「ポリアモリーって、性病もってそう」

インターネットで、見知らぬ人からそんなふうに言われたことがあります。

「複数の人と性愛関係をもつ」というところから、誰とでもセックスをするようなイメージ、性的なリテラシーが低いイメージがあるのでしょうか。

今回は、性病やHIVへの感染を予防することや、感染していないか検査することの重要性について、お伝えしていきたいと思います。

突然ですが、12月1日は何の日か知っていますか?

この日は、世界エイズデー。

東京では、人々のHIVやエイズへの関心を高めて感染拡大の抑止をはかる「TOKYO AIDS WEEKS」が開催されています。

以前私は、世界エイズデーにHIV検査イベントを開催しました。

保健所が無料・匿名でおこなっているHIV検査を参加者たちと一緒に受け、その後の交流会のなかで、HIVや性病の検査について話したり、性や恋愛の悩みをシェアしたりするといったイベントです。

イベントには、私のパートナーの一人も一緒に参加してくれました。

彼と私はお付き合いを始めた時にも、お互いにHIVや性病の検査を受けて結果を確認しあっています。

他にも、HIV検査は初めてという人、病院で性病検査を受けた経験がある人など、さまざまな参加者が私のイベントに集まってくれました。
 

HIVや性病と、不特定多数の人とのセックスとは、結び付けられて語られることが多いように感じます。

確かに、コンドームを使用しないなどのリスキーなセックスを不特定多数の相手と繰り返すことは、HIVや性病への感染する危険性を高めるものです。

しかし、ポリアモリーは基本的に「特定多数」で関係を結ぶもの。

お互い顔の見えるお付き合いをしていて、全員がセーファーセックスを心がけていれば、病気のリスクがモノガミーに比べてより高くなる、ということはないと考えています。

セーファーセックスとは、HIVや性病に感染するリスクの少ない「より安全なセックス」を指します。

具体的には、コンドームなどの避妊具を適切に使用することや、HIVや性病の検査を定期的に受けることなどです。

しかし、多くの人にとってセックスをするのは当たり前のことなのに、セーファーセックスをするのは当たり前のことだとは受け止められていないようです。

そのせいもあってか、近年、HIV検査を受ける人が減っているといいます。

HIVや性病の検査が広がらない大きな理由は「特定の相手としかセックスをしない自分が、性病にかかるはずがない」という考えがあること。

とはいえ、こうした「特定の相手」が病気をもっていない、と本当に言いきれるのでしょうか。

相手の昔のパートナーは?そのパートナーの昔のパートナーは?と遡って全員が「シロ」だという確証はありません。

どのような相手であれ、あなたが昨日セックスをした、先月セックスをした、1年前にセックスをしたというなら、HIVや性病に感染している可能性はゼロではないのです。

そして、実際に感染しているかどうかは、検査を受けないかぎり分かりません。

自覚症状の出ない病気は数多くあります。

すなわち特定の相手としかセックスしないからといって、セーファーセックスをしなくてもいい理由にはならないのです。
 

私自身は、HIVや性病の検査を定期的に受けるように心がけています。

複数の人とお付き合いをしているポリアモリーはもちろん、モノガミーであっても、誰ともお付き合いしていなくても、検査は万人に受けてほしいと思っています。

セックス以外の方法(母子感染や箸の使いまわしなど)で感染するHIVや性病もあることを考えると、たとえセックスの経験がなくても、検査を受けるのは意味があることです。

仮にHIVに感染していても、早い時期に投薬を始めれば、エイズの発病を防ぎながら普通の生活を送ることができます。

しかし感染して時間が経てば経つほどHIVは増殖するため、薬の効果は低くなります。

最悪の場合にはHIVの増殖を抑えきれず、エイズを発症することも。

どんなにいい薬でも、エイズ発症前に治療を開始しないとエイズを防ぐことはできません。

しかし発症してから検査を受けている人が多いのが現状です。

「何も症状がないから、大丈夫」「一人の決まった人としかセックスをしていないから、大丈夫」と決めつけず、HIVや性病の検査を受けることが、セックスをする人の普通のエチケットとして広まっていってほしいと思います。