サクラのエッセイ:タローの玉ねぎカレー

今日は朝からどんより曇っていて、まるで私の気持ちのようだった。夫は出張で家を空け、いつもなら賑やかな食卓も、今日は私一人。静寂の中で、ふと台所に立つタローの背中に目が留まった。

「ねぇ、タロー、今日は何を作るの?」

「カレーだよ、ママ。玉ねぎだけのカレー。」

そう言って、タローは真剣な顔で玉ねぎを刻んでいた。いつもは遊んでいる時間なのに、今日はなんだか大人びた様子。

「玉ねぎだけなの?大丈夫かしら?」

少し心配そうに声をかけると、タローはにっこりと笑った。

「大丈夫だよ、ママ。YouTubeで見たんだ。玉ねぎだけで美味しいカレーが作れるって。」

そう言って、タローは刻んだ玉ねぎを鍋に入れ、油でじっくりと炒めていく。普段は料理なんてしないタローが、真剣にカレー作りに取り組む姿に、なんだか胸が熱くなった。

しばらくして、いい香りが漂い始めてきた。タローはルーを加え、水を注いでぐつぐつと煮込んでいく。そして、仕上げに隠し味として、醤油と蜂蜜を少し加えた。

「できたよ、ママ!」

そう言って、タローは大きなお皿にカレーをよそう。スパイスの香りが食欲をそそり、思わず顔がほころんだ。

一口食べてみると、驚きの美味しさだった。玉ねぎの甘みとスパイスの風味が絶妙に調和し、ルーを使わないとは思えないほどの深みのある味わい。タローの料理の才能に、改めて感心させられた。

「美味しいね、タロー。本当にありがとう。」

そう言うと、タローは満面の笑みを浮かべた。

「うん、よかった!また作るね。」

その夜、二人は食卓を囲んで、タローの玉ねぎカレーを味わった。言葉は少なくても、心は温かい気持ちで満たされていた。

夫の出張中は寂しかったけれど、タローの成長を目の当たりにして、心が軽くなった。これからも、タローの料理の才能を応援していきたいと思う。