夫一妻制においては、女性一人が生涯に出産できる子供の数は限られます。

また、妻の健康状態によっては、子供ができないこともあり、子孫が安定的に確保できるとは限りません。

ここから、側室制度やイスラム圏の一夫多妻制とは、「子孫を絶やさない」という目的のための手段だったことが分かります。

このような例における一夫多妻制は、1人の男性が複数の女性を子作りの手段として占有すること、男性と女性たちの間には大きな権力(特に経済力)の格差があり対等な関係とは言い難いことから、男女平等のうえで成り立っている制度とは言えないものです。

ポリアモリーにおいて大切なことは、関係者全員の合意があることだと思っています。

関係者全員が合意するためには、関係者全員が対等であることが重要。

経済格差がある状態で囲われたり、親の都合で一方的に結婚させられたりする関係性は、対等なものとはいえません。

ポリアモリーにおいては男女平等が不可欠である点が、旧来のポリガミーとは異なるといえるでしょう。

私個人はポリアモリーが法的な制度になることを望むわけではありませんが(むしろ、モノガミーも含めて婚姻制度自体が発展的に解消されることを望んでいます)、従来のような男女の権力の格差に基づいた、あるいは子孫を残すためだけに作られたポリガミーではなく、全員が対等なパートナーシップとしてのポリアモリーが誰にとっても選択できるようになることが大切だと思っています。