鶴は亀と共に長寿のシンボルとされ、瑞祥文様、吉祥文様の一つになっている事はよくご存じと思います。
その優美な姿から、平安時代にはすでに衣服や調度品に描かれ、用いられたようです。
このティーカップ&ソーサーは昭和初期に主にヨーロッパへ輸出された磁器です。
名古屋陶磁器会館ではこのような古い焼き物を展示していますが、時々在庫がある物については販売もされます。
この品は以前購入したものですが、同じカップでも絵が微妙に違っているのは手描きの良さでもあるのでしょう。
先日尋ねてみたら、この絵の物はすべて完売されていました。
外国にいる知人や友人を訪ねる時のお土産にする人が多いそうです。
底を光の方に向けて覗いてみると、芸者さんが透けて見えます。
一緒に買ったカップ&ソーサーも四君子(蘭・竹・菊・梅)が描かれています。(これも底に芸者さんの姿がみえます)
旅人の 宿りせむ野に 霜降らば
我が子はぐくめ 天の鶴群(たづむら)
遣唐使の母(万葉集)巻9-1791
<意味>
旅人達が宿る野に霜が降りたなら、我が子をその羽で包んで温めてやっておくれ、空行く鶴の群れよ。
天平5年(733)遣唐使が派遣された時、見送っていた母の一人が詠んだ歌です。
今でいう壮行会のような行事ですが、このような式の時は現代でも儀礼的な挨拶が多いですね。
当時も形通りの歌が多い中で、愛しい我が子を苦難の多い旅に出さねばならない母としての心情を詠み、人々の心を掴んだようです。
せめて自分の代わりに、愛しい子を守ってやって欲しいと、鶴にさえすがりたい気持ちは同じ母として心打たれます。
※遣唐使の船団は、通常4隻の船で構成されていましたが、4隻全部が無事に往復できたのは、約260年間にわたる遣唐使の歴史の中で、たった1度しかありませんでした。