
【酔ったグレンジャー兄弟
ふたりに挟まれて…】
ある夜のこと…―――
私はクリスさんを訪ねるために、教会の前にやってきた。
(少し前にエリオットも教会に向かったってラッド様がおっしゃってたけど…)
~
ラッド「多分今頃ケンカしてるだろうから、
もし困ったらこれを飲ませなさい」
「これは…?」
ラッド「魔法のジューだ」ニコ
~
ウィンクしてラッド様が渡してくれた2本の瓶は今、私の手元のバスケットの中にある。
(……ふたりが大人しくなりそうなもの、っていうことだよね……)
まるでワインのような…というよりも、ワインとしか思えない深い色に、何となく中身が想像出来てしまう。
(これを使うのは、最後の手段にしよう…)
私はバスケットから視線を上げると、教会の中に入った。
すると…―――
クリス「だから、わざわざ何をしに来たんだ、お前は」
エリオット「どうでもいいだろ…っ。手ぇ離せ、クリス」
ふたりは睨み合い、お互いの腕や胸元を掴んでいた。
(取っ組み合いのケンカしてる…っ)
「ふたりとも、とりあえず落ち着いて下さい…!」
エリオット「お嬢様?」驚
クリス「お前まで来たのか」素
駆け寄る私に気づいて、2人の動きがとまる。
「何があったんですか…?」
(口喧嘩してるのは見たことあるけど、こんな…)
いつもよりも激しいケンカを見て、ふたりのことが心配になる。
「危ないですよ。もし怪我でもしたら…―」
クリス「手加減はしてた」
エリオット「手加減はしてました」
ふたり「…………」
ふたりは声を揃えたように答えて、同時に不機嫌な顔になる。
(……やっぱり、兄弟だな)
思わず微笑んでしまいそうな口元を引き締めていると、クリスさんがふと私の手元のバスケットに視線を落とした。
クリス「…ん? なんか持ってるのか」驚
「ええっと…これは、
ラッド様がクリスさんとエリオットにと…」
クリス「ちょうどいい、もらう。
お前とくだらないことしてたら喉が渇いた」
(あっ…)
クリスさんが瓶のフタを空け、止める間もなく中身をひと口飲む。
エリオット「自分だけ飲むな」ムッ
「俺も貰いますね、お嬢様」横向きニコ
エリオットもそう言って、もうひとつの瓶を手に取った。
「ちょっと待って、それは、あの…―――」
言い終える前に、
エリオットの喉がこくりと上下し………
(飲んじゃた…)
ふたり「…なんだ、これ」
「…やっぱり、お酒だったんですね…」
クリス「みたいだ」ムッ
エリオット「わざわざジュース混ぜて匂い消すなんて、ラッド様も人が悪いですね…」
ふたりは気を削がれたように私の両脇に腰を下ろした。
「大丈夫ですか?
エリオットも、気分は悪くない?」
エリオット「…大丈夫ですよ。でも…
ちょっと、お嬢様に甘えたくなってきました」ニコ
「っ…」
エリオットが、私の身体を抱き寄せる。
「あの、エリオット…っ」
エリオット「どうかしましたか?」微笑
慌てる私に、エリオットは悪びれもせずに微笑んだ。
クリス「…おい。留奈を困らせるな」
(っ…)
今度はクリスさんが、反対から私の肩を抱き寄せる。
両側から伝わる温もりに、頬が熱くなった。
クリス「…お前は図体がでかいだけで、
中身はまだガキだな」
エリオット「…は?」驚
クリス「さっきも、ガキの頃よりもケンカが強くなったとかって、つっかかってきやがって」
(もしかして、それで取っ組み合いに…?)
クリス「自分がまだ青臭いガキだってことを自覚しとけ。見てて危なっかしい」
エリオット「…俺よりも、兄貴の方が数倍危なっかしいだろ」
クリス「はあ? どこがだ」
エリオット「怪しい仕事請け負ってるし、
寝食ちゃんとしてんのか怪しいし...
ほっとくと何も食わずに死んでるんじゃないかって心配になるだろ」
(エリオット、もしかしてそれで教会を訪ねて来たの...?)
クリス「余計な世話だ。俺よりも自分の心配してろ(ムッ)
だいたい、身体はもう大丈夫なのか?風邪引きやすいんだから夜は大人しく寝てろ」
エリオット「子供扱いすんな...っ」
私の頭の上で、ふたりはいつもとは少し違うケンカを続けた。
(…お互い素直になっても
ケンカはするんだな…
はたで聞いてると、お互いの心配ばかりして、本当に仲の良い兄弟なのに…)
こらえきれずに笑うと、
二人がきょとんとした顔でこちらを見た。
そして、少しきまり悪そうな顔になる。
クリス「…なに笑ってる」テレ
エリオット「…お嬢様、
微笑ましそうな目で見ないでください」テレ
「だって、ふたりとも仲良いなと思って…」
エリオット「ふぅん…
そういうこと言うんですか?」微笑
エリオットがふいに
どこか悪戯っぽく微笑み…
私を抱き寄せたまま、
私の頬にちゅっとキスをした。
「…! あの、今、何を…」
突然のことに混乱しながらも、
頬がじわじわと熱くなっていくのを感じる。

(え…?)
クリスさんの瞳が近づいたかと思うと…
もう片方の頬にも、
クリスさんが唇をそっと押しつけた。
「っ、クリスさんまで…!?」

キャ───(*ノдノ)───ァ♥ですよね!笑
(…これ以上ここに居たら、心臓がどうにかなりそう…)
「ふたりとも、私そろそろ帰らなくちゃ…」
エリオット「やだ。離しません」微笑

「ええっ…」


意地悪なことを言ってるくせに、
まるで私をなだめるように、
クリスさんが優しく私の髪を撫でた。
(ど、どうしよう…)
その後……
『魔法のジュース』の効果が切れるまで、
私はふたりの酔っ払いに
翻弄され続けた…―――。
グレンジャーサンド最高でした!!笑