今回は、ポリアモリーのイベントで、自分の中の「愛を感じる愛情表現」と「大切なもの」について考えたことをお伝えしようと思います。
 

以前、シブヤ大学の授業「ポリアモリーから考えよう ~私にとって心地よいパートナーシップ~」に講師として招かれました。
(シブヤ大学とは、シブヤの街のあらゆる場所を「まなび」の場として誰もが“教える”先生にも“教わる”学生にもなれる、新しい「共育」システムです。)

その授業の中で、コーディネーターさんが考えてくれたグループワークが印象的でした。

まず、ゲーリー チャップマン『愛を伝える5つの方法』を基に、「愛を感じる愛情表現」について考えます。

  • 肯定的な言葉
  • クオリティ・タイム
  • 贈り物
  • サービス行為
  • 身体的なタッチ

上記の5つから、自分にとっての「愛を感じる愛情表現」に優先順位をつけます。

愛情表現の方法は、人によって違うもの。

だから、自分がしてほしい愛情表現を相手に向けたところで、それが相手の求める愛情表現とは違う場合、うまく気持ちが伝わらないことがあります。

自分と相手との「愛の一次言語(母語)」がそれぞれどのようなものか、要はお互いに「どのような表現から愛を感じるのか」を伝え合う中で、その違いを理解できるのです。

たとえば、私が「愛を感じる愛情表現」は、1番目が「肯定的な言葉」で、2番目が「身体的なタッチ」かな。

「あなたのこういうところが好き」と言葉で伝えてもらったり、頭を撫でてもらったりすることで愛を感じます。

(一方で、恋人たちとの日々の接し方を思い返してみると、パートナーの1人の「愛を感じる愛情表現」は「身体的なタッチ」、もう1人のパートナーの場合は「サービス行為」なんじゃないかな……?と思います。)

その表現の相違を知ることで、大切な人たちに愛を表現したい時、愛を表現してほしい時のコミュニケーションのすれ違いを減らせるのです。
 

愛情表現に順位をつけたら、その1番目と2番目を周りの人に聞いてもらい、NVCで使われるキーワードの中からぴったりくる言葉を選んでもらいます。

選ぶ観点は、「この人は、これが大切だから、この愛情表現をしてほしいのかな?」という感じ。

ちなみにNVC(Nonviolent Communication)とは、非暴力コミュニケーションとも呼ばれています。

コミュニケーションにおいて相手とのつながりをもち続けながら、お互いのニーズが満たされることを目指して話し合いを続けていくという、共感をもって臨むコミュニケーションの方法です。

頭(思考)で判断・批判・分析・取引などするかわりに、自分自身と相手の心の声に耳を傾けて、今の感情・ニーズを明確にしていくことで、お互いの誤解や偏見からではなく、心からつながりながら共感を伴ってコミュニケーションをすることを主眼にします。

具体的には、「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」の4要素に注目しながら、コミュニケーションで起こっている問題・ズレを整理していくという方法をとります。

このNVCのキーワードに照らすと、私の場合は「コミュニケーション」や「うそじゃないこと」が大切だから、「肯定的な言葉」で愛を伝えてほしいのだと思います。

今回のイベントにおいては、ポリアモリーそのものを知ってもらうことだけでなく、ポリアモリーを材料としながら「自分自身にとっての心地良いパートナーシップのかたち」や「心地良いコミュニケーションのあり方」を1人ひとりに考えてもらうことに主眼をおきました。

私はポリアモリーにおいてNVCのようなコミュニケーション技法はとても有意義だと考えているので(もちろん、ポリアモリー以外にもあらゆる関係性において有意義ですが)、今回NVCを使ったワークができたことには大きな意味があったと思っています。

ちなみに先日、パートナーの1人が私との共通の友人に対して怒っていたことがありました。

私は「今こそNVCを使うタイミングだ!!」と思って「あなたは、~だと感じて怒っているの?」「それはつまり、~してほしかったということ?」と彼のニーズを知ろうとしたものの、彼の怒りは治まるどころか、「尋問されているみたいだ」とますますイライラさせてしまいました。

実はこれって、NVCをやろうとする時に「共感」のプロセスをきちんと踏まずに焦って先へ進んでしまうと、よく起こる失敗のようです。

そもそも、私自身が彼の愚痴にイライラしている状態でNVCをやろうとしても、うまくいかないんだなぁ……と実感しました。

これだけいつもコミュニケーションについて考えたり語ったりしている私にとっても、やっぱりコミュニケーションって難しいものだし、そこには「正解」も「完璧」もないのだと身に沁みて思います。

家族でも、恋人でも、どんなに愛し合っていても、「相手と自分とのコミュニケーションのあり方は違う、大切なものも違う」という、当たり前だけれど、ともすれば忘れがちなこと。

自分と他人との「愛を感じる愛情表現」と「大切なもの」の違いを伝え合い、大切な人たちとより深く分かり合っていきたい、と気持ちを新たにしたイベントでした。