ガラス張り(笑)のオフィスを外からのぞくと、北澤さんが見えた。会社に足を運ぶのは、まだ三回目だけれど、見慣れた場所へ入っていくような気がした。
「おはようございます」と挨拶をし、真ん中の、恐らく接客用?椅子に荷物を置く。

 メールで応募したところ、即お返事をいただき、会社に遊びに行くつもりで行ったものの、なんだか働いてる。もちろん、現場で、本当に出版をやりたいのかという自分の意志を確かめたいという思いもあったが。

 先週の木・金。つまり会社に潜入した2日は、わくわくして仕方なかった。活字に関われること、昔からなりたかった職業に近づけたこと、たくさんの人に出会えること。
 勿論、技術も経験も何も持っていないので、雑用ばかりだ。それでも楽しいのだ。

 アルバイト経験のみで、働いたことのない私は、仕事についても認識し始めた。だが、まずぶつかった壁は、やはり私は何もできないな、という自分の非力さである。例えば、コーヒーなんかもいれられないし(あまり飲まないせいもあるが)、移動もなんだか効率が悪く、時間がかかりすぎている気がする。何もできないからこそ、せめて雑用だけはこなしたいと考えていたが、雑用だって、意外に難しい。

 三日目ではあるが、だんだんと、実用的な初歩から教えてもらえる機会も増えて来ている。やはり小さい会社ならではなのだろうか。本当に何もわからないから、いろいろ聞いているのだが、よくもまあ面倒くさがらずにいろいろ教えてくれるものだと、実は驚いている。
 今日も、イラストレーターの使い方や、企画書の書き方やらを教わった。イラレは、一応パソコンにはいっているものの、ガイドブックを買ってもさっぱりわからず放置気味だったが、実用となると、面白く、教えていただけるのでよく頭に入る。

 出版界では、のらりくらりとした人の方がいいらしい。私などは、「完璧にやらなくては、こうしなければ」と半強迫観念に追いかけられているような気がするタイプで、少し心配されている。
 もっと肩の力を抜いて、冷静に状況を判断しよう。というか、あんまりいろいろ気にしないでおこう(笑)