以前、ポリアモリーとしての私を取材してくださった伊藤詩織さんが、レイプ被害を訴えた裁判に勝訴しました。

私を含め多くの人がこの判決を喜ぶ一方、インターネット上では彼女に対する誹謗中傷の嵐が吹き荒れていました。

ポリアモリーもそのとばっちりを食らって延焼するような形で、「全員刑務所に入れろ」「性病にかかって死ね」などと揶揄され、私自身もバッシングを受けました。

詩織さんを叩く人たちが、「伊藤詩織はポリアモリーだ!レイプ被害者がポリアモリーを推奨するはずがない!レイプ被害は嘘だ!」とデマを流し、その流れでポリアモリーまでも叩いているのです。
 

そもそも詩織さんはインタビュアーとしてポリアモリーを取材しているだけで、ポリアモリーを支持しているわけでもないし、自分自身がポリアモリーだと表明しているわけでもありません。

「伊藤詩織がポリアモリーやフリーセックスを推奨」という意見は、何重にも的外れなものだといえるでしょう。

それに、たとえ詩織さんが実際にポリアモリー当事者だったとしても、ポリアモリーを肯定していたとしても、だからレイプ被害を受けても仕方ないとか、被害は嘘だ、ということにはなりません。

私自身、レイプ被害者でありポリアモリーでもありますが、合意なき暴力であるレイプと、合意あるパートナーシップであるポリアモリーはまったく違うもの。

「レイプ被害者がポリアモリーを推奨するはずがない」というのはポリアモリーに対する無理解も甚だしいし、何より「レイプ被害者ならば、XXXのはずだ」というイメージの押し付けなのです。

こういったデマやバッシングは詩織さんへの二次加害だし、ポリアモリー当事者にとっても恐ろしいものです。

この二次加害によって、「ポリアモリーがレイプを受けてそれを告発しても、誰も耳を貸さない」「だからポリアモリーをレイプしてもいい」という価値観が作られかねません。

そうなれば他の性暴力の被害者が声を上げられなくなるし、ポリアモリー当事者も自分のことを発信できなくなってしまいます。

ポリアモリーじゃない詩織さんが、ポリアモリーの私を取材しただけでこんなに叩かれるなら、ましてやポリアモリー当事者である私がレイプされたとしたら、もっと酷い二次加害を受けるのでは…と、私は背筋が寒くなりました。

「きのコはポリアモリーだから、レイプしてもいいんだ」「ポリアモリーがハラスメントを受けて告発したところで、誰も耳を貸さない」と言われてしまうかもしれないのです。

レペゼン地球によるセクハラ偽装事件の時に、「ジャスミンゆまをレイプするなら今だ。彼女が告発しても、誰も耳を貸さない」という意見があったのと同じ状況です。

私は詩織さんへの義憤だけでなく、「このままではポリアモリーが性暴力を受けやすい世界になってしまう」という、自分の身に降りかかる恐怖を感じました。
 

そんな中で、私は『はすみとしこさんへの賠償命令が確定。伊藤詩織さんの中傷イラストを投稿 最高裁』という報道に、とても勇気づけられました。

詩織さんは自分だけでなく、他の被害者のことまでも考えて行動しようとした。

詩織さんのため、他の性暴力被害者やポリアモリー当事者のため、何より自分自身のために、私も行動を起こしていきたい、と思います。

正直、パートナーからモラルハラスメントを受けるまでは、私は#MeToo運動に対して少し距離を感じていました。そんなつらい思いをしてまで、ハラスメントを告発しなくても…という気持ちがどこかにあったのです。

けれど、モラハラを通して、私のハラスメントに対する見方は大きく変わりました。

これは私個人だけに起こった問題ではないし、モラハラという暴力だけの問題でもない。

多くの人が、さまざまなハラスメントや二次加害に苦しんでいるし、どんなハラスメントや二次加害も根本的には同じ構造をもっている。

だから、「モラハラ撲滅のためには行動するけれどセクハラに関しては何もしない」「ハラスメントに対しては声を上げるけれど二次加害は放置」という態度では、どんなハラスメントや二次加害もなくせない、と考えるようになったのです。

どんなハラスメントに対しても、#MeTooのような運動は必要なんだ。

私はモラハラの話をする時に#MeTooのタグを使うわけではないけれど、何のためにモラハラの話をするかという部分は、#MeToo運動の本質と何も変わらない、と思いました。
 

モラハラについて記事を書いたきっかけは、アルテイシアさんの記事「モラハラ男 #女子を困らせる人」を読んだことでした。

私が他人のモラハラ発信から、自身のモラハラ体験を語る勇気をもらったように、私のモラハラ体験記も、誰かがモラハラを語るための後押しになるかもしれない。

モラハラであれセクハラであれ、二次加害であれ、他の人のためにもまず自分が声を上げる、ということが重要なのだと感じています。

ハラスメントを訴えることが、怖くないと言えば嘘になります。

それでも私がこうやってモラハラをテーマに記事を書いたり、イベントを開催して皆と学んだりしているのは、私個人が元パートナー個人を叩きたいというわけではなく、この世界からモラハラやセクハラなど、あらゆるハラスメントやセカンドレイプをなくしたいからです。

次の被害者を出さないために、セクハラやモラハラなどのハラスメントや二次加害が起こらない世界を作るために、私も声をあげていきたいと思います。