息子の太郎は、幼い頃から変わっていた。

成績優秀で、理科の実験や観察が大好き。特に、太古のロマンを感じさせる琥珀に魅せられていた。デパートの宝石売り場へ足繁く通い、目を輝かせて琥珀を眺める姿は、周囲の大人たちを不思議がらせた。

ある日、太郎はお小遣いを握りしめ、小さな琥珀を買ってきた。

「誰かのプレゼント?」と尋ねると、太郎は首を横に振った。

「中に葉っぱみたいなものが入ってるんだ。調べてみたくて」

私は目を丸くした。まさか、琥珀の中に閉じ込められた古代の植物に興味を持つなんて。

後日、太郎は琥珀を慎重に切り開き、ピンセットで植物らしきものを取り出した。顕微鏡を覗き込み、DNAを抽出する姿は、まるで小さな科学者のようだった。

「シダみたいだ」

太郎はそう呟くと、シダの植物細胞核に、抽出したDNAを植え込んだ。

数日後、小さな芽が出た。それはみるみるうちに成長し、部屋の中に緑の葉を広げた。まるで太古の息吹が蘇ったかのような、神秘的な光景だった。

私は、太郎の探究心と情熱に感嘆した。そして、琥珀の中に閉じ込められた小さな葉が、時を超えて蘇るという奇跡を目の当たりにし、生命の力強さと神秘を感じずにはいられなかった。

太郎は、このシダを「琥珀のシダ」と名付け、大切に育てている。彼の部屋は、まるで小さな植物園のようだ。

琥珀のシダは、太郎の好奇心と探究心の象徴であり、彼の成長を見守る存在でもある。そして、私たち家族にとって、時を超えた生命の奇跡を伝える、かけがえのない宝物となった。


野原サクラ