8月も半ばを過ぎた頃、小学3年生の息子、太郎が興奮気味に帰宅した。「お母さん!見て!大きな魚釣ったよ!」。バケツの中には、大きなアメリカナマズが悠々と泳いでいた。近くの農業用水で釣れたという。

「まあ、すごいわね!」と私。しかし、内心は少し複雑だった。アメリカナマズは外来種。生態系への影響が心配される魚だ。けれど、太郎の嬉しそうな顔を見ていると、そんな気持ちもどこかに飛んでしまった。

「よし、お父さんと一緒に美味しく食べてあげようね!」

ちょうど夕食の準備をしていた夫は、「お、ナマズか!こりゃあ蒲焼だな」と腕まくり。太郎も興味津々で、夫の料理を手伝い始めた。慣れた手つきでナマズをさばき、甘辛いタレを何度も塗り重ねてじっくり焼き上げる。香ばしい匂いがキッチンいっぱいに広がる。

「お母さん、いい匂い!早く食べたい!」太郎は待ちきれない様子。

「もう少し待ってね。もうすぐだから」

そして、ついに完成。こんがりと焼けたナマズの蒲焼を、ほかほかのご飯にのせたナマズ丼。見た目はまるでうなぎ丼だ。

「いただきます!」

一口食べると、香ばしいタレとナマズの脂が口の中に広がる。うなぎとは少し違う、独特の風味。でも、これがまた美味しい。太郎も「おいしい!もっと食べたい!」とあっという間に完食。夫も満足そうに頷いている。

食卓には、家族の笑顔と夏の思い出が溢れていた。外来種という問題はあるけれど、このナマズは太郎にとって、そして私たち家族にとって、忘れられない夏の味となった。

来年もまた、太郎とナマズ釣りに挑戦しよう。そして、今度はどんな風に料理しようか。そんなことを考えながら、私は幸せな気持ちで一日を終えた。


野原サクラ