皆さんは「エシカル」という言葉を聞いたことがありますか?

エシカル(ethical)とは直訳すれば「倫理的な」「道徳上の」といった意味ですが、近年は、環境保全や社会貢献につながる倫理的な活動を「エシカルXXX」と表現しています。

たとえばオーガニックコットンや天然染料を使った衣類やアクセサリーは「エシカルファッション」。

自然環境を損なわない・児童労働によって作られていない・地域経済の活性化(災害復興など)につながるといった商品を買うことは「エシカル消費」と呼ばれます。

そんな概念「エシカル」を広げるべく活動しているのが、エシカルペイフォワード プロデューサーの稲葉哲治さん。

先日、稲葉さんに声をかけていただき、エシカルフォーラムのセッション「セクシュアリティ×エシカル」に登壇しました。

エシカルフォーラムとは、エシカルを「つながりを想い、これからを選ぶ」(社会とのつながりを意識して、自分らしい選択をする)ととらえ、さまざまな社会分野で活動するゲストによる10個のセッションを通して、新しい時代へのヒントを探るというイベントです。
 

最初にこの話をいただいたとき、エシカルを「エコ」や「ロハス」「フェアトレード」などと似たようなキーワードとして捉えていた私は、いささか戸惑いました。

エシカルという視点から、セクシュアリティについてどう語ればいいのだろう?ポリアモリーと関連づけることができるのだろうか?

そんな疑問について稲葉さんとやり取りするうち、彼のいう「エシカル」がもっと視野の広い概念であることが分かってきました。

稲葉さんは、エシカルとは「一人の活動が世界中のさまざまな国や地域や過去や未来とつながっているということと、その中で自分はどうありたいかを選ぶこと」だといいます。

そのために、一つは世界とのつながりをどう認識できるようにするか、もう一つは自分らしい選択が自由にできるかが重要だということです。

そういったエシカルという観点で「私」をつくる大切な要素であり、周りの人との関わりの基礎となるセクシュアリティについて考える。

セクシュアリティを見つめることで、これから自分がどうありたいか・どんなつながりを作りたいかを見つめ、自分らしいセクシュアリティのあり方と、そこから生まれる社会との関わりについて考える……というのが今回のセッションのテーマでした。
 

一緒に登壇したのは、アーヤ藍さんと卜沢彩子さん。

アーヤ藍さんは、クエスチョニングというセクシュアリティをオープンに発信しているライターの方です。

クエスチョニングとは、自らのセクシュアリティに対して「分からない」「選ばない」といったことを表現する言葉。

いわば「選ばない」ということを選ぶようなものです。

そして、卜沢彩子さんは、A-live connect 代表として、性暴力被害の経験を発信し、多様性の理解や恋愛・性に関わる活動をおこなっています。

セッションでは、つながりを知ること・つくること、選択すること、そのなかで自分を確立することを中心に、L・G・B・Tの4種類にとどまらないセクシュアリティや、パートナーシップ、恋愛のあり方などについて語り合いました。

三人で話していて、思ったことがあります。

それは、全員が生まれ育ちや経験に囚われず、自らの生き方やあり方を選ぼうとしている、ということ。

クエスチョニングであっても、性暴力被害者であっても、ポリアモリーであっても、どんな服を着るか、どんなパートナーシップを結ぶか、どんな恋愛やセックスをするかは自分で選びたい。

世間の「セクシュアリティってこういうもの」「恋愛ってこういうもの」というドレスコードに縛られたくない、という思いが感じられました。
 

エシカルのポイントは「つながり」と「選択」だと稲葉さんは言います。

「つながり」で「選択」を変えていく、もしくは「選択」で「つながり」を変えていくことで、ひいては社会を変えていこうというのがエシカルな取り組みなのだと。

“世間”と違うあり方やつながり方を選ぶことで、不安や孤独を感じることもあるし、ときにはあらぬ非難を受けることもあります。

しかし同時に、周囲に「そういうセクシュアリティもあるんだ」「そういうパートナーシップもあるんだ」という気付きをもたらすかもしれないし、もしかしたらそれが少しずつ世界を変えてゆくかもしれない。

セクシュアリティを知ること・選ぶことには、そういうエシカルな力があるのではないかと感じました。

ポリアモリーも、たとえば、私がポリアモリーというあり方を知り、そのあり方を選ぶ。

その選択が、周りの人々に人間関係について考えたり、パートナーシップを選ぶきっかけになるかもしれない……という意味では、エシカルなものなのだと思います。

世間のいろいろな制約を手放して、自分はどんなセクシュアリティでありたいのかを選ぶ(もしくは選ばずにおく)。

その選択が自分の周りの人たちから、地域、国、世界、未来へとつながっていくこともある、ということを学んだエシカルフォーラムでした。