一冊の本をつくることでたくさん写真を見る機会があった。当然、個人によって写真の好き嫌いは出るが、私は自分が好きな写真をなぜ好きなのか説明できない。感覚的にいい、とかかっこいい、とか一辺倒の台詞しか私の口からは出てこないのだ。
 編集という仕事は、なぜかっこいいか、なぜこの写真がいいか、ということを言葉にすることが大事。就職活動でも、自分の”好きなこと”の、どういうところが、なぜ好きなのか、言葉できちんと説明できる人が受かるんじゃないかな、と思っていた。そう言いつつも、自分自身ではできていなかったんだけどねっ。というか、本当に好きなものがないのかも・・・。
 また、編集者は、人が好きなものも、なぜその人はそれを好きなのか分析し、言葉にすることが必要だ。


 そこで、今日は、私が苦手できたざわさんが好きだというメタルを聞いてみた。今回トライしたのは、ドイツ系アメリカ人バンドArch Enemyの『wages of sin』。ハリウッド女優並に美しい女性がヴォーカルなのだが、いざ歌いだすと豹変!! すげぇドスのきいたデス声。そのギャップは面白いなとは思った。
 でも、ジャケットがすでに悪魔の棲む世界への入り口って感じで、夢見がちな私にとってはすごく恐ろしいものに見える。曲も、激しく、なんかせかされて叱られているみたいで、居心地が悪く、まったく落ち着けない。
 メタル好きな人にとっては、これがたまらなくかっこいいらしいのだろう。いつもならここでCDをストップし、自分の好きな音楽をきき、平静を取り戻したいところだ。しかし、分析するのだ!! と自分に言い聞かせ、分析をはじめてみた。


 メタルのスローガン(?)は、too fast ,too loud らしい。
 ライブに行ったら、血が騒ぐ感じだし、頭を振ったら興奮状態になれそうだから、楽しめるのかもしれない。ということは、血が騒ぎ、興奮状態になることが、その音楽を聴く人の目的なのか。
 もしも、メタルがなかったら、メタル好きの人は、そのせいで刺激がない気怠い毎日をおくらなければならないかもしれないし、生きる気力もなく なるのかもしれない。だから、渇望し、求めるのかもしれない。それが「好き」ってことなのかなぁ。
 
 私は音楽はあまり好きではない。私が考える音楽は、”インテリア”だ。あったらもっといい気分になれる。あったらおしゃれ。だから、いつも聴いているけれど、渇望して、どうしても音楽が欲しいと思うことはない。

 あー難しい。一朝一夕できるものではないと思うが、実に難しい。
 しかし好きな内容の本ばかりつくれるわけではないから、このような分析は、常に必要となる。読者が好きなツボはなんだろうとしっかり考えられるようになりたいな。引き続きメタルについて考えてみようと思う。なぜデス声がいいのか、とかまだ理解できないし。

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 私は、食に関しても、あまりこだわりがなかった。そこそこおいしければなんでもいいやと思うし、決まった店に食べに行くことも多い。

 だが、例えば、アイスの本をつくるとして、こだわりがなかったらどうなる?面白い本や本当にアイスが好きな人に満足してもらえる本はつくれない。
 普段から、いろいろアイスを食べて、なぜこのアイスが美味しく感じるのか、他のアイスと比べて何が違うのか言葉で明確にし、自分の中でランキングをつくっている人だったら、どうだろう。きっと、そこら辺のアイスマニアの満足いく本がつくれるのではないだろうか


 いろんなところに興味を持って、他と比べ、常に評価をする姿勢をもつことが、いい本をつくれる鍵となるのかもしれない。


 そういうことを普段からしなくてあまりこだわらない私は、この仕事に向いてないんじゃないかって思ってしまったが…。今更だが、一体なぜ私はこの仕事に、こんなにもつきたかったのだろうか。。
 実際、すごく仕事が楽しいし、やりたかったって想いに間違いはなかったんだと実感する日々だけど…。きっと好きな理由があるはずなんだが、言葉にできない。(だから就活に失敗したんだけどねー)

 中でも仕事で特に楽しい瞬間は、たくさんの人に会って話を聞いてるとき。でも他の仕事でもたくさんの人に会って話をすることできるしなー。やったことないだけで結局他の仕事でもいいのかもー。ものをつくることは好きだから、ものつくり系で、人とたくさん会える仕事。営業向きって言われたしなぁ~~~~。


 とりあえず、今はこの仕事を続けたいから、複雑な感情でもきちんと言葉にできるよう努力するしかないなぁ。