以前、恋愛リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた木村花さんが、ネットで誹謗中傷を受けて自殺するという事件が起こりました。

私自身、長年ポリアモリー当事者として発信してきて、さまざまな誹謗中傷を受けた経験があります。

今回は、そういった誹謗中傷について思うところを書いていきたいと思います。

 

まず、誹謗中傷を受けたら、決して独りで抱え込まず、信頼できる人に情報共有しておくことが大事だと思っています。

ひとまずスクリーンショットを撮って友人に送って、「こういうこと言われて悲しい」と言うだけでもいい(誹謗中傷を受けると反射的にブロックやミュートしてしまいたくなる気持ちも分かるのですが、たとえブロックするにしてもその前にスクショを撮っておくと、後で役立つことがあります)。

私は友人が誹謗中傷されたら、どう対処するべきとかの前に、「ひどいね」「つらかったね」という共感や、「私はあなたのこんなところが好きだよ」といった言葉をかけるようにしています。

場合によっては「本人と同じくらいの怒りや悲しみを示す、本人が怒れないなら本人の分まで怒ってみせる」こともあります。

私の友人たちは優しくて自分より相手の立場を優先して考える人が多いため、自分自身の怒りや悲しみの”感情”を吐露する前に「でも私にも悪い点があったから…」「相手も苦労しているのだから…」といった”理性”を働かせてしまいがち。

それも大切なことだけれど、まずはしっかり自分の感情を感じて吐き出して!怒るなら怒って、泣くなら泣いて、理性で考えるのはその後にしよう!と言っています。

これはポリアモリーな関係性のなかで嫉妬や怒りに駆られた時にも気を付けているのですが、「最初に感情、次に理性」の順で向き合っていくことが大事だと思っています。

まず理屈は抜きにして、いま自分は悲しい、いま自分は怒ってる、という感情の揺れを感じきって言葉にすること。

その感情がどんなに理不尽なものでも自分勝手なものでも関係ありません。

吐き出しきって、それに共感を得て感情の揺れが治まって初めて、「そうはいっても、私にも問題があった」「相手にもこんな事情があったし」と理性による思考を始めることができるのだと思っています。

感情と理性とをごっちゃに働かせないこと、感情を感じることをなおざりにしたまま無理やり理性で考え始めないこと。

対話やコミュニケーションを学ぶなかで、相手の立場に立って自分を客観的に見つめることを心掛けていると、ときに「反射的に理性で思考する癖」がついてしまって、怒りや悲しみを吐露するのを疎かにしてしまうことがあります。

これだと次第に自分の感情に気づきにくくなり、無意識下で心が疲弊していってしまう…と私は考えています。
 

また、誹謗中傷そのものだけでなく、周囲の「気にしちゃダメだよ」という言葉にも人は殺されます。

誹謗中傷に対して「無視すればいい」「怒る人はSNSに向いてない」という意見もよく聞かれます。

たとえ善意から励まそうとする言葉であっても、「気にしちゃダメ」は「気にしたくなくても、気になってしまう」当事者のことを否定してしまうものだし、それが当事者を追い詰めるのです。

性暴力被害者が受ける二次被害のなかにも、これと同じタイプの”当事者を追い詰める善意”がままあります。

私自身も、誹謗中傷を受けたことをネットに書いたところ、自分自身もストーカー被害者だという知人から「SNSを閉鎖した方がいい」「自分自身を発信したい気持ちは分かるけど、慎重に行動して」と言われたことがあります。

問題を起こしているのは加害者の側で、まずはそちらの行動が改められるべきなのに、なぜ被害者の側が自らの行動を制限しなければならないのでしょうか。

被害者が攻撃されないように自粛するべきだというのは、被害者を萎縮させる意見だと思います(被害者が自粛するべきではない、といっているのではありません。しかしこれは、他人から押し付けられることではないと思います)。

誹謗中傷の言葉に対して「嫌なら見るな」というのはSNSを使う上で有意義な価値観ではありますが、とはいえ誹謗中傷をブロックしたりミュートしたりして無視している間に、被害が拡大することもあります。

私の場合は、私の友人に粘着していたストーカーが私まで攻撃してくるようになった、という経験があります。

これ以上、自分の大切な人たちに攻撃が広がらないようにするためにも、誹謗中傷に対しては声を上げ、対処する必要性があると感じました。

特に、嘘の情報をバラ撒かれたり、ネガティブキャンペーンを展開されたりする場合には、きちんと対応しないと周囲に誤解を生んでしまうことがあると思います。

私としては、このような誹謗中傷や攻撃に対して声を上げていくこと、泣き寝入りせずに戦うことを心掛けたいし、そのような人たちを応援していきたい。

そしてそれ以上に、誹謗中傷を受けた人に対する広い意味での二次加害的な行為…特に、被害者に落ち度があったからだと責めたり、被害者側に行動の自粛を求める風潮をなくすために、働きかけていくことが重要だと思います。

あわせて、ポリアモリーに興味がある人の交流会「ポリーラウンジ」をこのような攻撃や否定のない、安心安全な場として運営していくこともより一層大切にしたいと考えています。