薄紅色の花びらが舞う季節、夫の社会人大学での生活は順風満帆に進んでいた。入学当初は、年齢差やブランクへの不安もあったようだが、持ち前の勤勉さと頭の回転の速さで、基礎科目は一年で終わらせる勢いだ。

講義の後、夫はよくカフェに立ち寄り、ノートを広げて復習する。その横には、10歳年下のクラスメートたちが集まり、熱心に夫のノートを覗き込んでいる。夫は、まるで教師のように、丁寧に解説したり、レポートの書き方をアドバイスしたりしている。

「ノート貸してくれてありがとう」「レポート、参考にさせてもらったよ」

そんな感謝の言葉が、夫の心を温かく満たす。夫は、自分が誰かの役に立てていることを実感し、充実感に満ち溢れているようだ。

桜の花が満開になった頃、夫は基礎科目の単位を全て取得した。クラスメートたちは、口々に「すごい」「さすが」と賞賛し、夫を囲んで祝福した。

夫の顔には、達成感と喜びが溢れていた。そして、次のステップへと進む決意を新たにした。

社会人大学での学びは、夫に新たな知識と自信を与え、そして、かけがえのない仲間との出会いをプレゼントしてくれた。それは、まるで満開の桜のように、夫の人生を彩り豊かにする宝物となった。


野原サクラ