昨今様々な路線に導入が進んでいる有料着席保証列車だが、その形態を分けてみよう。
(1)専用車両による単独運転
無料列車としては基本的に使用されない車両を用いる有料列車で、殆どがリクライニングシートである。
東武・西武・小田急・近鉄・南海の各社特急及び、京成・名鉄の空港向け有料特急ないしその間合い運用として走るホームライナー的短距離有料特急もこの仲間である。
因みに西武新宿線特急「小江戸」の走行距離は47.7キロ。阪急京都線の梅田〜十三間を含めた営業キロより200メートル短いだけだ。東京と大阪以上に京都と川越の規模は違いすぎるし、線路幅や地下鉄直通の有無など違う条件もあるが、優等最大10両、普通は最大8両などといった共通点もあるし比較対象になり得る。
(2)(無料列車ととの)兼用車両による単独運転
京急がバブル期にラッシュ時には使いにくい2扉クロスシートの2000系、のちに2100系を使用して走らせている「ウィング号」がこのタイプの発端であった。
しばらくしてから、東武がしばらく有料列車の途絶えていた東上本線系統で無料列車にはロングシート状態で使う車両を用いて回転クロスシートの「TJライナー」を新設したほか、京王でも2代目5000系を用いた同様な列車の計画がある。
また、西武鉄道では東京メトロなどに直通する全席指定席列車をL/Cカーの40000系で「S-TRAIN」として設定したほか、後述の京阪8000系も今年お盆休み明けから同様なライナーに使用される。
因みに東海道線の215系使用のライナーは厳密には(1)だが座席が転換せず、かつて昼間の湘南新宿ラインで用いられていたことを考えればこちらに当てはまりそう。
(3)有料車両と無料車両の併結運転
元々特急が無料列車(一時期は「高速」を名乗っていた)であり、全車指定席の有料特急も運行されるようになっていた名鉄が線路容量の関係で両者を統合し、一部指定席特急を走らせはじめたのが私鉄でのこのタイプの始まりと思われる。
現在は指定席車に立ち席でも乗れるようになり「特別車」となった。乗車にはミューチケット(360円)が必要。
自由席は「一般車」となり、併結編成は一部特別車と呼ばれているが、後述の南海と違い一般車も転換クロスシート主体。
なお、名鉄の運賃は2大都市圏の感覚では高い(これは2大都市圏の大阪を走る南海にも言える)。
南海でも四国連絡特急が一部指定席だったことから、これが「サザン」となって以降ロングシートの自由席と、リクライニングシートの指定席を併結する形態で運行されている。
しかも指定席は510円なので名鉄より高い。ところが、ネット予約サービスが全くない名鉄と比べて会員制ネット予約が充実しているし、指定席特急に乗れる企画切符も多い。
そんな中、阪急京都線と単なるライバルではなく様々な所縁がある京阪が京阪特急のうち、8000系の6号車にプレミアムカーとして1-2列配置の指定席を組み込むこととなった。
料金は枚方市・樟葉発着は400円で京阪間通しは500円。強気の値段設定かもしれないが、座席数などを考えれば妥当か。インターネット販売を進めたいらしいが、他の私鉄のようにホーム上に券売機は必要不可欠だ。
因みにこれまで「指定席料金制度だと距離別にしにくいのでは?」と言われていたがS-TRAINは秩父発着と飯能以南発着で料金が分けられており、京阪もこのような値段設定となっているので特に距離別料金に問題はないだろう。
~ちなみに~
国鉄が関東、関西で走らせて来たグリーン車組み込み編成の快速列車もこれに当てはまる。
もっとも本来は身分の高い人が乗るもので金があったところで気軽に乗れるものではなく、関東圏で情勢の変化で気軽に利用できるようになって来た頃には関西では既に運転されていなかった。しかし、関西と同じ223系も使用される岡山~高松間快速「マリンライナー」にはグリーン車が組み込まれている。
グリーン車は料金が高いが、JRにしかないステイタスである。
関西圏でも情勢が変わっているので復活することを願いたい。
結論:阪急京都線にはどれがいいか
2扉転換クロスの無料特急車を改造した観光列車、京とれいんが土休日に1日4往復していることからこれを(1)に置き換えることも考えられるが、それなりの運転頻度が無いと本数が少な過ぎてかえって利用率は落ちるし、阪急京都線の淡路~高槻市間は日中毎時18往復の過密ダイヤであり恒常的にそのような列車を組み込める余裕はない気がする。
また、(2)のタイプを行うには関東圏のようなよほどの混雑でなければせめて2扉転換クロスシート車が必要だが、それに適した車両である京とれいんや嵐山線用6300系はそこまでの数がない。新たに2ドア転換クロスの車両を新造するのも考え得るが、凡庸性に欠ける。
これらを考えると、「(3)有料車両と無料車両の併結運転」しかありえない。
では、京阪プレミアムカーや常磐線グリーン車がそうだったように「併結する分、一般車両を減車しなければいけないのでは」という声がある。
何を言っているのか。河原町駅では1号線のみ・淡路駅では2・4・5号線のみだが、その他の快速急行停車駅は全ホームとも10両分が停車できるのだ。しかも平日朝3往復の快速急行を除き全く使用していないという勿体無さ。
だから、既存の通勤特急・特急及び9300系使用の快速急行8両編成の梅田方に特別車2両を連結すれば、一部特別車特急を運行しても各停車駅のホームに収まるし、むしろ既存施設の有効活用に繋がる。そして、梅田駅で2両分歩かされる以外には一般車ユーザーに不都合は全く無いだろう。
ホーム延伸工事が間に合わずグリーン車連結が延期された中央線快速(しかも新宿~高尾の日中の特快の所要時間は阪急京都線特急の全区間のそれと同じ43分!)の話を聞く度、「阪急京都線はホーム長さが確保されてるのに勿体無い」と思ってしまうくらいだ。京阪プレミアムカーのときも「新京阪(阪急京都線)なら減車せずにできるのに」と思った。
しかも最大でも1時間足らずの乗車時間なのに通勤客だけ、観光客だけでなくどちらの需要も見込めるとはこの上ない環境だと思う。平日も土休日もそれなりの需要が期待できるのだ。