今回は、とある取材を通して、セックスについて感じたことや考えたことをお伝えしたいと思います。
取材を受けたのは「東京グラフィティ」という雑誌。
リアルな東京の今の声を届ける、というコンセプトの若者向けカルチャー誌です。
この東京グラフィティの2017年 12 月号「TOKYO SEX 〜318人が話す、本当のこと〜」という特集のカップルインタビューで、恋人たちとともにセックスについて語りました。
LGBT特集が頻繁に組まれ、ポリアモリーについても何度も取り上げられていて、前からお気に入りだった雑誌なので、とても嬉しい貴重な経験となりました。
とはいえ、ポリアモリー当事者としていわゆる「セックス特集」に出ることには、迷いもありました。
実は、雑誌のセックス特集があまり好きではなかった私。
「SEXでキレイになる。」「さらに昂めあうSEXテクニック」「女をイかせるセックスの神ワザ」「死ぬまで勃つ!熟年ED克服宣言」みたいなセックス特集を見かけるたびに、どこかモヤモヤする気持ちがありました。
そこには、男性は勃起・挿入・射精ができることが大事、女性は男性に“選ばれる”こととオーガズムを迎えられることが大事、という文脈があるように感じられます。
セックスってどんな層を対象とした雑誌にもかならず出てくるコンテンツだし、とりわけ最近はセックス特集が流行っていますが、そこに満ちている「セックスとは、こうでなければならない」という空気に、どうにもしんどくなることがあるのです。
東京グラフィティはとても好きな雑誌ですが、そのセックス特集が、セックスのハウツーに終始していたり、変わったセックスをスキャンダラスに取り上げる内容だったら……という一抹の不安も感じていました。
ポリアモリーというパートナーシップのかたちにおいては、そのセックスのあり方が注目の的になります。
LGBT当事者も同じ状況なのですが「ポリアモリーの人って、どんなセックスするんですか?」という質問はよくあるものの一つです。
あるいは「複数プレイするんでしょ?」と言われることも。
そういう誤解をもたれやすいからこそ、ポリアモリー当事者としてセックスを中心とした話をすることには、慎重になっていました。
もちろんパートナーシップの全員でセックスをするポリアモリー当事者もいますが、セックスは各パートナーと二人きりでするというポリアモリー当事者もいます。
あるいは、セックスを伴わないパートナーシップを営んでいるポリアモリー当事者もいるのです。
私自身はセックスが好きだし、そのことをオープンにしている人間ですが、私個人のセックスに関する語りを「ポリアモリーの人のセックスって、こうなんだ!」と拡大解釈されたくはないと思っています。
けれど今回の東京グラフィティ「TOKYO SEX」のなかでは、いろいろな人のセックスの価値観や、セックスの実情、あるいはセックスの願望がありのままに描かれていました。
ポリアモリー、ゲイ、日本人と外国人、ハーフ同士、男性とラブドール女性など、特集に載っているカップルたちは実にさまざま。
交際暦は2ヶ月目から8年目まで、年齢は大学生同士から還暦近くまで、出会ったきっかけは高校の写真部から出会い系マッチングアプリまで、とバラエティに富んでいます。
そして、どの人も笑顔で自分のセックス観を語っています。
「セックスに気をつかってる私カッコいい」といったテイストではなく、それぞれの等身大のセックスに対する考え方がそこにはありました。
カップルインタビュー以外のコンテンツでは、童貞の人たちに理想の初セックスについて語ってもらったり、外国の人たちに興奮する相手のしぐさを尋ねたり。
一つとして同じ答えはありません。
十人十色のセックス観が、比較されたり優劣をつけられたりすることなく、当たり前にそこにあるものとして並べられていました。
また、irohaという女性向けアダルトグッズのシリーズのなかから「iroha zen」というパステルカラーのバイブレータにフォーカスして、カップルの男女それぞれの感想が綴られたレポートも、読んでいてわくわくするものです。
アダルトグッズは特殊ないやらしい道具ではないし、それを使うのも特殊な人ではない、ということが伝わってきました。
真面目だけれど、どこかクスッとくるような温かみのある東京グラフィティの「TOKYO SEX」。
セックスの“正解”を押し付けない、セックスの“正しさ”を振りかざさない。
ポリアモリーであれ、LGBTであれ、外国人であれ、そこには特殊な人たちによる特殊なセックスがあるわけではない。
いろんなカップルがいて、いろんなセックスや愛のかたちがあるんだ、ということを教えてくれる特集でした。