消えた夢
タローの誕生日に、父から送られてきたディズニーランドの入場券。
夢のようなプレゼントに、私は心躍った。
しかし、その喜びはすぐに消え去った。
夫が、その入場券を金券ショップに売り払ってしまったのだ。
タローには黙っていたから、泣かれずに済んだ。
でも、本当にそれでよかったのだろうか。
タローは、ディズニーランドに行けなかったことを、いつの日か知ってしまうだろう。
その時に、彼はどんな気持ちになるのだろうか。
夫は、時折手間のかかる料理を作る。
餃子を作った時には、タローに包むことを教え、
タローは嬉しそうにしていた。
夫は、タローの好きなカレーパンも手作りする。
子供にとって、家族との思い出はかけがえのないもの。
高額な入場券が必要な場所に行くだけが、
子供の思い出作りではないのかもしれない。
しかし、タローが本当に望んでいたのは、
家族とのディズニーランド旅行だったのではないだろうか。
夫の行動は、タローの夢を奪ってしまった。
そして、私からも、大切な思い出を奪ってしまった。
私は、夫を責めることはできない。
しかし、彼の行動を許すこともできない。
タローが大きくなった時に、
このことをどう説明すればいいのか。
その答えはまだ、私には見つからない。
ただ、一つだけ確かなことは、
タローの心には、消えない傷跡が残ってしまったということ。
その傷跡を、私が癒してあげられるのだろうか。
私は、ただただ虚しさだけを抱えて、
答えのない問いに立ち尽くす。