夏の足音とチマチョゴリ
梅雨が明けると、いよいよ夏本番。我が家のタローも、待ちに待った夏休みを迎えます。
ただ、今年は一味違います。タローは、韓国映画の子役として出演が決まったのです。
舞台は、昭和40年代の日本。足立区や荒川区に残る、ノスタルジックな街並みがロケ地となるようです。
先日、監督さんから台本が届きました。パラパラとめくるタローの顔が、みるみる曇っていきます。「お母さん、これ、全部韓国語だよ…」
日常会話はできるものの、映画のセリフとなると話は別。しかも、撮影は夏休みが始まってすぐ。覚える時間は、あとわずかしかありません。
「大丈夫、お母さんが一緒に練習するから!」
励ます私とは対照的に、娘のN子はウキウキ。姉役で出演する彼女は、チマチョゴリの制服を着られるのが楽しみで仕方ない様子。
「お母さん、私、韓国語の挨拶ならもう完璧だよ!」
そう言って、覚えたてのフレーズを披露してくれます。
そんなN子を見て、タローも少し元気を取り戻したようです。
「よし、僕も頑張る!」
リビングのテーブルには、韓国語の単語帳とチマチョゴリのイラスト。
今日も我が家は、賑やかな夏の足音を響かせています。
野原サクラ