桜吹雪が舞う中、夫の同期である川崎さんは、夜間大学での苦闘を続けていた。夫と同じコンピュータ専攻を選んだものの、昼間は品質管理部で製品写真の整理という、畑違いの業務に追われている。

定時で帰宅できるものの、疲れ切った体を引きずって夜間大学に向かうのは容易ではない。基礎科目ですでに躓き、焦りと不安が募る日々。そんな川崎さんを、夫は陰ながら支えていた。

「大丈夫、俺も最初は苦労したよ」「この参考書、わかりやすいから読んでみて」

上司からの頼みもあり、夫は同じ科目を履修し、レポートの添削やプログラミングの指導など、親身になってサポートした。異なる大学に通っていても、共有できる知識や経験は多い。

夫の献身的なサポートのおかげで、川崎さんは少しずつ自信を取り戻し、課題を乗り越え始めた。桜の花が満開を迎える頃には、基礎科目の単位を何とか取得できる見通しとなった。

「本当にありがとう。あなたのおかげで諦めずに頑張れた」

川崎さんの感謝の言葉に、夫は心の中で微笑んだ。誰かの役に立ち、共に成長できる喜びは、桜の花のように美しく、かけがえのないものだと感じた。

夜桜の下、夫と川崎さんは語り合った。それぞれの夢、目標、そして未来について。それは、桜のように儚くも美しい、希望に満ちた時間だった。 

野原サクラ