んなわけでさ、
上も下も白い毛が目立つジジイ二人で、
3月27日は、
始発電車に乗って福岡ヤフオクドームを目指したわけ。

日本軽薄振興会のT島君は、
前日緊張のあまり眠れなくて、
27日の2時半にようやく眠ることができたらしい。

遠足前日のバカじゃないんだからさ~。

僕らが目指すのは、
ソフトバンク・ホークスの試合ではなく、
ももいろクローバーZのドームトレック2016!



今年2月にももクロは2枚のアルバムを同時発売したんだけど、
その2枚のプロモーションを兼ねたツアーが、
今回のドームトレック2016で、
僕らが行った3月27日は、
4thアルバム『白金の夜明け』を通しで演奏するというもの。



今年発売された2枚のアルバムは、
アイドル歌謡では異例のトータルアルバム。

3rdアルバムの『Amaranthus』は、
フォーク色が強い、
いわゆるソフトロック的なイメージが強く、
楽曲の中には、
そのまんまイエロー・バルーンのアルバムに収録しても違和感のないようなものまであったんだよ。



それ位比べると『白金の夜明け』は、
3rdより若干ロック色が強いって感じかな。

3rdと4thに共通しているのは、
どちらもラリラリなサイケデリアの味付けがされているってところ。

まあ、
アルバムについてはまたの機会に語るね。

博多駅に着いた僕らは、
まずビールを飲んで気合いを入れたんだけど、
朝早くっていうのは実に気持ちいい。

その上ビールを飲めば、
否が応でも気分が盛り上がるってものだよ。

「オレたち一番乗りだったら、相当カッコ悪いな」

なんてなことをT島君とニヤニヤ話をしながら、
地下鉄に乗って、
福岡ヤフオクドームを目指したのね。

ヤフオクドームの最寄駅に到着した僕らは、
またもやコンビニでハイボールを買って、
グイグイ飲んじゃってさ……。

ここまで来ると気合いを入れるというより、
50間近のジジイ二人が、
アイドルのコンサートに行く照れ隠しみたいになっちゃってたんだよな。

後でわかったんだけど、
飲酒した人間は、
コンサート会場に入れないって建前があったんだってさ。

ヤフオクドームは7時前後に到着したんだけど、
そんな時間なのに、
結構な数のモノノフの皆さんが集まってて、

「馬鹿だな~、こいつら」

と感心したもんだよ。



それからってもの、
わんさかモノノフの皆さんが集まっちゃってさ。

どいつもこいつも派手な格好をしてて、
T島君が思わず、

「キース(なぜか僕はT島君からそう呼ばれている)が負けとるね」

唸ったほどだよ。

「うん、オレもそう思う。でもエクスキューズさせてもらえるなら、モノノフの派手は日常じゃなくて、オレのこのスタイルは日常だから。オレは年中日常から逸脱した生活をしているって表れがこれだもん」

僕は思わず負けん気を出したほど、
派手な連中の集まりだった。

でもさ、
ロックだとか、
カウンターカルチャー系のコンサートっていうのは、
本来客も派手に決めるのが当たり前だったはずだよ。

そこが日常を忘れる場所だからこそ、
客も必死にミュージシャンなんかに近づこうと、
あれこれ着飾ったものだよ。

僕もガキの頃は、
シド・ヴィシャスを意識した服を着たりして、
コンサートに出かけていたもんだよ。



そこには、
日常に満足していないという、
自己主張があったんだよ、
客にも。

日常は仕方ないよ。

そこから逸脱することを許す社会なんて、
それほど世界にはないんだから。

日常を逸脱した生活を送るには、
売れないエロ作家にでもなるしか術がないんだから。

だからこそ、
日常から踏み外せられる場所を求めていたわけだよ。

映画『さらば青春の光』でスティングが演じたエースみたいにね。



そして、
それこそがロックキッズの主張だったんだよ。

ところが最近のロック・コンサートなんかさ、
客の平均年齢が上がっちゃって、
妙に分別臭い奴らが、
日常の格好で音楽を楽しんでんだもんな~。

「私、日常の生活にそこそこ満足しています」

みたいな顔してんだもんな。

そんな奴がロックを聴く必然性なんか、
蚊の爪垢ほどもねえよな。

ロックの基本は『満足できねえ!』っていう鬱憤なんだけどね~。



そういう意味では、
今やロックの精神が生きているコンサートって、
ももクロら一部のアイドルのコンサートと、
矢沢永吉のコンサートぐらいなんじゃねえの?



この写真を見るとさ、
永ちゃんのコンサートは、
僕には絶対に無理だけど、
でも、
永ちゃんのファンは日常を忘れようとしているよね。

てな訳で、
コンサートが開始するまで、
ドームの近くでこっそり酒を飲んだりしながら、
ようやくコンサートが開始!

昨日もブログで書いたけど、
ももクロの音楽って、
2ndアルバムの『5th Dimension』あたりから、
脱ポップに向かっているのね。

それこそが僕の理想とするロックなんだけどね。

ポップな作品を否定するんじゃないし、
ポップな音楽が嫌いって人間でもない。

ただ、
ポップな楽曲って、
僕は聴くタイミングがあるんんだけど、
ポップじゃない楽曲は、
ほぼ365日聴けるんだよ。

そっちの方が心地いいのね。

そういう意味では、
1部の『白金の夜明け』を通しで演じたのは、
僕には非常に喜びを感じられた。

ところどころ、
アイドルのコンサートらしく、
個人のかくし芸の域を超えた芸の披露なんかもあったりもするんだけど、
個人のかくし芸の域を超えたってところがミソで、
真剣に取り組んでいるのが伝わってくるから、
かったるくなかったんだよな。

とにかく、
『カントリーローズ~時の旅人~』~『イマジネーション』のサイケデリアっぷりは、
映像とサウンドがうまくミックスして、
僕はめちゃくちゃ感動しちゃった。

XTCの変名バンドザ・デュークス・オブ・ストラトスフェアのミニアルバム『25オクロック』もビックリ!

それよりもすごいな~って感心したのが、
会場を埋め尽くしたモノノフさんたち。

ラリラリな楽曲でも、
サイリウムを振り回しながら、

「夏菜子~」

だとか、

「しおり~ん」

なんて声援を送ってんだもん。

さらにステージでは、
ももクロがサイケデリアな楽曲に合わせて、
激しく楽しそうに、
そしてコミカルに踊ってるんだよ。

もはや、
会場中が映画『獄門島』の鬼頭三姉妹状態!



ある意味、
その鬼頭三姉妹みたいなものが、
正しいサイケデリアなんだもんね。

そんなわけで、
サイケな世界観の1部が終了すると、
すぐに2部が開始。

こちらは、
初期のポップなナンバーを中心に、
ノリッノリなライブ構成で、
1部と違ってシンケンサーでの演奏ではなく、
生バンドをバックに大いに盛り上げてくれちゃったわけよ。

1部も2部も飽きさせない演出は、
流石佐々木敦規さんだって、
改めてももクロのブレインたちにも驚愕しちゃった。



この佐々木さんって人は、
プロレスだとか、
K-1の演出家として有名な人なんだけど、
僕の創作に少なからず影響を及ぼしている、
『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』を演出していた人で、
僕が嫌いな演出要素がないんだよね。

そんなこんなで、
会場のモノノフ同様、
僕もすご~く満足したももいろクローバーZのヤフオクドームライブだった。

ただ、
僕のような変てこりん好きな人間が感動したライブって、
実際のところ、
モノノフさんたちは満足してんだろうかって気になって、
地下鉄唐人町駅に向かう道すがら、
耳を象のようにでっかくして、
周囲の反応に聞き耳を立てていたんだよ。

ちなみに、
興奮状態のT島君は、
そんな周囲のことなんか気にならんらしく、
iPhoneに同期しているももクロの楽曲を、
ずっと聴きながら駅まで歩みを進めていたんだけどね。

そうして聞き耳を立てていると、
女のコのモノノフ2人組の声が、
僕の耳に飛び込んできた。

「なんか、後半の知っている曲はすごく楽しく乗れたけど、前半はよくわからんかった」

3万人のうちの2人の感想が、
全てだとは思わんが、
確かにアイドルのコンサート目当てに来た客には、
少々しんどいものだったかもしれない。

しかし、
ももクロのアーティスティック路線は、
すでに2013年の『5th Dimension』からスタートしているわけで、
今さら振り上げた拳を降ろすわけにもいかんだろう。

こうなったら、
僕らのような変なのが面倒を見るから、
行くとこまで行っちゃって、
最終的にはザ・レジデンツみたいになってくれないかしら?



BGMはももいろクローバーZで『gounn』をどうぞ。