葛(クズ)はマメ科の蔓性の多年草で「秋の七草」でも有名ですね。
昔から、葉は家畜の飼料となり、茎は葛布や工芸品に、根は葛粉や生薬の原料となり、生活に欠かせない植物でした。
山間ではよく見かける葛原、辺り一面を覆いつくしています。
奈良は吉野葛の産地、大宇陀の道の駅で。
真葛原 なびく秋風 吹くごとに
阿太(あだ)の大野の 萩の花散る
詠み人知らず(万葉集)巻10-2096
<意味>
葛の裏葉をひるがえして秋風が吹くたびに、阿太の大原の萩の花が散る。
葛は万葉人にも好まれ、食料や薬草として多く用いられたようです。
広大な地を埋め尽くすように繁殖し、秋風が吹くたびに白い裏葉を見せながら、赤紫色の花も風に揺らぐ光景、自然豊かな古代の大地は美しいですね。
この歌のように、高台から見下ろしたようなスケールの大きい光景は、当時はあちこちにあったのでしょうか、遠景の葛と近景の萩と涼しく心地よい秋風が織りなす、当時の日本の美しい秋の光景です。
※阿太・・五条市の東部、大淀町などに隣接する吉野川沿い一帯で、現在も東阿田、西阿田、南阿田の町名がある