冷気に目を覚ませば雪が降っていた。
思わず暖房をつけて、そこらへんに落ちていた風呂敷で身体をつつんだ。
ひとりきりの部室はひえる。


結局きのうはランマルとイイノ、ムタ、きょーじの4人と下北沢で朝まで飲んだのだけど眠りまなこ擦ってテーブルにかじりつきながらお酒を飲むのもまた楽しかった。

ムタときょーじが不良トークで盛り上がってるとき、退屈でちらりとよこをみたらランマルもぼうっとしていたので、将来のこととかを話したりしてた。
親父さんが米軍基地の消防士さんであること、将来の夢はまだきまってないこと、勉強が不得意でまた、やる気もなかなか起きないこと。
いつも会うのは大人数での飲み会で、こいつも口数が多い方ではないからやっとちゃんとはなすことができて嬉しかった。


きょーじにしてもすごく自分のことを話してくれて。
それに卒業式のときから浮かれているのが伝わってきて、なんだか可愛らしいとすら感じる。
今日の主役はお前だものな。

これでまたあったら元どおりになるのが少しこわいけど。
仲良くなれたと思ってもいつのまにか距離がとられる。何度か経験したのにこいつと少し近付けたんじゃないかと期待してしまうのも仕方ないのではないか。

嫌いだ嫌いだったって、こいつがなんでオータ虐めてたかとか、ひとの悪口ばかりいう理由を知ってるもんな。
こいつが舐められたらお仕舞いな所で生きてきたことをしった日から常に肩肘はってるのが急にかわいそうに思えて、仲間の前だけではそんなのやんなくてもいいんだよと伝えてやりたい気もするんだわ。
お節介以外のなにものでもないけどね。


駅までの道のりでは、眠気と酔いでうまく歩けないところをイイノがそっと誘導してくれて、身体に触れずしてうまく導いてくれるところにイイノらしさを感じてわらけた。
さすが紳士…これだけ出来たやつに女がいたためしがないってのが未だに信じられないな。

器量だって少なくとも不潔ではないし、心の優しいところも、大きな口で顔をしわくちゃにして笑う顔も、うねるような低い声も、後輩たちの前でみせるおどけた仕草も。
恋愛対象として見たことがないからほんとによく分からないのだけど、魅力的だとおもうのだけどね。

こちらとしては、女好きな子たちよりはずっとありがたいかな。こういうときに安心して女の後輩も任せられるから。

とちゅうで上着貸してくれようとまでしてくれたので、学生服は女きちゃいけないんだって。とたしなめると申し訳なさそうな顔していて。それ脱いだらおまえが寒いだろうよ。
ママンを感じるわ。イイノはきっといいお母さんになるよ笑

朝ぼらけランマルに引き摺られ駅から学校まで歩いたこの日は忘れんだろうな。
たのしかった。ほんとに




カトレーから連絡があった。うちの部に入ってくれるんだって。
いまのあやふやな状態のままでいることも出来たはずなのに、きっちりとケジメをつけて飛び込んでくれた。
いい子なのだろうとはおもってたけど、初めてこいつをカッコいいと思った
背丈も同じくらいで華奢な体つきに上ずったような声が、どこか小鹿のような印象を受けるのに、男気あるやんけ…かっこいいな。
こういう姿勢は見習いたい

大事にするよ。身体も壊させない。空手も好きになってもらえるようにがんばる。
限りある学生生活をうちに捧げてくれるってんなら楽しい思い出もそのぶんのこしてあげなきゃな。