セブ島、それは南国の楽園。透き通る海、白い砂浜、美味しい料理…そんな夢のようなバカンスを期待して、ママ友たちとの旅行を計画した。息子も小学校に入学し、少し手が離れたこのタイミングで、羽を伸ばせる!そう心躍らせていたのに。

出発当日、空港で掲示板に並ぶ「台風接近」の文字。まさか…まさか…そんな思いも空しく、セブ島に到着すると同時に、容赦ない雨と風が私たちを襲った。ホテルに缶詰状態となり、楽しみにしていたマリンアクティビティも全てキャンセル。目の前に広がるのは、荒れ狂う海と、どんよりとした曇り空。

「もう、最悪!」

思わず心の声が漏れてしまう。せっかく高いお金を払って来たのに、これじゃあまるで罰ゲーム。ママ友たちは、なんとかこの状況を楽しもうと、ホテルのプールで遊んだり、スパでリラックスしたりしているけれど、私はどうしても気分が晴れない。

テレビをつけると、現地のニュースで台風の被害状況が報じられている。楽しみにしていた旅行が台無しになった腹立たしさと、被害に遭われた方々への申し訳なさで、胸が締め付けられる。

「サクラさん、大丈夫?元気出して!」

心配そうに声をかけてくれるママ友たち。彼女たちの優しさが、余計に私の心を苦しめる。こんなはずじゃなかったのに。

結局、セブ島滞在中は、ほとんどホテルの中で過ごすことになった。テレビをつければ、台風のニュースばかり。天気予報とにらめっこしながら、ため息をつく日々。楽しみにしていたお土産選びも、仕方なくホテルの売店で済ませる始末。

帰国後、ママ友たちからは、「大変だったけど、それも思い出だよね!」と明るく言われたけれど、私にはどうしてもそう思えなかった。あの時、テレビに映し出された台風の映像が、今でも脳裏に焼き付いている。

セブ島、それは私にとって、忘れられない苦い思い出の場所となってしまった。


サクラ