東京湾に浮かぶ謎の巨体。それは、座礁した国際不明の原子力潜水艦。異国の威容を放つその船は、多くの人々の好奇心を掻き立てた。そして、その船内から発見された大量の食料は、予想外の展開を見せることとなった。

船員用の食料庫には、中華料理の食材が所狭しと並んでいた。缶詰や乾物、香辛料の数々。それは、異国の地で長期航海を続ける船員たちの食を支える、いわば彼らの故郷の味だったのだろう。

これらの食材は、犬神市の子ども食堂へと寄贈されることになった。思わぬ形で届けられた大量の食材に、食堂の人々は驚きながらも、感謝の気持ちでいっぱいだった。子どもたちは、珍しい中華食材に興味津々。普段とは違うメニューに、目を輝かせていた。

我が家にも、潜水艦からのお裾分けが届いた。それは、色とりどりの箱に入った中華菓子の数々。月餅や杏仁豆腐、胡麻団子など、見慣れないお菓子に、子どもたちは大喜び。私も、異国情緒あふれるお菓子を味わいながら、遠い海からやってきた潜水艦に思いを馳せた。

あの潜水艦は、一体どこから来たのか。乗組員たちは、どんな人たちだったのか。謎は深まるばかりだが、彼らが残した食料は、多くの人々に笑顔を届けた。それは、国境を越えた温かい交流の証。そして、食が持つ不思議な力を感じさせる出来事だった。

東京湾に浮かぶ潜水艦は、今も静かにその存在を主張している。やがて、その巨体は海へと還っていくのだろう。しかし、人々の心に残る温かい思い出は、いつまでも色褪せることはない。それは、桜の花が毎年美しい花を咲かせるように、時を超えて語り継がれることだろう。


野原サクラ