双子の影に隠れた、夫の青春と秘密

大学時代、夫は双子の兄の影に常に苦しんでいた。外見は瓜二つ、性格も似ているため、周囲は二人を区別することができなかった。兄は大学生活を謳歌し、一方、夫は兄の代わりに大学へ通い、授業を受け、ノートを取っていた。

兄は勉強嫌いだったため、夫は彼の代わりに試験を受け、レポートを作成することもあった。兄からは謝礼をもらっていたが、夫の几帳面な性格はそこで留まらなかった。彼は取ったノートを丁寧にコピーし、大学構内で販売。その正確性と丁寧さから、多くの学生に支持され、かなりの額を稼いでいた。

そんな夫と私は当時、同棲していた。私はアルバイトをしていたが、彼の収入のおかげで生活には全く困っていなかった。夫は大学に通いながらノート販売を行い、帰宅後は一緒に勉強したり、デートを楽しんだりしていた。

しかし、夫の秘密が明るみに出るのは時間の問題だった。ある日、兄の友人からノート販売の噂を聞いた私は、夫に問い詰めた。最初は否定する夫だったが、私の追及に根負けし、全てを打ち明けた。

彼の話を聞き、私は複雑な気持ちになった。彼の勤勉さや努力は称賛に値する一方で、兄の影に隠れ、欺瞞行為に手を染めていたことに失望もした。しかし、同時に、彼の苦悩や葛藤も理解できた。

その後、夫はノート販売を辞め、兄とは距離を置くようになった。そして、自身の力で人生を切り開いていくことを決意した。

あれから数年が経ち、夫は立派な社会人となった。あの時の経験は彼にとって苦い思い出だったかもしれないが、同時に、彼を成長させてくれた貴重な経験だったのだろう。

双子の影に隠れていた夫の青春と秘密。それは、彼の勤勉さ、努力、そして葛藤が織り成す、ひとつの物語である。


サクラ