琵琶湖疏水だけ徹底観光 | 気にするほどじゃないけれど

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気にするほどじゃないけれど、気になるものは気になるんです!そんな気になるモノ・コトを紹介します。

琵琶湖から京都市内を流れる水路「琵琶湖疏水」。歴史的建築物として、近代的な構造物として、大変かっこいいです。しかし、この良さを他人には伝えづらい。そこで今回は、この疏水だけを巡る観光ルートを僕なりに考えてみました。

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山の中腹に舟溜まり

●琶湖疏水の良さが伝わらなくて困る
琵琶湖疏水は大津市から京都市伏見区を流れる水路です。舟運と水力利用を目的として計画され、明治23年に完成しました(京都市上下水道局HPより)。その翌年には水力発電もはじまり、その電力を用いて日本初の電車運行を実現させました。20年くらい前まで江戸時代だった頃の建物。近代建築といえど歴史の重みを感じさせる雰囲気が良いのです。名刹南禅寺の境内を通る水路閣、西田幾多郎がそぞろ歩いた哲学の道。それらの景色は、古都であり産業都市である京都を代表する名勝と言えましょう。

しかし、このすてきな琵琶湖疏水。あまり話題に出てきません。この良さを多くの人に伝えたいのですが、なかなか難しいです。このブログを書く前に水路専門のブログを書いていたのですが(水路大好き! ::京都の水辺探訪::)、素人の文章と写真では人の心を動かすことが出来ず(あと僕自身飽きてしまって)、更新をやめてしまいました。ということで、今回は今流行の体験型コンテンツとしゃれ込んでみました。分線であるところの哲学の道方面は旅行の本やムックにお任せして、今回は普段脚光を浴びない、地味な部分を徹底的に回ります。始点大津から、高瀬川と合流した後の河口まで歩いて紹介!google mapで計ると全長25.5km(地図)。踏破できるかどうかが不安です…。


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結局三条から七条は端折った

●いきなり見所満載!しかし…
2010年12月某日。友人2人と僕の3人で実際に琵琶湖疏水観光をしてみました。京阪石山坂本線、三井寺駅を降り、歩いて5分ほど。今回の旅の出発地点である琵琶湖疏水取水口に到着しました。早速かっこいい構造物を発見。
疏水は取水口から1km弱で第一トンネル入り口に到達します。それまでの間に、人工的ながら時代を感じさせる石組みの水路と、最近になって整備されたと思われる水門や水道設備を見ることが出来ます。歴史と土木技術を感じられる、とても優れた散歩道ではないのでしょうか?トンネル入口の門も観音開きでかっこいい。
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このように、最初は琵琶湖から流れはじめる。同行のM氏とO氏もまだ元気だ。この後両氏は体力を消耗し、ここに載せられないくらいの様相を呈する

さて、水路は山をトンネルで越えるわけですが、われわれ人間はどうするのでしょう?水路のトンネルは大津京都両市の水道局が管理しており立ち入り禁止。そうなると歩いて山を越えなければいけないのです。うへぇ。
その場を右手に見ながら左折。山を迂回するように歩き続けます。しばらくすると西国三十六箇所の札所のひとつ、三井寺(2010年現在、拝観料500円)。隣には滋賀県重要文化財、長等神社もあります。この後、約一時間ほど山道となります。12月の比良おろしは強烈で、歩いて火照った体も一気に冷やします。さむい…。
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峠を越え、バイパス付近に到達した時点で3931歩。観光というより遠足に近い

●人工河川の味、高低差の妙!

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峠道を越え、国道161号線バイパス沿い(ここも寒い!)を抜けると、第一トンネルの出口があります。バイパスに沿って歩いているとローソンプラスが見えてくるので、そこが目印。右手に曲がると疏水が見えてきます。桜並木が美しい水路沿いの道を歩き、しばらくすると、また暗渠になります(諸羽トンネル)。40年ほど前までは山すその開渠を流れていたのをトンネルにして、以前の水路を遊歩道にしています。ここで見るべきは琵琶湖疏水の高低差。これは水路について一般的に言えることなのですが、高いところから高いところに水を通すように出来ています。取水口部分は谷間でも、傾きをゆるくすることで、次第に山の中腹をながれ、最後には尾根を流れるようになるのです。谷底を流れるはずの川なのに、高台に流れてる。このちょっと不思議な風景が気持ち良いんです!周囲は閑静な住宅街で音も静か。地元の人の散歩ルートでトイレも多い。歩くにはもってこいの場所ですよ。
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わかりづらい図だが、カメラの奥(後ろ)に疏水が流れている。高台にいるのがわかるだろうか

●インクライン!レトロフューチャーここにあり

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三条通りの峠(九条山)を踏破すると、地下鉄蹴上駅に着きます。駅の上がこの観光ルートの目玉「蹴上インクライン」です。疏水はここで一気に低地に駆け下ります。水は流せば良いのですが、船はこの高低差をどう克服したのか。それはこのインクラインという仕組みを使っていたのです。ケーブルカーの要領で、坂道に線路を設け、鉄道台車に船をそのまま載せて坂を下ろす。船ごと乗せちゃうとは、なかなか豪快な設備です。既にインクラインは廃止され、跡地は遊歩道になっています。ここも桜並木が美しく、花見の名所です。
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この台車に載せて舟を下流の舟溜まりに下ろす

この蹴上でもうひとつ注目したいのが蹴上発電所。京都の市街地(しかも景勝地たる東山)にいきなり現れる水力発電所。今でも現役で稼動しているこの発電所は、遠巻きにその姿を見ることが出来ます(詳しくは関西電力)。100年以上動くその設備の景色はフューチャーレトロにふさわしい姿。寺社仏閣も良いですが、こんな京都観光もたまにはいいかも。

●疏水も風景も広くて気持ちE
蹴上を下りきると、疏水は自然河川、白川と合流します。水路幅が広がり、京都会館や平安神宮など、広々した風景になります。やっと観光らしくなってきますが、それら従来の観光地はいっさい無視。伏見を目指して一心不乱に歩き続けます。途中、夷川発電所や船溜りの跡を見ながら歩き続け、鴨川に突き当たります。合流はせず、そこより高いところを流れ続けます。三条からはまた暗渠。朝から歩き続けて夕方になっていたこともあり、この日はこれで終了。続きは翌日、開渠に戻る七条から歩き始めることにしたのです。
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結局この日は18237歩で終了。昼休憩など寄り道もしたので、実際の移動距離は大した事無い


●豆腐屋のラッパ、信楽焼のタヌキ。琵琶湖疏水は思い出波止場

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二日目。七条から南に下ります。疏水は伏見の住宅街を縦断します。早速川と運河の高低差が感じられる風景。これがまた気持ち良い。しっかり散歩道が整備されており、ベンチまである。伏見区民にとっての心の道、なんですかねぇ…。
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手前の琵琶湖疏水と奥の鴨川。水位差がおわかりいただけるだろうか

あとどうでも良いのですが、やたらと信楽焼きのタヌキが多い。伏見区民は信楽のタヌキに化かされているのでしょうか?この家のおじさんがしきりに「撮れ、撮れ」と言っていたのが印象的でした。
墨染発電所で流れが広くなり、一気に坂を下ります。ここも昔はインクラインが設置されており、水運の要衝だったようなのですが、蹴上と違って遺構はほとんど残ってません。おそらくインクラインの一部と思われる場所に二郎系のラーメン屋があるのも好印象です。
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伏見区は不思議な場所で、何故か信楽焼のタヌキがたくさん置いてある。化かされたのか?


●いろんな意味で道を誤る。達成感の無いゴール

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墨染を抜け、近鉄伏見駅を過ぎると、疏水の流れが二つに分かれます。一方は伏見の市街地を縦断して伏見港、三栖閘門といった風光明媚で楽しい場所を巡ります。もう一方は昭和初期に追加された放水路で、江戸時代の運河である高瀬川を移設した川(東高瀬川)と合流して宇治川に到達します。本来であれば本流たる市街地側(壕川)を行くのでしょうが、僕の目的はあくまで琵琶湖疏水の知られざる姿をレポートすることにあるので、あえて歴史の浅い方を行きます。

路幅が広くなり、開放的な風景に変わります。遠くに京セラ本社や阪神高速京都線が見える。疏水、高瀬川、工業地帯、高速道路…。京都の産業の歴史が集められたような風景に感動します。伏見の寺田屋みたいなのじゃなくて、これこそ京都市民が観光するべき風景です。
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右手奥の大きいビルが京セラ本社。高架の道路が阪神高速。京都の最先端がここに集う

と、感動していたのも最初だけ。あとは変わり映えの無い郊外の風景が続きます。まっすぐに伸びる普通の川。酒造所の伏見っぽさはあるものの、風景が単調。よりいっそう疲れさせてくれます。
京阪本線をくぐり、宇治川との合流点へ。ここまで来て感想は「ただの合流点だなぁ」。ここからちょっと歩くと壕川と宇治川の水位差を克服するための三栖閘門がありますので、物足りない方はそちらをどうぞ。

●別に全部歩かなくてもよかった。まとめ
今回のルートを以下のようにまとめてみました。
大津:電車と水道施設とトンネル。
山科:落ち着いた散歩道。山の中腹を流れる不思議さ
蹴上:広々した風景。見所多い。動物園周辺が動物園臭い
三条:京阪電車、阪急電車と地下鉄で各所移動可能
七条:ここも高低差。下町風情の素敵さ。タヌキ。生活感
伏見:普通に壕川を歩いて坂本竜馬を偲んだ方が有意義
個人的に好きなのが大津、山科、七条あたりでしょうか。観光地じゃないゆえ、騒いだりすると普通に迷惑になりますので、静かに落ち着いた気持ちでめぐってみてはいかがでしょうか。運動不足の人は全行程歩くのもいいかもしれませんが、終点伏見は酒が美味しいので、われわれみたいに居酒屋に入らないように。飲んだら意味なし!!
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ゴールの河口付近。達成感を感じさせない風景だが、長距離歩くので運動にはなる。二日目は13064歩で合計31031歩。がんばれば一日で回れる