うちのタローは、ちょっと変わったところがあるけれど、頭はいいんです。小学3年生になったばかりの頃、タローは音楽の授業に疑問を感じていました。

「モーツァルトがいつ生まれていつ死んだとか、そんなことばっかり。音楽の授業って、楽器を演奏したりしないのかな?」

ある日、タローは担任の岡田先生に思い切って聞いてみました。「先生、自分で曲を作ってみてもいいですか?」

作曲なんて、大人でも難しいこと。でも、最近は便利な作曲ソフトもあるし、タローならもしかしたら…。岡田先生は、タローのクラスだけ、特別に音楽の時間に作曲に挑戦させることに決めました。

情報の時間のパソコンに作曲ソフトをインストールし、子どもたちにも分かりやすいように、作曲の基礎から丁寧に教えていく岡田先生。タローは目を輝かせながら、初めての作曲に夢中になっていました。

最初は慣れないソフトに戸惑いながらも、試行錯誤を繰り返すうちに、少しずつ音符を並べていく楽しさを覚えていくタロー。休み時間も作曲ソフトに向かい、夢中でメロディーを作り出す姿は、まさに小さな作曲家。

1年かけて、タローはついに初めてのオリジナル曲を完成させました。初めての発表会では、緊張しながらも自分の作った曲をクラスメイトの前で披露。つたないながらも一生懸命に演奏するタローの姿に、心から感動しました。

作曲を通して、タローは音楽の楽しさを知り、表現する喜びを味わったようです。これからも、タローのユニークな才能を伸ばせるように、温かく見守っていきたいと思います。


野原サクラ