「ポリアモリー」とひとことで言っても、みんな違います(モノガミーの人達だってそうですよね)。

どんなパートナーシップを結んでいるか、関係者の間でどんな合意を得ているかは、人それぞれ、カップルそれぞれ。

今回は、そういったさまざまな関係性のあり方について、見ていきたいと思います。
 

ここで挙げるのは、「More Than Two: A Practical Guide to Ethical Polyamory」の著者の1人であるFranklin VeauxによるThe Map of Non-Monogamy。

ポリアモリー、というかいろいろなノンモノガミー(モノガミー以外の関係性のあり方。同時期に2人以上の相手と性愛関係をもつこと)をていねいに分類したものです。

An update to the Map of Non-Monogamy

こんなにたくさんの種類があるの?と驚いた人もいるかもしれません。

いろいろな関係性が複雑に絡み合っていて、私自身も見ていてちょっと混乱します……。

なお、この図の日本語訳については、以下も参照してください。
同じポリアモリーでもこれだけ違う。

興味深いのが、Casual Sex(セックスをカジュアルにおこなう関係)やCommerce(金銭を介してセックスをする関係)など、セックスに関するライフスタイルが含まれている点。

BDSM Play & D/s non-monogamy(SMプレイおよびノンモノガミー的な主従関係)やSwinging(スワッピング)など、日本だと「変態プレイ」と片付けられてしまいそうな営みも、Polyamorous Relationships(ポリアモリー)やOpen Relationships(オープンリレーションシップ。パートナー以外とも性的関係を結ぶことに合意している関係)と並んでカテゴリー分けされています。

日本ではそもそも「恋愛は尊く、セックスは卑しい」みたいな価値観が強くて、セックスについて語ることはタブー視されるような風潮があります。

とはいえ、ポリアモリーを語るにあたってセックスは重要な要素(もちろん、セックスをしないアセクシュアルなポリアモリーの人たちもいますが、これについてはまた機を改めて書きたいと思います)。

そういう意味で、「誰と、どのように付き合うか」だけでなく「誰と、どのようなセックスを営むか」という分類がこの図の中に含まれていることには、大きな意義があると感じました。

また、ポリアモリーとSMとは、その両方を嗜む人が一定数いますが、共通点は合意形成の大切さ。

苦痛や羞恥を伴うようなプレイは一歩間違えれば暴力になりかねないし、だからこそきちんとした合意がなければ楽しめないものです。

対等にコミュニケーションがとれるからこそ、ポリアモリーもSMも安心して安全に営める。

The Map of Non-Monogamyの図からは、そういったことも理解できると思います。
 

また、Polyfidelity(「複数の貞節」。カップルの全員が、全員に対して貞節を誓っている関係。新たなパートナーをカップルに加えるには、全員の合意が必要)やClosed-Group Swinging(特定のグループ内でのみおこなうスワッピング)など、クローズドな(ある意味で排他的な)関係も含まれています。

ポリアモリーは「誰とでもセックスするんでしょ?」といった偏見に晒されることも多いのですが、そうではない関係もあるということが見て取れると思います(もちろん、合意のもと安全におこなわれるのならば、「誰とでもセックスする」ことが悪いとは思いませんが)。

ちなみに、私自身の関係性はPolyamorous RelationshipsとOpen Relationships。

それからCasual SexやBDSM Play & D/s non-monogamyにも含まれると思っています。

私が自分自身の営むパートナーシップにおいて重要視しているのは、まず「合意を得ること」、次に「オープンであること」。

基本的に、関係者全員の合意があればカップルの各人が誰とどのような関係をもってもよい、という考えです。

また、ポリアモリーの種類を、カップル内の人数や「誰と誰がお付き合いしているか」によって分けた図もあります。

なかでも、「1対2」でお付き合いをする「Vee」、3人カップルの全員が全員とお付き合いする「Triad」などがよく知られています。

この区別でいうと、私は2人のパートナーとお付き合いしていて、なおかつその2人はお付き合いしていないので、私たちのカップルの形は「Vee」ということになりますね。
 

これらの分類を見ても分かるように、ポリアモリー(ノンモノガミー)は、その人数や付き合い方、恋愛やセックスのあり方、カップル外での関係のもち方などによって、実に多くのバラエティをもっています。

こういったThe Map of Non-Monogamyの図の「モノガミー版」も作って、ノンモノガミー版と比較してみたいものです。

おそらく、モノガミー版はもっとシンプルな図にまとまるのではないでしょうか。

さらに、モノガミー版とノンモノガミー版を合わせて全体図を作ったら、その中でモノガミーの領域はごく一部に過ぎない、ということが分かるような気がします。

モノガミーの世界の傍には、広大なノンモノガミーの世界が広がっている。

BDSMの世界と、“ノーマル”な世界だって、その両方を楽しんでいる人もきっといるでしょう。

それらの世界は自由に行き来できるし、ずっとひとところにいなければならないというルールもない。

恋愛やセックスのあり方は本当にさまざまだけれど、それらは決してお互いに遠く隔たりあったものではないし、優劣や正否もない、ということをThe Map of Non-Monogamyの図は教えてくれているのではないかと思います。