私の息子、タローの奇妙な優しさ

うちの息子、タローは昔からちょっと変わっているんです。学校の成績はいつもトップクラス。でも、興味を持つものはみんなと少し違うみたいで。この間なんて、裏山に仕掛けた罠にかかった熊の血を分けてもらってきて、それを煮凝りにしていました。

「お母さん、これ、体にいいんだって。特に貧血に効くらしいよ」

そう言って、得意げに見せてくれたタロー。熊の血なんて、一体どこでそんな情報を仕入れてくるのやら。でも、タローの言うことだから、きっと何か根拠があるのでしょう。

その煮凝り、タローは姉のN子のためにニラと炒めて食べさせていました。もちろん、N子にはそれが熊の血だなんて内緒で。「美味しいニラ炒めだよ」って。

N子は最近、貧血気味で悩んでいました。顔色が優れなかったし、疲れやすそうだったんです。それが、タローのニラ炒めを食べてからというもの、少しずつ元気になってきたみたい。顔色も良くなって、食欲も出てきたんです。

「最近、調子がいいんだ。あのニラ炒め、また作ってくれないかな」

N子はそう言って、タローにおねだりするようになりました。タローはまんざらでもない様子で、「また作ってやるよ」なんて言って。

私はというと、熊の血と聞いて最初はギョッとしたけれど、N子のために一生懸命なタローの姿を見て、なんだか微笑ましく思えてきました。それに、N子の体調が良くなったのなら、それが一番です。

タローの行動はいつも予想外で、正直戸惑うことも多いです。でも、その裏にはいつも、家族への優しさが隠れている。そんなタローを、私は心から誇りに思います。

これからも、タローには自分の興味を大切にして、色々なことに挑戦していってほしい。そして、その中でまた、私たち家族を驚かせてほしいと願っています。


野原サクラ