31)地震に強い屋根瓦工事・その1 | 木の家散歩

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木の家の設計監理経験豊かな建築家・山中文彦と木材産地、職人技術者のネットワークにより、夢の木の家を造る「木の家づくりネットワーク」のブログです。自然素材を活用し、家族と環境に優しい、本物の木の家をCM型施工管理システムによるリーズナブルコストで実現します。

調布の家の屋根瓦工事が始まりました。


木の家づくりネットワークでは瓦を使う場合は、「深谷瓦」と言う埼玉県の深谷地域で製造される「いぶし銀黒瓦」を標準仕様としています。


埼玉県北部から群馬県にかけての地域の良質な粘土を使い、高温で焼き上げた後に、昔は松の枝を燃やした煙〈現在ではLPGなど)で燻した、まさに燻し銀黒色をした高品質な瓦です。
吸水率が低く、凍害が少なく、一枚一枚最後に手磨きで仕上げた逸品です。


瓦は、素焼きの状態ですと朱色をしています。
昔の排水管に使われた土管(といっても分からない人が多いと思いますが)と同じですが、それだと雨が浸み込んで割れやすくなるため、燻して強くしたものです。

今風に言えば、炭素で補強したカーボンファーバーセラミックスとでも言える物です。


瀬戸物のように上薬を塗って様々な色に焼いた瀬戸瓦よりも価格が若干高いですが、耐久性ははるかに高く、まずメンテンスフリーです。

何よりも、色が渋いですよねチョキ


朝一番に埼玉県妻沼(めぬま)町の小林瓦製造所の小林社長と職人さんが瓦を二台のトラックで現場に運びました。

電動リフターのついたはしごを使って屋根まで一気に上げます。

屋根全体に均等に置いてからいよいよ瓦葺です。

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数日前にルーフィングと瓦桟の施工と、瓦を葺くための基準となる線のマーキングを終わらせていましたので、早速に施工に入ります。

瓦は軒先(のきさ)=屋根の一番下の先端部分に使う「万十瓦」(まんじゅうがわら)と屋根の端っこ=ケラバに使う「ケラバ瓦」、そして一番沢山使う屋根の主な瓦である「桟瓦(さんがわら)の三種類です。


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左側の饅頭のような丸いものがある瓦が万十瓦で、右側の瓦が桟瓦です。

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この瓦は、L型に曲がったように見えますが、これはケラバ瓦です

端っこが下に折り曲げられたようになっています。


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最初に軒先の万十瓦を葺きます。

左側が一番下の軒先ですが、そこに波型の板金を取り付けます。
これは、雀などの鳥が巣を作らないように瓦の隙間を塞ぐものです。

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軒先に万十瓦が葺かれました。



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これは南蛮漆喰(なんばんしっくい)と呼ばれるもので、漆喰と粘土、砂、炭などを混ぜたもので、瓦の下に接着剤代わりに使う瓦葺用の土です。

これを軒先の万十瓦やケラバ瓦、一番高い棟の部分の瓦を葺くときに使います。

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瓦の突起物を先の尖ったかなづちで落としたり

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ディスクサンダーという道具で大きさを調整します。


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左側の屋根の端っこ=ケラバの下にも隙間塞ぎの板金が附けられています。


南蛮漆喰を下に敷いて、上から瓦をまっすぐになるように綺麗に葺いていきます。
ずれないように、屋根の下と一番高い棟の間に糸を張って、それにあわせて葺きます。
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このケラバ瓦はステンレス釘二本で止められますが、その釘の頭に銅線を巻きつけて、下の瓦に上の瓦を銅線で結んでいくのです。
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瓦に小さな穴が開いていて、そこから銅線が出ていて、結ばれているのがお分かりかと思います。


こうして、軒先の万十瓦とケラバ瓦が葺かれると、桟瓦の出番です。
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一枚、一枚丁寧に、ずれないようにステンレスの釘で留めつけられています。

ただひたすらに下を向いて、コツコツと、糸を張りながら、合わせながら瓦を静かに葺いていくのを見ていると、稲の田植えを連想します。

やはり、同じ姿勢でずっと続けていると、腰や膝が痛くなるそうです。


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美しい瓦が段々と葺かれてきました。
主な屋根面が葺かれると、次は屋根の一番上の棟(むね)の部分を納めます。

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