日本の木の家には欠かせないのが畳。
すべてを手造りする畳職人の山中さん
広さや間取りが許せば4畳半でも畳コーナーを作りたいとよく言われますが、少し前まではたたみ中心の生活が普通でしたよね。
その畳も今では藁床ではなく、プラスチック系の断熱材や木質建材の表面にイ草の畳表を張ったものがよく見かけます。
特にRC造のマンションなどの気密性が高く、通風性が低い住宅ではほとんどがそうした断熱畳です。
確かに、断熱性が藁床よりも高く、湿気を吸わないため、床下が断熱されていない以前の木造住宅でも、畳替えのときに採用されることが多かったようです。
しかし、藁床の適度に体重を吸収してくれる感触と呼吸する清涼感は変えがたい良さがあります。
その畳床も、カビや虫の発生を抑えるために、農薬系の薬剤を染み込ませた防虫シートを畳床の生産ラインに組み込まれております。
畳の裏は防虫シートの無い藁そのもの
また、イ草の畳表の生産時に農薬が使われたり、焼けを防ぐための泥染めの泥に人口顔料を入れたりと、本来の自然素材そのものだけで造られているものはほとんどありません。
私が設計する木の家では、畳床は省農薬の稲藁を5層プレスしたもので防虫紙を組み込まず、畳表も省農薬の無添加泥染めのタイプを基本仕様にしています。
先日は、化学物質化敏症のご家族のために、一切の農薬、染料などの化学物質を使わないオーガニック畳を納入いたしました。
特に畳表は生産者の発行する証明書付のもので、大きさもベッドに下に使うための変則的特注寸法です。
左が泥染めした畳表で色が少し鮮やかです
何か特別のもののように思えますが、実はこれが「本物の畳」なのです。
顔の見えない人に大量生産されるようになってから、どうも私たちの生活から本物がなくなってしまったようです。
生活者と生産者が早くて、安く、造ることも楽で、コミュニケーションをしないで済む物造りを少しだけ昔に戻すと、本物が見えてくるのではないでしょうか。
裏には持ち手がついています
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