「めなしちゃん」という名前のザリガニがいる。
片目がないから、めなしちゃん。
めなしちゃんは、とある公園内のビオトープで釣り上げた。
正確にいうと、わたしは別のザリガニを釣って、
めなしちゃんはどこかの子供が釣り上げたのだった。
誰かに釣られためなしは、バケツに入れられていた。
「釣ったザリガニはバケツにいれる。持って帰るならご自由に。
持って帰らないならそのままバケツにいれといて」
と管理人のおじさんは言っていた。
そしてめなしは持って帰られることなく、
バケツの中にいた。バケツにはめなし以外にももう1匹ザリガニがいた。
わたしはわたしでザリガニを釣り、
恋人も釣った。
2匹もいれば充分だ。
それで帰ろうとしたとき、恋人が言った。
「全部持って帰ろう。おれが全部飼う!」
なんという正義感。
そう、バケツに入れられて置き去りにされたザリガニがどうなるのか、
なんとなく嫌な予感がしていたのだった。
ザリガニは共食いするので、全部一緒には飼えない。
わたしは渋ったが、恋人の正義感に屈して4匹持ってかえることに同意した。
めなしはつめも体もつめも小さかった。
目がないのは、けんかでとれたのか、生まれつきなのか、
わからないけれど、ハンデがあることには変わりない。
きっと、ビオトープの世界でも、サバイバルしてきたのだろう。
そして、そんなめなしの壮絶なサバイバルはまだまだ続くのだった。